奥の細道挿入句の読み方3

 

(十一)白河の関
卯の花をかざしに関の晴着かな

〈推測する読み方〉
昔の公郷のように衣冠をあらためるわけにはいかない旅の身だが、せめて白い卯の花を頭にかざして、晴着姿のつもりで関を越えよう。
〈体感する読み方〉
(曾良の句は体感しないので右の訳とほぼ同じ様な読み方になる)曾良はちょっとおどけた気持で卯の花を持ち、昔はこうして正装してこの関を通ったんだろうか等と、伝え聞いた話をしながら正装した気で関を越えた  次号え続く

(十二)須賀川
風流の初めや奥の田植えうた

〈推測する読み方〉
(古歌や故事にくまなく描きつくされた白河の関、またその美景、私などの出る幕では無いと思いながら歩く)道すじでふっと耳に入ったひなびた田植歌。新鮮な感動であり、かつ奥州第一歩に経験した最初の風流でもあった。(そしてあなたにお目にかかることも奥州路の風流のことはじめなのです。)
〈体感する読み方〉
田植えうたが聞こえてきた。初めて風流な気分にさせてもらえたなあ。上手にうたって風流なもんだ。今迄は俳句を作るどころでは無かったけれど、やっと挨拶句の一つでも作る気分になれた。知人に迎えられた芭蕉は句人として甦ったのを喜んでいる。読み手は須賀川ののどかな田植風景が見え、久々によみがえった芭蕉の心に同化し、やさしみ溢れたその風景の中に臨場している。

(十三)
世の人の見付けぬ花や軒の栗

〈推測する読み方〉
世の人の目にとまりにくい栗の花がこの草庵の軒近くひそやかに咲いている。あたかもこの庵の住人の人柄に照応するかのように。
〈体感する読み方〉
あまり人のとりあわない栗の花だけど、こうして庵の軒に咲いているのも結構いいものだ。白い花の幻想的な栗の木と草庵のとり合わせの妙に満足している芭蕉。読み手はその
あやしさと強い匂い迄感じて芭蕉に同化している。

(十四)信夫の里
早苗とる手もとや昔しのぶ摺

〈推測する読み方〉
緑の苗をとっている農民の手もとに、人々が草を手にして、しのぶ摺をつくっていたのだ。はるか昔がしのばれる。
〈体感する読み方〉
早苗田で一束づつにまとめて、早苗をとっている。あの手もとの様に昔旅人が稲や麦を失敬して、しのぶ摺を試したんだろうなあ。と、丁度石をこするのに都合のよい大きさの苗の束が次々と作られていく。ニヤッとした気分もある芭蕉。読み手は早苗をとる手の動きが目に見える気がして、昔の事を想像している芭蕉に同化し田のふちに臨場している。

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