奥の細道挿入句の読み方9

 

象潟や雨に西施が合歓の花

〈推測する読み方〉
象潟の雨に濡た合歓を見ていると、西施が艶かし気に目を閉じている姿が浮かんでくる(句の前書となる文書)海北にかまへて波うち入るる所を汐越といふ。江の縦横一里ばかり、俤松島にかよひて、又異なり、松島は笑ふがごとく、象潟はうらむがごとし。寂しさに悲しみを加へて、地熱魂をなやますに似たり。
〈体感する読み方〉
象潟は切ない感じだ。合歓の花が柔らかく咲いて西施がいる様だ。合歓の木は上の方に花をつけ、水辺のしっとりとした雰囲気。読み手はのめり込み北陸の叙情を体感する。


汐越や鶴はぎぬれて海涼し

〈推測する読み方〉
汐越の浅瀬に鶴が降り立っている。その鶴の足を見て、あれこそほんとうの鶴はぎだとおかしくなるが、その「鶴はぎ」の波に洗われている様に、思わず救われた様な涼しさをおぼえる。
〈体感する読み方〉
汐越の浅瀬を裾をからげて歩いていると、膝まで濡れてしまった。濡れた足は細くみすぼらしい。鶴はぎとはよく言ったものだ。それにしても脚が濡れて涼しくいい気持だ。芭蕉は浅瀬に子供に似た嬉しさを感じている。読み手はその涼しさと童心を体感する。


文月や六日も常の夜には似ず

〈推測する読み方〉
七月、この七月は七夕の節句であるが、そう思うと六日の夜も普通の夜とは思えない。年に一度合うと言われる牽牛と織女の伝説を思って夜空を眺めた。(句の前書きとなる文章)酒田のなごり日を重ねて、北陸道の雲に望む。遥々の思ひ胸をいたましめて、加賀の府迄百三十里と聞く。鼠の関を越ゆれば、越後の地に歩みを改めて越中の國市振の関に至る。この間九日、暑湿の労に神をなやまし、病おこりて事を記さず
〈体感する読み方〉
七夕だなあ。私は六日間も臥せてしまって旅程がこなせなかった。読み手は何を書く気力もなかった六日間を振り返って嘆いている芭蕉の心に同化する。


荒海や佐渡に横たふ天河

〈推測する読み方〉
荒海を前にして立つと暗い海の彼方に佐渡が島がほのかに浮かんでいる。今宵七夕の夜二つの星のはかない恋の伝説を思うにつけ、昔京都の天皇や貴族が流された佐渡が島の暗い歴史が思い出され荒海の激しい音と天の川の美しさに、人間の運命の悲しさ、はかなさをしみじみと感じさせられる。
〈体感する読み方〉
荒海のそのむこうに佐渡が島がある。弱った体を横たえて波の音を聞き、空を見上げていると天の川がよく見える。旅に臥すのはつらく無気力になってしまう。しかし天の川の美しさに疲れた身が少しはやわらいだ。星を見ている芭蕉の心に読み手は同化する。

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