かたちと関係の風景デザイン
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法善寺

武庫川女子大 角野幸博

 

 先ほどの竹山さんのお話をそのまま受ける形ではありませんが、 今特に問題になっている所をご紹介し、 後の二事例と含めて、 今後風景を考えていく手だてとなればと思っています。

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イラストマップ
 これが法善寺横丁の界隈です。 これは「懐かしの法善寺界隈」という割烹のキ川さんが作られたイラストマップです。 ちょっと形がデフォルメされていますが、 水掛不動さんあるクランク状の石畳の道がみえます。

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ゲート・昨日(2002.10.25)
 昨日とってきた写真です。 西側はこういうゲートが迎えてくれます。 すし半、 夫婦善哉といった店が並んでいる辺りを見ると、 L字型、 雁行型にまず受け入れてくれる様子がわかります。 それからここは石畳になっています。

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水掛不動(西向)
 これがよく知られている「水掛不動」で、 西側を向いています。

 先ほど入った所から石畳をたどって夫婦善哉の所で左に折れ、 水掛不動を右手に北向きに立つと正面に金比羅さんがあります。 その前を右に折れると、 ここは若干レベルが上がってスロープになっています。 金比羅さんの横には井戸、 その奥に寺務所があります。

 つまりクランク状の小さな所に西向きの軸、 南向きの軸というふうに色々な軸が交差しているわけです。

 それからご存じのように、 あそこへ行くと線香の香りがずっと漂っています。

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裏へ抜ける路地
 これは法善寺裏、 つまり火災を受けた所に抜ける狭い路地です。

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法善寺通り 東向き
 そこを抜けて東を向くと、 こういう風景が見られます。 類焼して現在テントが張られたりしている場所です。

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法善寺通・千日前筋方面から
 法善寺通りを千日前筋から見たところです。 ここを奥へ抜けていくと先ほどの不動さんがあります。 これだけ見ているときれいでも何でもありません。

 しかし夕景となると、 提灯の灯りと水を打った石畳、 それからその遠景に見えてくるネオン群といったものがある種の趣ある風景を創り出します。

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「日本の都市空間」より「オレマガリ」
 これは30年くらい前に彰国社から出版された『日本の都市空間』という本に掲載されている図版です。 今だに売れているそうですが、 この中で日本の空間デザインの技法をいくつか紹介していますが、 そこで「オレマガリ」というキーワードで紹介されている水掛不動界隈の平面図です。

 西向きの軸と南向きの軸があって、 そこから徐々に上がっていってスロープがあるといった構成になっています。 そしてお堂があって井戸と寺務所という構成になっています。

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藤川氏画
 法善寺横丁の火災前の状況はだいたいこんな感じで、 看板があちこち突き出て、 その上に電線が張り巡らされていました。

 しかし、 このような場所で視線がどういう所に行くかというと、 結局あまり上には行きません。 看板が道の上まで突き出しているのですが、 歩いている分にはほとんどそれを意識しないのです。 この道に入ってきたときに遠景として見たときにはこの看板の灯りがパパッと目に入りますが、 石畳や幅の狭い路地ということもあってか、 ほぼ正面を向くかちょっと下くらいの視線で通ってしまいます。

 観光用の写真では、 ほとんど上は撮しません。 よく水を打った石畳に看板の灯りが反射する、 というシーンが使われます。

 劇場やホールではフライタワーから色々な吊り物がぶら下がっていますが、 上から照明を当てたりしながらステージ上のシーンだけを見せるわけです。 法善寺のデザインあるいは効果というのはそういったものなのかなと思います。

 そこには下を演出するためのバックヤードがあるという感じでしょうか。

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現在(火災後)
 これは昨日東側から撮したものです。

 今は火事のせいで、 以前あった沢山の電線は撤去されていますので、 すっきりした状況に変わっていますが、 それでも上部はちゃんとこの「法善寺横丁」のゲートで隠れています。

 今日は法善寺の特徴として、 先ほどの目線の話と、 クランク状のシンボリックな場所、 そこから繋がる細い路地、 またそれに対して千日前通りなどの表通りという、 いわゆるまったくの“俗”の塊の場所があって、 その中に聖なる空間がちょうど折りたたまれているといった構造についてお話させていただきました。

 簡単ですが、 以上で紹介を終わらせて頂きます。

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