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男上位対面位(正常位)(Venus Observa)

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 男が上になる性交体位を表す術語。アダムはリリトにこの体位を強いたが、果たせなかった。カトリック教会はこの体位を、夫婦の営みの際の唯一正当なものと指定したが、この体位だと妻の快楽が最小だからであった[1]。父権制社会は、一般に、シヴァやへカテーの崇拝者たち、そして童謡(ナーサリー・ライム)に歌われる、専用の「揺り木馬」(ほうき)を乗り回す中世の魔女たちが好んだ、女性上位の体位に反対した。

 キリスト教の宣教師は、世界中の行く先々で、たいてい次のように主張した。「原住民の信徒たちは、慣れ親しんできた体位をすべてやめて、もっぱら男上位対面位を採用すべし、なぜなら他の体位は罪深いものであるから」。こうしてこの体位は「宣教師の体位」missionary positionとして知られるようになり、しばしば原住民の夫婦は男上位対面位をこう呼んでひそかにからかった。


[1]Graves & Patai, 67.

Barbara G. Walker : The Woman's Encyclopedia of Myths and Secrets (Harper & Row, 1983)

[画像出典]
エヴァ・C・クールズ『ファロスの王国:古代ギリシアの性の政治学』(岩波書店、1998.11.、p.195)