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ギリシア占星術文書目録4350_142

7惑星の植物について





[底本]
TLG 4350 142
Peri; botanw:n tw:n z v sjatevrwn (sub nomine Hermae Trismegisti) (e cod. Paris. gr. 2256, fol. 580)
Astrol.

Date of manuscript = A.D. 15
P. Boudreaux, Codices Parisini [Catalogus Codicum Astrologorum Graecorum 8.3. Brussels: Lamertin, 1912]: 153-165.



8.
(153)

ヘルメース・トリスメギストスからアスクレーピオスに
7惑星の植物について
太陽の植物キコーリオン

 太陽の第1の植物は、キコーリオン〔Dsc.II-160 キクジシャ=野生種のセリス。チコリ=菊苦菜Cichorium intybus Plin.I-30, II-88,〕と呼称されるものである。これの液汁は、バラ油と混合されて膏薬になる。また心臓病患者たちに適応し、回復させるだろうが、また周期的な三日熱や四日熱を恢復させ、また生のオリーブと混合されるとおそらく頭痛を止める。もしまたひとが東に向いて、太陽に呼びかけて、自分に恩恵を与えるよう要請しながら、自分の顔に塗れば、その日のうちにあらゆる人間どもにこのうえなく愛される者となる。また根から拵える錠剤は、心臓病患者たちや、過剰摂取のせいであれ、消化不良のせいであれ、栄養を受け容れられないほどに悪化した胃病患者たちに効く。〔その錠剤は〕麦の穂8ドラクマ、クロコス〔Dsc.I-25 サフラン〕2ドラクマ、ポントスの蜂蜜14ドラクマ、スキノス〔Dsc.I-89, Pistacia lentiscus〕の花7ドラクマ、この植物の (146) 根24ドラクマ。搗き砕いて、なるべく古い蜂蜜で調合し、1ドラクマずつ量って錠剤をつくり、心臓病患者たちには水で、胃病患者たちには最も美しい葡萄酒で、1粒ずつ与えよ。

月の植物アグラオパントン〔下記註釈を見よ〕

 これはアラビアのたいていのクリマに生じ、月と同じ状態を被る。というのは、〔月が〕満ちるとき、これも生長するが、〔月が〕闕けるときはそのままだからである。しかしたいていのことには闕けるときのが有用である。なぜなら、これの液汁をもしバラ油といっしょに、三日熱患者たちや四日熱患者たちに塗布すれば、その病状から解放されるだろう。だがもしどこであろうと誰かダイモーン的なものに取り憑かれる者がいて、この根を燻せるなら、ダイモーン的なものはその場で追放されるだろう。だがもし上述の誰かに、生長中の植物から巻きつけるなり燻せるなりするなら、病状が増長することになろう。もしまた嵐の海でも、この根を燻せば、嵐を止めるだろう。さらにまた、満ちるときと闕けるときとの両方の根からも、アリストロキア〔「分娩を容易にするもの」の意〕・クレーマティティス〔Dsc.III-6 Aristolochia baetica、ウマノスズクサ科ウマノスズクサ属の植物〕のように、同じ力能と程度の軟膏が拵えられ、闕けるときの根からは、瘰癧・耳下腺・あらゆるafter symptom・肉芽の異常増殖?に効き、満ちるときからのは、不足の充足に〔効く〕。そこで聡明なる者は思考することができよう、用法の違いによって、人間どもに生じるあらゆる身体的症状は、満ちることと闕けることというこの活動によって可能なのだ、ということを。

(155)

土星の植物アエイゾーオン〔Dsc.IV-89,90,91ゴマノハグサ属、ベンケイソウ科キリンソウ属の植物。〕

 この〔植物〕のみは煮沸によって煎じられる。だが煎じ薬の状態を汝に示すことは余計である。なぜなら、これは蜂蜜の濃さを持たねばならないからである。この効能は中風に効く。ところで痛風には熱いのと冷たいのとの2種類ある。冷たいのは、熱いものらの導入で快適になるが、熱いのは正反対であることが知られている。そこで、病状の違いを認識したなら、熱いのにはバラ油を混ぜた液汁を〔患者の〕足に塗布して、だが冷たいのにはシュリア産の香油を〔混ぜたのを塗布して〕使用せよ。だが区別が難しすぎる場合には、冷たいものの効能にはカストリオン〔ビーバー香、Dsc.II-26〕を、熱いもののそれにはアルテミシア〔=ヨモギ、Dsc.III-127,128〕の液汁を加えて混ぜるがよい。

木星の植物エウパトリオン〔Dsc.IV-41 キク科フジバカマ属の植物〕

 これの液汁は結石患者たちにとって丸薬をつくる。調剤は、スタキュス〔Dsc.III-120、シソ科イヌゴマ属の植物〕2ドラクマ、カッシア=シナモン〔Dsc.I-12、クスノキ科の植物〕の樹皮4ドラクマ、オポパナクスOpopanax hispidus〔Dsc.III-55、セリ科の植物。「ヘーラクレースの傷薬」〕2ドラクマ、リビュスティコン〔(Ligusti:noV)Dsc.III-58セリ科の植物Laserpitinum Siler〕8ドラクマ、メランティオンNigella sativa〔Dsc.III-93 キンポウゲ科クロタネソウ属の植物〕4ドラクマ。搗き砕いて、液汁に調合して、半ドラクマを量って錠剤を作り、1キュアトスを水で与えよ。またバラ油と混ぜて塗布しても益する。また根によっても、下痢患者たちや血性下痢患者たちやあらゆる下痢症状に効く錠剤が次のようにして拵えられる。〔すなわち〕白いミュルトス〔Myrtus communis, Dsc.I-155 ギンバイカ〕12ウンキア、シュリア産ロウValeriana dioscoridis〔Dsc.I-10 オミナエシ科カノコソウ属の植物〕24ウンキア、ロア〔Dsc.I-151 Punica granatum ザクロ〕の皮24ウンキア、この植物の根24ウンキア。以上のものらを搗き砕き、最もきつい葡萄酒で調合し、1ウンキアずつ量って錠剤を作り、発熱している者らには1錠を水で、その反対の者らには葡萄酒で与えよ。腹の下痢はすぐに治まる。ただし、1錠以上与えてはならないのは、腸をどのように弛めるかを、(156) 汝はもう一度探求しようとするからである。また根によっては、白斑や、ピュテリュギアや、前房蓄膿や、それらに近似したものらに効く膏薬も以下の仕方で拵えられる。〔すなわち〕赤鉄鉱〔Dsc.V-144〕8ウンキア、焼かれたカドミア〔カラミン Dsc.V-84〕4ウンキア、焼かれて精錬された鉛3ウンキア、クロコス8ウンキア、美しくされ診断された?根24ウンキア、スミュルナ〔Dsc.I-77 ミカン科の植物〕4ウンキア。以上のものらをきつい葡萄酒で拵え、用いよ。ただし、塗布されたらヒュポーピア、あらゆる痣、レイケーナ??を取り除き、黒い傷痕を綺麗にする。

火星の植物ペウケダノス〔Dsc.III-92セリ科カワラボウフウ属の植物〕

 これの液汁が有毒獣の咬み傷に働くのは、次の仕方を労を惜しまずに拵える人によってである。つまり、鹿の髄40ウンキア、マヨラナ〔Origanum majorana, Dsc.III-35〕12ウンキア、キュペリスCyperus rotundus 〔ハマスゲ、Dsc.I-4〕40ウンキア、カルバレー Ferula galbaniflua〔Dsc.III-97 セリ科の植物〕24ウンキア、テレピン油40ウンキア、古いオリーブ油18ウンキア、この植物の液汁660ウンキア。以上のものらを練って、膠の濃さが手に入るまで煮立てよ。これを予め塗った者が有毒獣に咬まれることはないだろう。また同じ液汁によって丸薬もできる。しかしながら、有毒な爬虫類のいずれかに咬まれる者たちに対しては、次の仕方で錠剤が拵えられる。つまり、アモーモン〔Dsc.I-14 Amomum subulatum ショウガ科の植物〕4ウンキア、クシュロキンナモーモン〔木質シナモンPlin.I-91〕6ウンキア、スミュルナ〔Amyris hafal ミカン科の植物 Dsc.I-77〕8ウンキア、カルダモン〔Dsc.II-185〕の種子6ウンキア、苦い蜂蜜8ウンキア、この植物の根8ウンキア。以上のものらを<練っ>て、海水を混ぜられた葡萄酒で仕上げよ、そして1ウンキアずつ量って錠剤を作り、(157) 発熱のない者たちには、3キュアトスの海水を混ぜられた葡萄酒といっしょに、発熱している者たちには水といっしょに与えよ。さらにまた以上のものらに加えて、神経の断裂、三日傷の膿瘻のために膏薬も拵えられる、〔その膏薬の〕成分は以下のとおりである。蜜蝋8ウンキア、 16ウンキア、乾燥した根40ウンキア、雄のリバノン12ウンキア、牡牛の硬脂24ウンキア、カストリオン〔ビーバー膏〕8ウンキア、この植物の根80ウンキア、??オリーブ油40ウンキア。乾燥したものらを湿気で調合して用いよ。

金星の植物パナケイア〔Dsc.III-56セリ科の植物。パナケイアはアスクレーピオスの娘の名、「万能薬」の意〕

 この植物は、或る人たちのもとではプロカミス〔「三つ編み」の意〕と言われるが、一部の人たちによってはカッリトゥリコン〔「美しい髪」の意〕〔=ajdivanton=Dsc.IV-136ホウライシダ〕と。これの液汁は最多の効能を有るが、根も劣らない。されば、液汁をもしバラ油とともに視覚に塗る人あらば、あらゆる人間どもによって、とりわけ塗るときに名号によって云うかの人々によってはとくに快適に見られるであろう。だがもしナルドスと言われる香料とともに髪に塗布するひとあらば、その髪を非常に黒くし、以後の全期間白くならないままにする。もちろん、美しい髪は、密度の点でも髪の生長の点でもますます美髪になる。また眼の白斑と水っぽさ??には黒色を作り、同様にぎらつく眼にも以下のようにして黒眼を作る。〔すなわち〕黒いアカキア〔Dsc.I-133 Acakia vera マメ科アカシア属の植物〕2ウンキア、ミュシス〔??〕4ウンキア、カルカントン〔Dsc.V-114 緑礬水〕1ウンキア、焼かれた銅1ウンキア、クロコス〔Dsc.I-25〕8ウンキア。以上のものらを搗き潰して、蜂蜜の濃さになるまでこの植物の液汁を投入して用いよ。またこれによって (158) 錠剤も拵えられ、これをもしひとが前もって服用するならば、〔毒薬を〕飲む前でありさえすれば、それによって害されることはないだろう。いや、 投薬された後であっても、もしひとがすぐにこの錠剤を飲むなら、毒害から解放されよう。で、この錠剤の拵え方は以下である。スミュルナ〔Dsc.I-77 ミカン科の植物〕8ウンキア、アロエAloe vulgaris〔Dsc.III-25〕8ウンキア、コリオンCoriandrum sativum〔コエンドロDsc.III-71〕の種子12ウンキア、オポパナクスOpopanax hispidus〔セリ科の植物 Dsc.III-55〕8ウンキア。以上のものらを注意深く搗き砕いて、海水を混ぜた葡萄酒で調合し、2ウンキアずつを量って錠剤を作り、まだ服毒していない者たちには2キュアトスを葡萄酒で、すでに服毒した者たちには4キュアトスを葡萄酒で与えよ。また、頭にできた傷のために、毛が生えるよう膏薬も拵えられる、以下〔のとおり〕。焼かれて精錬されたカドミア〔カラミン Dsc.V-84〕12ウンキア、リタルギュロス〔密陀僧 Dsc.V-102〕2ウンキア、リバノンのマンナ〔乳香のマンナ Dsc.I-83〕12ウンキア、牛脂〔Dsc.II-89〕2ウンキア、蜜蝋〔Dsc.II-105〕60ウンキア、湿った樹脂と乾燥した樹脂〔Dsc.I-92〕60ウンキア、緑青〔Dsc.V-91〕8ウンキア、古いオリーブ油70ウンキア、???された根120ウンキア。乾燥したものらを湿ったものらで調合して用いよ。また女たちの顔にとって、皺にならず、黄色くもならず、顔が白くて艶々し続けるようにする塗り薬もできる、〔処方は〕以下のとおり。インド産リュキオンRhamnus infectorius〔クロウメモドキ科の植物 Dsc.I-132〕20ウンキア、白いエッレボロンVeratrum album〔ユリ科バイケイソウ族の植物 Dsc.IV-150〕40ウンキア、ポントス産メリロートスTrifolium officinale etc.〔マメ科シャジクソウ属の植物 Dsc.III-48〕40ウンキア、テレビンティノスPistacia terebinthus〔ウルシ科ピスタキオ属の植物 Dsc.I-91〕40ウンキア、この植物の叩かれ???された根60ウンキア。以上のものらを、見た目で膠状の濃さになるまで搗き砕き、しかる後に用いよ。

(159)

水星の植物プロモスVerbascum sinuatum〔Dsc.IV-104ゴマノハグサ科の植物。Dscは4種類を分かつ。色が黒いか白いか、雄性か雌性かである。〕

 この植物は、ヘルメースの善き杖とも言われる。ところで、これの液汁によって痛み止めがこしらえられるが、これこそは、もしひとが塗布すれば、歯痛の進行するひととか、他の痛みの働きに与っているひとが苦しまなくてすむものだ。また走る者たちと戦う者たちにとっては、身体の部位をよく動き強いものとする。またもし丹精されたものを塗布する人あれば、疲労を止める。拵え方は以下のとおりである。サムプシュコン〔Dsc.III-47 マヨナラOriganum marjorana〕12ウンキア、鹿の脂40ウンキア、テレビンティノスPistacia terebinthhs〔Dsc.I-91 ウルシ科ピスタキオ属の植物〕40ウンキア、古いオリーブ油60ウンキア、この植物の液汁1クセステース〔=12キュアトス〕、カルバネーFerula ferulago〔Dsc.III-97 セリ科オオウイキョウ属の植物〕8ウンキア、蜜蝋60ウンキア。膠の濃さになるまで煮立てて用いよ。この液汁の、一種の空腸(nh:stoV)〔Arist.PA675B33 小腸の上部(十二回腸と階調の間の部分)をいう〕が空虚なら、このような植物が宿る──もの言うことにかけて最も心得あり、最も知的能力のある──ヘルメースの星〔水星〕に、このような力能を与えたもう神を祈りによって勧請しながら〔煮立てよ〕。またこの根によって拵えられるのは、鏃や棘を抜く膏薬や、骨の打撲や複雑骨折?を繋ぐ。その拵え方は以下のとおりである。蜜蝋80ウンキア、テレビンティノスPistacia terebinthhs〔Dsc.I-91 ウルシ科ピスタキオ属の植物〕40ウンキア、カルバネーFerula ferulago〔Dsc.III-97 セリ科オオウイキョウ属の植物〕20ウンキア、未熟なブドウの搾り汁〔Dsc.V-6〕40ウンキア、叩かれ???した根80ウンキア。以上のものらを水分で調合して用いよ。

(159)

別の7植物、同じ諸惑星に奉納されるところの
太陽の植物ポリュゴノン〔Dsc.IV-4〕

 この植物がこのような呼称をもつに至ったのは、太陽との一種の類似性による。というのも、万物の始祖にして種子だからである。またこの植物も、生殖にとって重要である。また或る人々がこれをカマイレオーン〔=カメレオン」の意。Dsc.III-10,11〕と呼ぶのは、天と地の部分が抽籤???されているからである。そこで、これの液汁が服用されると、生殖と性愛を目覚めさせる。また植物が、太陽と植物に与えた???人がこのような力をもつようという神への祈りとともに巻きつけられれば、あらゆる眼炎を退散させる。なぜなら (160) これを携行する者が眼炎に罹ることが決してないのは、太陽が光の卓越性を守護するからである。だから、もし誕生の際に太陽が逆行するときに、熱病患者たちや結石患者たちになるのは、これらの病状が心臓に起因して増大するためなのである。また結びつけられると、視力低下者たちをも、カタルケーに???白内障に罹る者たちをも、驚くほど癒やす。

月の植物キュノバテー「犬の木苺」 Capparis spinosa〔Dsc.II-204 フウチョウソウ科の植物〕とは別。〔Plin.V-180, II-127 

 この植物が、胴や口や両脇腹の劇症の病状を綺麗にするのは、月が巨蟹宮の守護星となった一方、これが胴と両脇腹に君臨するからである。またこの植物の花が持続的に服用されると、腫れた脾臓を綺麗にし、腫れの原因を尿と下痢によって空にする。脾臓に働きかけるように思われるのは、月が脾臓の場所を占有するからである。また視力の鋭さにとっても、この植物の根が結びつけられると有効であるのは、月が太陽とともに、眼の光を守護したからである。なおまた、口に悪化したところを有する者たちににも効く。さらに疝痛患者たちと快復期にある者たちにも適応である。

土星の植物アスポデロス〔Dsc.II-199〕

 これの根の液汁は、膝を患っている者たちにとって、単独でも蘇合香といっしょに塗布されても適応する。というのも、諸々の疲労や痛みを癒やすが、根の液汁は煮立てられて、腎臓に苦しむ者たちに少量与えられる。というのは、浄化し健康にするからである。またダイモーンに憑かれた者たちや癲癇患者たち?を癒やす。また、歯の生える子どもたち巻きつけられて当てよ、そうすれば夜間の動悸や恐怖に対して僥倖に〔美しく〕する。。

木星の植物サンカローニオン〔ラテン語「サングイナリア」血の植物。血止め。Plin.VIII-113???〕

 これの根は巻きつけられると、鼠蹊部に効く。なぜなら、患部を炎症なきよう保護するからである。だがもしひとが症状の出る前に巻きつけると、鼠蹊部によって (161) 決して試みられることはないであろう。同様にまた刻まれて塗りたくられると、発熱と緊張を抑制する。というのは、〔木星が〕人馬宮と双魚宮に宿をもっているが、これらの宮は大腿、両手と両脚に君臨すべく保護し、これらの部位に特に共感するからである。されば、このような植物はこれらの部位に親しく適応するからである。またこれの液汁はメリクラトン〔Dsc.V-17 水割り蜂蜜酒「古い雨水と蜂蜜を2:1の割合で混ぜて、天日にさらしてつくる〕といっしょに服用されると、共感によって、肝臓の痛む者たちに益するのは、木星が肝臓の部位を領しており(ここからまた神話も恋情的に塑造されていて、肝臓の火から精子は血管を通って出産の場所に進むものと言われる)、この故に星は出産の際に障弊されると、肝臓患者たちをつくるのである。これの液汁は、蜂蜜とクロコス〔サフラン〕といっしょに服用されると、性交したいと望む者たちに適応する。また植物が巻きつけられても、自分の女たちに気に入られたいと望む者たちに有用である。なぜなら、こういう者たちをお気に入りにさせるが、これが身につけられていると、姦夫に陥ることはないからである。

火星の植物アルノグローッソン〔「羊の舌」Dsc.II-153〕

 この植物を、或る人たちはペンタネウロン〔5本の筋〕と言う。これの根が恥部の悪性腫瘍を癒やす所以は、一方で火星が天蝎宮を宿としてもち、他方でこれがその部位を占有するからである。またこの植物の種子は塗りこめられると、膿んだ傷やその部位の瘢痕を癒やす。またこの植物が巻きつけられると、頭の痛みに顕著に適応するのは、白羊宮は火星の宿であると思われているが、これ〔白羊宮〕こそ世界の頭だからである。さらにまた血性下痢患者たちにも喀血患者たちにも、また失血にも、この液汁をして服用されかつ洗浄されて処方せしめよ、あたかもアレース=火星が血の箇所を占有するように。なぜなら、そこはわれわれの内の最も火性的なところであるばかりか、この星はそういうものだからである。また同じ液汁がカラミンテー〔Dsc.III-43、シソ科ハッカ属〕の液汁と蜂蜜とともに服用されると、無力症を顕著に癒やす。

金星の植物ペリステレオーン〔Dsc.IV-60クマツヅラ科の植物〕

 この植物の根は、喉のあたりのあらゆる症状──瘰癧、耳下腺、喉の<結節>、腺の炎症?、口蓋垂炎と扁桃腺炎──を癒やす。というのは、塗りこめられると、それらをたちどころに和らげるからである。この星はそういった部位に特に共感するからである。さらにまた痔瘻や,そういった部位にできる瘤をも癒やす。また (162) これの液汁は蜂蜜・<硝石>といっしょに洗浄液として使われると、痔瘻や出血を癒やす。また水といっしょに服用されると、鼓腸に関わる病状を薄め、結果として楽な呼吸をもたらす。なぜなら、この星が呼吸の場所を領していると思われるのは、これがわれわれの内に最初に発生し、金星が誕生の最初と考えられるからである。ここからまたこの植物は性愛事に対しても刺激的である。なぜなら、これの液汁が塗布されると、<性交せんとする者たち>そのものを発情的とならせるとともに、<彼らに最大の快感をもたらす>からである。さらになお大きなことは、この植物が巻きつけられると、何か別のものが巻きつけられないかぎり、必ず妊娠させるということである。というのは、仕事場とか家の中にもさらに置かれると反発し、為事や収入や行為をもたらすからである??。また、痛みや浄化や、教育へ通う歓びにも効き、身に携行しない者たちを保護する。

水星の植物ペンタピュッロンPotentilla reptans〔Dsc.IV-42、バラ科キジムシロ属の植物〕

 この植物を、或る人々はペンタペタロン〔5枚羽〕と謂うが、他の人々はエウパトリオン〔「善い父を持つもの」〕、他の人々はアントローポケイロン〔人間の手〕、或る者たちはプセウドセリノン〔偽セリノン〕と〔謂う〕。身につけているのは光を放つ細くて長い茎、葉に似て良い臭いがし、まわりが5つに裂け、黄色い花。また水気の多い地に生え、紅みがかった根を持つ。また、関節にできる打撲傷、発熱した〔傷?〕、熱に起因する組織??を癒やすのは、切られて塗りたくられた〔植物〕である。腹の疝痛をたちどころに解放するのは、これの液汁が水とともに2匙まで服用されたときである。また、服用されると、喉や舌にできる症状に最善に効く。痛みなく健康にするからである。また洗浄すると、歯の痛みと口の悪性の病状をことごとく治療する。またもしひとあって病状の出る前にこの植物を括りつけると、それらに試みられることがない。また根が括りつけられると、弁論家たちにとっても学者たちにとっても、言説における成功、群衆の会議における弁論に有効である。というのは、言論することにとってこれらの者たちを気軽な者たち、社交的な者たち、狙いどおりの者たちにするからである。また (163) 夜間、この植物をこっそり携行するかぎりの者たちは、何者かからひそかに負かされることはなかろう。

 短い論文の内容をなすのは、汝に伝えられた行道であるが、これによって最大にして難治の病状の多くを汝が療治するところのものである。そこで汝に残されているのは、上述のものらを拵え、わたしからのロゴスを守り、その結果としていかなる世俗的にして無学な人間にもこれを伝承しない、ということである。なぜなら、述べられた症状の治療の手軽さと容易さ故に、一般的医術の知識の愛言的・驚異的な成功は、このような人々から看過され、人間どもは医術の抜きん出た選択をもはや修練せず、古の医師たちの論文を窮めることを熱望することもなく、目下の論文による手軽さの大きさ故に労苦は忽せにされるであろうこと、療治可能なあらゆる身体的病状について述べられているとおりである。

 しかしながら、上述の諸々の植物を、アイギュプトス、アラビア、アシア、シュリア産、さらにはまたイタリア産のものを用いよ。というのは、これらのクリマは自余の〔クリマ〕よりもどうやら温かいからである。なぜなら、地上に生えるものらはすべて、隙間の風??の2倍に生長することはできないからである。クリマより寒い〔クリマ〕においては、諸植物の中にある通路が密であるので、太さ故に、気息に充分な隙間を持たず、それゆえそれらの〔植物の〕諸能力はより弱くなるが、上述の諸クリマにおいては、暑さに起因する諸植物の (164) 疏のゆえに、獣帯宮の大気がそれらへと過剰に引っ張られるため、それらは有力となって、より有効なものとなる。しかしながらもしこれらのようなクリマ産の諸植物に裕福でないが、必要やむをえぬ需要から別の場所産を得ざるを得ない場合は、それらの各々を抜く日が、1週間の曜日のどの1日で、この植物も属するあの星のどれに属し、もちろんその日のいずれの刻限に属するかを、ここなるわれわれのもとでも説明されると同様に考察せよ。また、これを大地から引き抜く際には、挿入される祈りを唱え、抜いた後には、この植物が発見された穴に小麦か大麦の穀粒を投入せよ。

 諸惑星の曜日とは、以下のとおりである。
 第1〔曜日〕つまり主日は太陽の〔日〕にして第1刻限、その植物はキコーリオンとポリュゴノン。
 第2〔曜日〕、第1刻限、月の〔日〕、アグラオパントンとキュノバテー。
 第3〔曜日〕、第1刻限、火星の〔日〕、ペウケダノンとアルノグローッソン。
 第4〔曜日〕、第1刻限、水星の〔日〕、プロモスとペンタピュッロン。
 第5〔曜日〕、第1刻限、木星の〔日〕、サンカローニオンとエウパトリオン。
 第6〔曜日〕、第1刻限、金星の〔日〕、パナケイアとペリステレオーン。
 第7〔曜日〕、第1刻限、土星の〔日〕、アエイゾーオンとアスポデロス。
 以上に加えて、月も、満月であるか、あるいは、その日の惑星の宮を通過するときとあらしめよ。

各植物の採集のために言われる祈り

 万能の主よ、目に見えざるものであれ目に見えるものであれ、あらゆる被造物の造物主よ、この目に見える被造物の諸部分を、一方は互いに共生し協和して、それらによって誕生するものらの内に均等になるように創造し、他方は今度は共感せず協和せぬものらを〔創造した〕方よ(ただし、相互による混合と合一から、程よい混合が構成され、(165) それこそが御身の崇高さのつんざくような布令であるということを除いて)、今もご自身がここなる恐るべき植物の調合に際し、これが迷動する諸々の〔星の〕中から恐るべき星と共感するよう定めたもうて、〔この植物が〕御身の形成物に結果する諸々の病の回避のために生ずる諸々の援助において強力にして有効、かつ徹底的に有用であることを嘉したまえ、同じ星が御身の命令に共働し、???御身の御名が永遠の永遠に祝福され、栄化されますよう、アメーン。

 同じ〔祈り〕を、病気の治療に用いる場合にも、まして準備の際にはいうまでもなく、言え。

2019.03.07. 訳了


point.gif「7惑星の植物について」
point.gif「諸惑星の植物について」
point.gif「7惑星の自然本性を働かせる植物について」

[クリマ]
 クリマタ〔クリマの複数形〕とは元来「傾く」という言葉から由来しているように、太陽の地表に対する傾きを意味し、2つの緯度の平行圏にはさまれた地帯をいうのであり、地表上の諸地点における1年のうちの最長の昼間(夏至の日)の時間をもって決定された。また気温は一般に赤道から緯度の進むにつれて次第に逓減するのであるから、クリマはいわば気候帯と考えられ、後の気候(Climate)という言葉がここから生まれたのである。

 ギリシア人は地表における気候の相違に着目したばかりでなく、気候その他の自然力が人間に及ぼす影響を考察し、環境論の発達がみられたのである。ギリシアにおいて環境論を最初に唱えたのはヒッポクラテース(c. 460-373 B.C.)である。……またプラトーンも気候や場所が住民の気質に作用することを述べているが〔Leg. 747d〕、さらにアリストテレースも『政治学』において、先ず気候が民族性に及ぼす影響を……論じている〔Politic. VII,7, 4 etc.〕。           (織田武雄『古代地理学史の研究』)

[月の植物=アグラオパントン]
 プリニウス『博物誌』V-160に言う。

 『キロクメタ』は確かにデーモクリトスの手に成ると認められている。ところが、あの彼が、この著書の中ではピュータゴラースについでべルシアのマギ僧たちの説を熱心に学び、何と多くのさらに驚くべきことを語っていることか。例え ば、その素晴しい色に人々が感嘆するところからその名を得たというアグラオフォティス(ギリシア語で「輝かしい 光」の意)という草は、ペルシア側のアラビアの大理石のとれる場所に生育し、そのためにマルマリティス(ギリシア語で大理石を表わすマルマロスに由来する語)とも呼ばれ、マギ僧たちは神々を呼び出したいときにこの草を用いるという。

 「アグラオパントン」が「アグラオポーティス」と同じものとして、これを芍薬のこととする説があるが、疑わしい。その根拠として、アイリアーノスの『動物奇譚集』XIV-27 中務哲郎訳註を参照。

 アグラオパントン(ajglaovfanton)は「燦めく幻」というほどの意。同じようなajglaofw:tiV〔「燦めく光」の意〕が、芍薬(glukusivdh)〔Dsc.III-157、Plin.V-160〕を意味するところから、シャクヤクとする説もあるが、疑わしい。
 この植物(ajglaofw:tiV)の採取法が、アイリアーノス『動物奇譚集』XIV-27に載っており、この「犬を使った採取法」は、ヨセフス『ユダヤ戦記』VII-180-185と同じであり、これはマンドラゴラの採取方としか考えられないので、何らかの混同があったものと思われる。「ヨセフスとアイリアノスの記事は共にオリエントの源泉に遡り、問題の植物はマンドラゴラであろうし、aglaphotisを芍薬とするのは根拠がないという」(中務哲郎訳註)。

[木星の植物サンカローニオン]
 この植物は不明であるが、プリニウスは、ギリシア人が「ポリュゴノン」と呼ぶ植物の中に、血止めに有効な「サングイナリア(herba sanguinaria)」〔「血の植物」の意〕があることを述べており(Plin.VIII-113)、あるいはこのことか?

forward.GIF嵐に関する前兆