奥の細道挿入句の読み方4

 

早苗とる手もとや昔しのぶ摺

〈推測する読み方〉
緑の苗をとっている農民の手もとに、人々が草を手にして、しのぶ摺をつくっていたのだ。はるか昔がしのばれる。
〈体感する読み方〉
早苗田で一束づつにまとめて、早苗をとっている。あの手もとの様に昔旅人が稲や麦を失敬して、しのぶ摺を試したんだろうなあ。と、丁度石をこするのに都合のよい大きさの苗の束が次々と作られていく。ニヤッとした気分もある芭蕉。読み手は早苗をとる手の動きが目に見える気がして、昔の事を想像している芭蕉に同化し田のふちに臨場している。


笈も太刀も五月にかざれ紙幟

〈推測する読み方〉
五月に入ると男の節句で紙のぼりをかざる時期だ。その笈も太刀も節句のお祝いに飾ったらよい。そう言ってみたくなる昔懐かしい笈であり太刀ではある。
〈体感する読み方〉
芭蕉は尋ねた寺に義経の太刀や弁慶の笈がある事を知り、とても嬉しい気分になった。そして今は丁度五月の節句ぢゃないか。それらを出してはためく紙のぼりと共に飾っておくれと心で言っている芭蕉。読み手もその心に同化し芭蕉のはしゃいだ様な気分が伝わって、胸がふくらむ気持ちになり体感する。


夏草や兵どもが夢の跡

〈推測する読み方〉
あたり一面に生い茂っている夏草。人の争いや憎しみの歴史は、あとかたもなく消え去ってこの草原は勇ましい兵士たちの永遠の眠りの地と空しく化してしまっている。
〈体感する読み方〉
草いきれの中に座っていると兵達が色々と抱いた夢、そして散っていった人間のもろさはかなさが胸に迫ってくる。芭蕉は伸び放題の草に埋まって座っていると、かつて兵の屍がるいるいと有った事を思っている。読み手は夏草で視界がきかない中で、その昔の戦場を想像している芭蕉に同化し、そこに臨場している。


卯の花に兼房見える白髪かな 曾良

〈推測する読み方〉
この古戦場に咲いている白い卯の花を見ていると老齢の兼房が白髪ながら、勇ましく戦っている姿が目の前に浮かんでくる。
〈体感する読み方〉
(曾良の句は体感しないので右の訳とほぼ同じような読み方になる)卯の花の白さが老将の兼房が白髪の身でここにいるように見える。卯の花の咲いている様子はそのあちこちに、人が動いている様に思え、昔が偲ばれる。

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