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Crone(老婆)

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 一般に、三相一体の女神のその3つの相の最後の相をさす。そうした老婆に相当する例を挙げると、破壊者であるカーリーKali、死体を貪り喰らう雌豚であるケリトウェンCerridwen、運命の糸を断ち切る女であるアトロポスAtropos、マハMacha、ヘカテー Hekate、エレッシュ・キガルEresh-Kigal、モーガンMorgan、死霊界の女王、冥界の女王、黄泉の国の住人たちの女王、「破壊者」ペルセポネーPersephone、などである。こういう女神たちはすべて、その姿は老齢、、冬、最後の審判の日、欠けてゆく、およびその他、再生する前に必ずある破壊や解体のシンボルをもって表される。

 老婆Croneは「時の母親」であるレア・クロニアRhea Kroniaに由来したのかもしれない。しかし、このCroneという添え名はコロニスCoronis(はしぼそ烏)と関連があった。烏や黒い色の生物はの女神に捧げられたからである。このように老婆は恐ろしい面を持っていたが、同時に、「処女母(virgin mother)」という面を持つことも多かった。それというのも、三相一体の女神のその3つの相(処女、母親、老婆)というのは、めぐりめぐるものであったからである。こうした女神を本当に愛する者たちは、女神の美しいイメージと同様、その醜い「破壊者」のイメージをも愛さなければならない、と東洋では言われた。老婆はまた女性の人生の第3の面(閉経後)を表した。それで、老婆を祀る神殿にはそうした人生の段階にある巫女たちが仕えていた。毎月の「賢い血」をもはや流さず、それを内にしまっておくようになった女性は、非常に賢明な人間になる、と信じられていたために、老婆は常に「知恵の女神」であった。ミネルウァMinerva、アテーナーAthenaメティスMetis、ソフィアSophia、メドゥーサMedusaといった女神たちがその典型的な例である。


Barbara G. Walker : The Woman's Encyclopedia of Myths and Secrets (Harper & Row, 1983)



[画像出典]
月岡芳年(1839-1892)
安達が原ひとつ家の図(明治18年)
岡 芳年(つきおか よしとし)、天保10年3月17日(1839年4月30日) - 明治25年(1892年)6月9日)は幕末から明治前期にかけての浮世絵師。本名は米次郎。一魁斎芳年、のちに大蘇芳年(たいそよしとし)と号した。歴史絵や美人画、役者絵などの浮世絵を主に手がける。特に無惨絵で知られる。「狂画家」「血まみれ芳年」などと呼ばれていたが、近年その評価に疑問視する声が上がってきている。 また当時、没落していく浮世絵師の中で成功したこともあり「最後の浮世絵師」と評価されることもある。