奥の細道挿入句の読み方12

 

(四十)金昌寺
終宵秋風聞くや裏の山 曾良

〈推測する読み方〉
一人旅の淋しさ、寝られぬままに一晩中裏山の秋風を聞いて過ごした。
〈体感する読み方〉
曾良の句は現代訳と同じだから、色々な事を思い朝迄うとうとと山の風を聞いていました。と後から来るであろう芭蕉に伝言の意味も込めて書いている。

庭掃いて出でばや寺に散る柳

〈推測する読み方〉
禅のお寺では泊った人はお礼に掃除をして立ち去るというが、私もこの美しく散っている柳の葉を掃いて出発しよう。
〈体感する読み方〉
(句の前書きとなる文章)
(今日は越前の国へと心早卒にして堂下に下るを、若き僧ども紙・硯をかかへ、階のもとまで追い来る。折節庭中の柳散れば。)お礼に庭を掃いて出たが、もう柳の葉は散って、これも風情のある景色だ。芭蕉はその佳さを書くのがお礼の心でもあるので、句の奥にはそんな感じもあり、読手も同化する。

(四十一)越前入り
山中温泉は効力のあるお湯と言うだけあって湯の匂いも大変なものだ。これなら菊を入
れたりして菊の薬用に頼らなくても十分だなあ。湯の匂いに新鮮さを感じて湯浴み客になっている芭蕉。読み手は「山中や」と言う導入部でのんびりとした安らぎを感じて、強い湯の匂いの中に身を置いている。

行き行きて倒れ伏すとも萩の原 曾良

〈推測する読み方〉
このまま歩き続けて、行けるところまで行って倒れ死ぬようなことがあったとしても、できる事なら萩の生え茂っている野原で死にたい。
〈体感する読み方〉
(句の前書きとなる文章)
(曾良は腹を病みて伊勢の国長島といふところにゆかりあれば、先立ちて行くに。)曾良の句は推測する読み方と余り変わらない。何故かと言えば自分(曾良)からこう思うのだと、普通一般の句と同じ書き方だから。

今日よりや書符消さん笠の露

〈推測する読み方〉
今日からは私も一人旅、笠に書き付けた「同行二人」と言う字を消してしまおう。笠におく露は秋の露だろうか私の涙だろうか。
〈体感する読み方〉
(句の前書きとなる文章)
(行き行きて倒れ伏すとも萩の腹と書き置きたり。行く者の哀しみ残る者のうらみ、隻ふのわかれて雲に迷ふが如し。予も又。)今日よりや、と弱気になる心を振るい立たそうとしている芭蕉。笠に書いてある事は、さっぱりと消して。とは言えつれないなあ。露よその湿り気で消しておくれ。芭蕉のもろもろの思いが身が細る程に読み手に伝わる。

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