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都市と川

画像ha082 改行マーク(82)(83)大阪の街を流れる川をお見せします。 旧淀川と寝屋川が合流し、 大川となる地点で、 高層ビルが建ち並ぶ大阪を代表するビジネスパークの街景です。 こうして離れてみると、 川は割合綺麗に見えますが、 近くに寄ってみるとかなり汚れていて、 水も臭います。

改行マーク昔から大阪は水の都と呼ばれ、 八百八橋の橋があったと詩にもうたわれていますが、 今ではその半分もないでしょう。 また、 昭和50年代に長堀川のように埋め立てられて道路や駐車場になった川があります。 西淀川では大野川が緑道と名を変えて埋めたてられ緑道が整備されて樹木が森をつくり草花が咲いていますが、 あれももとは淀川から神崎川の支流としての運河川でした。

[大阪市大川]

画像ha084 改行マーク(84)これはみなさんも見慣れている大阪の川の姿だと思います。 残念なことは、 川の空間が国の財産地で公共用地であることから、 手軽に道路を造れることです。 そのため大都市の川は、 高速道路や地下駐車場などが縦横に築造され無惨な都市風景を見せられるわけです。

[大阪市大川]

画像ha085 改行マーク(85)ここでは垂直護岸の景観をサポートする意味でツタを生やしています。 これは好き嫌いがあるとは思いますが、 無味なコンクリートの垂直護岸を隠す役割として緑のツタを生やしているのですから、 これも川の景観デザインの一つと言えます。

[大阪市大川中之島公園]

画像ha086 改行マーク(86)水辺広場というものもできています。 いつも思うのですが、 貴重な水と陸との関係を、 何故この様な殺伐とした空間デザインで消してしまうのでしょうか?
 これは担当行政の技術者や景観デザイナー、 土木の技術者達の責任だと思います。 もっと造ることに思い入れを持ってほしいといつも感じています。

[大阪市大川]

画像ha087 改行マーク(87)大川でも、 この様に公園から張り出した川岸部分から、 フナやコイなどの魚を釣ることもできます。 汚れた川でも生き物にとって大切な生棲空間です。

[大阪市大川]

画像ha088 改行マーク(88)見慣れた嫌な風景として、 川と垂直護岸、 巨大な高速道路橋と川に背を向けた建物群があります。 この最悪の都市風景が、 大都市の中にいっぱいあるわけです。

[大阪市大川]

画像ha089 改行マーク(89)(90)道頓堀です。 噴水によって水を上げ下げしていますが、 これは水を美しく見せようとする発想から来たものではなくて、 水を空中に散布し、 空気とふれあわせることで少しでも水を綺麗にしようという、 浄化の発想から来たものです。 しかし夜は街のネオンとライトアップされた噴水によって、 大阪ミナミの歓楽街に独自の風情を見せてはいます。

改行マークこの道頓堀も垂直護岸で、 申し訳程度に両側にさつきつつじが植えられています。 建物は川に対して背を向けています。 私は今、 この道頓堀の再生計画を勝手にやっていまして、 川の表情を見せる、 川に対して人も建物も街も向いてもらえるようなものを考えています。

改行マークそのためには川をどうとらえ、 どのように見せればいいかということが、 街のデザインの再構築とあわせて川の景観創出を考えていくうえで重要だろうと思います。

[大阪市道頓堀]

画像ha091 改行マーク(91)川を傷つけています。 コンクリートの柱にコンクリートの護岸堤です。

[大阪市大川]

画像ha092 改行マーク(92)これも垂直護岸です。 一見石のようにでこぼこがあり、 目地があって自然石を積んだように見えますが、 実は石張りコンクリート形枠で、 遠目には本物のように見せていますが「擬岩壁」です。 私は嫌いですね。

[大阪市大川]

画像ha093 改行マーク(93)これは寝屋川です。 東京の神田川か大阪の寝屋川かというくらい汚く悪臭の強い川です。 生活者を守るため、 とても川と呼べる代物ではなく、 治水路としてある川です。 洪水から都市河川を治め、 流れやすい構造と利水に重点を置いて遊水や親水性、 景観を置き忘れた結果だと思います。

[大阪府寝屋川]

画像ha094 改行マーク(94)高石市の小河川水路です。 川の立体構造が街と遊離していて味気ないですね。

[大阪府高石市]

画像ha095 改行マーク(95)神戸です。 南北の山と海の間はせいぜい2〜3kmほどしかありませんから、 川の流れは、 山からいきなり鉄砲水のように海に流れます。 ですから、 川はあっても水がないという状況がしばしばあるわけです。 今回の阪神・淡路大震災の時も、 生田川はじめ南北に流れる小河川の水が生活用水や防火用水として役に立ったことで、 防災の観点から川にもっと水量を持たせようと、 再整備に向けて神戸市が検討していると聞いています。

[神戸市生田川]

画像ha096 改行マーク(96)これも神戸の川ですが、 水面と人間の視線の高さが5〜6mほど離れています。 のぞき込まないと川が見えないような状況です。 こうなってしまいますと、 川との親水風景は切れてしまいます。 川面と都市のレベル差は見る景観としては重要な要因です。

[神戸市新湊川]

画像ha097 改行マーク(97)奥の方にある白っぽい護岸は新しく補修された部分です。 手前の黒っぽい方は昔からある石の護岸です。

[神戸市生田川]

改行マーク白っぽい方も本物の石を使用しています。 本来ですとこの部分には擬岩やコンクリートを平米2〜3万円のローコストで流し込んで築造することが多いのですが、 ここでは川の景観を大事にしようと行政も技術者もがんばったのだと思います。 手前の石の護岸に合わせて、 白くはありますが石を積んで造っています。 数年の時間で回りとなじんでいきます。 これは高く評価していいと思います。

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