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オーク(Oak)

oak.jpg一般〕 数多くの伝承の中で聖なる木とされるオークは多分、雷を引き寄せ、また尊厳を象徴するからであろう、至高の天空〈神〉のさまざまな特権を与えられている。たとえば、ドドナのゼウスオーク、ローマのカピトリウムの丘に祭られたユピテルのオーク、プロシアのラモヴェーのオーク、スラヴ民族の雷神ペルンのオークなど。ヘーラクレースの棍棒はオークでできている。オークは物質的にも精神的にも、ことに堅固、力、長寿、高さを指し示す。

象徴・力〕 オークはあらゆる時代からあらゆるところで〈力〉の同意義語である。これは明らかに、成長した木の与える印象である。さらにオークと力はラテン語では同じ語、〈ロブル(robur)〉で表される。ロブルは肉体的力と同様に精神力も象徴する。

世界軸〕 オークはケルト人でもギリシアのドドナででも、とくに「世界の木、あるいは世界軸」の表象である。シベリアのヤクート族でもまた同じである。

 さらにシュケムでもへブロンでもアブラハムがヤハウェの啓示を授かるのはオークの木のそばであることは注目される。したがって、そこでもまた、オークは〈軸の役〉を演じたのであり、《天》と《地》の間の交通の道具となったのである(GUEM)。『オデュッセイア』でユリシーズは帰途2度「ゼウスの大オークの神聖な葉」にうかがいをたてに来る(14、327;19、296)。竜の守る金羊毛はオークの木にぶら下げられていて、このオークは神殿の役割を果たしている。

ケルト〕 ギリシア語(dru:V)との類似に拠る大プリニウスの一節によれば、ドルイド僧の名はオークの名と語源的関係がある。ここから「オーク人」という訳語が生まれ、この語は現代の学識の世界にまでも入り込み、ドルイド僧を指すためしばしば使用されている。だが、オークの名はゴール語(dervo)を含み、ケルト系のあらゆる言語で異なっている。しかしながら、ドルイド僧はその祭司という資格から〈知恵と力〉の両方に権利を持つという意味で、このような対照も象徴的には有効である。なぜならオークはこの2つの価値を象徴するからである(OGAC、12、48-50;18、111-114)。オークを崇拝したケルト人にとって、オークはその太い幹、広々した枝、密生した葉によって、そしてオーク独自のシンボリズムにより、歓待の象徴であり、神殿と等価である。
 (『世界シンボル大事典』)


[画像出典]

 ギリシア語dru:Vは、一般的に樹木を意味するが、樹木の代表としてのオークOakをも意味する。Oak(学名Quercus robur)は、日本語では植物学上ナラと呼ばれているものばかりであるが、文学作品などではカシとして翻訳されている例が多い。また、オークは日本のカシよりはるかに大木となる。

高く茂った御神木、槲の樹から、ゼウスの神慮を伺おうとの
おつもりなので、どのようにしてイタケーの、ゆたかな郷に帰ったものかを、 —
    (Od. XIV, 328-29)

 West Highland Flora