トーテムである大きな魚の姿となって、「海の母神」に呑み込まれた太陽神ヘーラクレースを指す。彼は「海の母神」から「イルカの背に乗る少年」として再生する。パライモーンは、ヨナJonahに対応するギリシア・ローマの神であった。彼の母は、海の子宮のウェヌス・サラーキアVenus Salaciaで、デルピヌス〔Delphinus、イルカ座〕と呼ばれた。デルピヌスの名は「イルカ」と「子宮」をともに意味した[1]。聖書記者はイルカを、ヨナを呑み込んだクジラに変え、魚の口から生まれた「少年」を予言者に変えた。
Barbara G. Walker : The Woman's Encyclopedia of Myths and Secrets (Harper & Row, 1983)
『ヨナ書』において、預言者ヨナを呑みこんだのは「巨大な魚(ダーグ・ガードール)」であって、聖書記者はそれが何かを明記しているわけではない。この話を引いたマタイ伝12:40において、先のヘブライ語はギリシア語kh:toVと翻訳された。これを欽定訳はwhale〔クジラ〕と翻訳したにすぎない。
しかし、kh:toVというギリシア語は、クジラやクジラ目Cetaceaの動物だけを意味するわけではない。ギリシア語のkh:toVは、ラテン語のceteあるいはcetusのように、クジラ、サメ、アザラシ、あるいは巨大なマグロなど、あらゆる海の大型動物を指していると考えられる(アテナイオス『食卓の賢人たち』303B、『オデュッセイア』XII_97、IV_446、452、『イーリアス』XX_147)。2、3種のクジラが地中海では確かに見られるものの、預言者を呑みこんだ「大きな魚」のようなものは、クジラ目のどのクジラにも正確にあてはめることはできない。(『聖書動物大事典』p.440)