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Session-2

イタリアのチェントロに見る
ストック型都市の思想

コーディネータ/京都造形芸術大学/INOPLAS 井口勝文

 イタリアの多くの歴史の都心(チェントロ・ストリコ)は地区詳細計画を定めて、 その保存・修復・活性化に努めている。 私の考えるストック型都市とはこのようなチェントロ・ストリコをその中心にもっている都市(チェントロ)である。 中部イタリア、 アペニン山中にあるメルカテッロ・スル・メタウロ注1(以下メルカテッロと記す)もそのひとつである。 このようなチェントロは環境共生の視点から見て参考にすべき多くを示唆してくれる。 同時に事はそう単純ではないという問題も持っているように思われる。


イタリアのチェントロに見るストック型都市

 メルカテッロは人口1750人、 その内の500人がかつての市壁の内側、 チェントロ・ストリコに住んでいる。 中部イタリアのどこででも見られる極平凡なチェントロのひとつであある。 農業と建材、 繊維製品等の地場産業、 日常的な生活を支える商業が経済基盤である。 100キロ離れた大都市ペーザロへ車で通勤する人もいる。 全所帯の40%近くが年金生活者の居る所帯である。 大都市で働いて年金生活に入ると故郷へ帰ってそこの生活を楽しむ人が多いのはこのような地方都市の特徴である。 観光客がこの町を訪れることはなく、 我国で良く知られている特殊な観光都市ではないイタリアの普通の都市の都市政策をここでは知ることが出来る。

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メルカテッロ・スル・メタウロ(修復工事)
 メルカテッロはそのチェントロ・ストリコを再生するための地区詳細計画を定めている。

 そこでは指定区域内の建築行為を6つのカテゴリーに分けて管理している注2。 その内、 2つの比較的軽微な保守工事が届け出制で、 それ以外はすべて許可制である。 しかしいずれの場合も現在の外観を変更しないことが前提であり、 変更が認められるとしても街並の外観の連続性を保つことに主眼が置かれている。 そこには24項目の技術指針が記されており、 建造物の外観のみならず舗装材や植栽、 街路照明や店の看板等について細かく定められている。 例えば外壁に使用する石材はこの地方に産する石材であること、 そしてその積み方はこの地方の伝統的手法に従うこととされている。 地区詳細計画が単に物理的に建物の外観を残すだけでなく、 それを支える社会的な仕組みまでをストックしようとしていることを伺い知ることが出来る。 このような都市を私はストック型都市とよんでいる。

 地区詳細計画の序文に記されている「チェントロ・ストリコ再生の目的」を読めばストック型都市の意図するところを理解することが出来る。 序文に記されたチェントロ・ストリコ再生の目的は次の4つである。


ストック型都市と環境共生

 さて、 このようなストック型都市を環境共生という視点で見る時どうだろうか。

 省資源、 自然環境保全という視点からはひとつのありようとして高く評価することに、 異論はないだろう。 そこで営まれる生活のスタイルにも学ぶべき点が多い。 事が単純でないのはこのようなストック型都市が同時に省エネルギー的であるのかどうかという点である。 それもエネルギーのランニングコストをどう計算するのかという点が重要である。 論点は次の2点に要約される。

 このような課題はあるにしても、 省資源、 省エネルギー、 自然環境保全の3つを現代の環境共生の課題とした時、 イタリアのチェントロに見るストック型都市のありようは、 よくその課題に応えているように思われる。 しかしそこに至るまでには様々な試行錯誤があったし、 今もその努力は続いている。 我国でその教訓を如何に学ぶことができるのか、 これからの課題である。

 

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