ギリシア・ローマ神話に登場する3人の「老婆」で、北欧神話のノルンたちと同様に、三相一体の女神の3つのペルソナを下敷きにした異形の1つ。グライアイは,ギリシア(グラエキア)の名祖だった。ペルセウス神話では、この老婆たちはゴルゴーンの三姉妹ほど怖くないとされていたが、グライアイもゴルゴーンも根は同ーの3人組だったのであり、しかも、グライアたちの方がゴルゴーンよりも恐ろしい名前を持っていた。グライアイの三姉妹の名は、エニューオー、パムプレードー、デイノーで、それぞれの意味は.「戦闘を好む者」、「スズメバチ」、「恐怖を与える者」だった[1]。彼女らは、 3人でただ1つの眼と1本の歯を共有しており、このことからもグライアイが、三相にして一体、一体にして三相という太女神の原初の観念を具現していたことがわかる。
Gorgon.
Trinity.
Barbara G. Walker : The Woman's Encyclopedia of Myths and Secrets (Harper & Row, 1983)
アリストテレース(『気象論』第1書14)は、デウカリオーンの洪水が起こったのは、「古代ギリシア(グライキア)、すなわちドードーナとアケローオス河周辺の地域」であったと言っている。このグライキというのは、「老女の崇拝者たち」の意味で、老女というのはおそらくグライアイ三姉妹の姿であらわれるドードーナの大地母神のことをさしているのであろう。
さらに異常な豪雨が降り続いたため、アカイア人たちの牧草地一帯が水につかってしまったため、彼らはやむなくペロポンネーソス半島へと侵入しなければならなかったのであろうと云われている。その後に、テッサリアからきた、女神ヘレーを崇拝するヘレーネスと呼ばれる部族であった(パウサニアース第3書20・6)。(グレイヴズ、p.209)