Session-2イタリアのチェントロに見る
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イタリアの多くの歴史の都心(チェントロ・ストリコ)は地区詳細計画を定めて、 その保存・修復・活性化に努めている。 私の考えるストック型都市とはこのようなチェントロ・ストリコをその中心にもっている都市(チェントロ)である。 中部イタリア、 アペニン山中にあるメルカテッロ・スル・メタウロ注1(以下メルカテッロと記す)もそのひとつである。 このようなチェントロは環境共生の視点から見て参考にすべき多くを示唆してくれる。 同時に事はそう単純ではないという問題も持っているように思われる。
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メルカテッロ・スル・メタウロ(修復工事) |
地区詳細計画の序文に記されている「チェントロ・ストリコ再生の目的」を読めばストック型都市の意図するところを理解することが出来る。 序文に記されたチェントロ・ストリコ再生の目的は次の4つである。
(2)社会的効果 現代においても学ぶべき価値のあるチェントロ・ストリコの共同体を活かし続けること。 (筆者注:チェントロ・ストリコは人が住む場所であり、 同時に郊外の市民をも含めてあらゆる意味でその都市のコミュニティの中心であり続けようとしている)
(3)経済的効果 大切な技術、 経済的な秩序によって伝統的に支えられてきた現在の豊かさを破壊しないこと。 (筆者注:商業の中心地はチェントロ・ストリコであり続けなければならないということになる。 すなわち、 郊外の商業開発は厳しく規制される)
(4)生態的効果 生産農地を侵食する徒な市街地の拡大を抑制すること。 (筆者注:都市の領域をできるだけコンパクトに規制して自然環境を保全しようとするヨーロッパの伝統的な世界観を継承している)
省資源、 自然環境保全という視点からはひとつのありようとして高く評価することに、 異論はないだろう。 そこで営まれる生活のスタイルにも学ぶべき点が多い。 事が単純でないのはこのようなストック型都市が同時に省エネルギー的であるのかどうかという点である。 それもエネルギーのランニングコストをどう計算するのかという点が重要である。 論点は次の2点に要約される。
注1:参考資料
・都市環境デザイン国際(イタリア)セミナー・巨大都市時代における地方都市の可能性 http://web.kyoto-inet.or.jp/org/gakugei/judi/semina/s97it/index.htm
・メルカテッロ写真展 http://web.kyoto-inet.or.jp/org/gakugei/judi/semina/s97it/meru001.htm
注2:拙稿『Re』 No.110 「イタリアの建築修復体験記」参照