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パレース(Pales)

 古代の「ロバ-神」。パレスティナとフィリスティア(ペリシテ人の国)はこの名をとって名づけられた。またローマのパラティヌス丘の名もパレースよりとったものである。この丘では古代のパリーリアの祭が毎年行われ、パレース、あるいはパッラス(point.gifPalladium.)の儀式が祝われた。パレースの性別については、いくつか異説がある。一説には彼はセト、あるいは牧神パーンのような、男根に似た形のロバの頭を持つ豊穣の精であるという。他の説では、パレースは女性で、ディヴァ・パラトゥア(パラティヌスの女神)の名のもとに、ウェスタの乙女が偽装した姿であるという[1]。この両性具有の神の神殿が、「宮殿」palaceという語の起源となった。彼(彼女)の祭は、ロバの頭の仮面をかぶった祭司たちによって、キリスト教時代になってからも数世紀の間、定期的に行われた。
 point.gifAss.


[1]Briffault 3, 18.

Barbara G. Walker : The Woman's Encyclopedia of Myths and Secrets (Harper & Row, 1983)



 ローマの家畜の保護神。男神とも女神ともされ、ときに男女の複数の神とも考えられている。421日にこの神の祭であるパリーリアPariliaが挙行され、この際に家畜の潔めが行われた。早朝に家畜は水をふりかけられ、家畜小舎は清掃され、藁の大きな火が燃されて、式に携わるものは三度そのあいだを飛んだ。この日はロームルスがローマを建てた日とされていたが、この祭は疑いもなくそれ以前の古いものである。(高津春繁『ギリシア・ローマ神話辞典』)