「子宮」の意で、アプロディーテーを祭神とする狂宴を伴ったアルゴスの宗教的祭典。この祭りでは、「世界の子宮」に祈りが捧げられ、「世界の子宮」が象徴的な形で受胎させられた[1]。
ヒュステーリアは今日ではヒステリー症を指すが、この意味は、ルネサンス時代の医師たちによって与えられたものだった。彼らは、婦人病の原因を説明するにあたって、子宮がときには本来の位置から離れて身体中を移動し、その結果、手に負えない行動が生じるという説を唱えた。
Barbara G. Walker : The Woman's Encyclopedia of Myths and Secrets (Harper & Row, 1983)
アルゴスのアプロディーテーを祭神とする「ブタの秘儀」のこと。ブタを供犠されるアプロディーテーは、彼女が大地母神であることの証左である。
バーバラ・ウォーカーは、子宮(uJstevra)の病気、すなわちヒステリー(症)と、アルゴスの宗教祭典ヒュステーリア(uJsthvria)とを結びつけようとするのだが、これは彼女のたわごとである。
ヒステリー(英語のhysteria、ドイツ語のHysterie)が子宮の病気である つまり、子宮が体内を動きまわるためにヒステリーが起こる という考えは、すでに前 5 〜前 4 世紀ごろの古代ギリシア人にあり、ヒッポクラテスもプラトーンも、ヒステリーの病因としてこの考えを踏襲している。子宮はギリシア語でヒュステラ(hJ uJstevra)〔女性名詞〕である。しかし、アルゴスの宗教的祭典ヒュステーリア(ta; uJsthvria)〔中性・複数形〕は、ブタ(u|V)の秘儀の意味で、秘儀(musthvria)をもじった言葉とされる(L & S による)。
ただし、雌ブタは多産のシンボルであり、ギリシア語で雌ブタは「子宮獣(devlfax)」と呼ばれることは、付言しておく必要があろう。