作句上のコツ

十二、生活俳句とは

  “生活俳句”とはよく言われる言葉ですが、ではどんな物が“生活俳句”なのかと言いますと、一般的に言う“生活俳句”とは身の回りの事を「こうだったああだった」と十七文字でお話しする様な出来上がりのものを指します。この様な句は報告や説明で井戸端会議の様なものです。
又台所を中心の内容が多いので別名厨俳句とも言いますが、俳句の一歩が写生なら“生活俳句”は二歩目です。お話だけのものは俳句とは言えませんが、同じ台所句でも読んだ人が感動する様な事が書けたらそれは立派な俳句です。例えば一家で御飯を食べたと言うのでも、どの様に感謝したかとか、一家団欒でこんなに殊更な事があった等、深い心が書けるとそれは立派な俳句です。よくない例として「孫の炊いた豆御飯を皆で食べた」とか「炎天の中を急いで帰ったら手紙が来ていた」等はお話ですから「だからどうだったのか」と言う事が書けていないと俳句とは言えないのです。どんな事でも心で深く思った事がにじみ出ていれば良いのです。又はその風景の取り合せの妙が書けていたら読み手は嬉しくなります。“生活俳句”は誰もが通る道ですが、うまく心が書ける様になる練習の場でもあります。こんな心を書きたいけれど中々思う様に書けない、と言う悩みが出てきます。その時から手法の勉強に入るのです。
言葉をどう言う風に扱うと、思う通り書けるかと言う言葉遣いを覚えて行くのです。そうなると三歩目です。一歩目は山があって川があって風が吹いていてと並べるのが写生で、二歩目は家でこんな事があったと報告や説明的なお話です。三歩目はどうしたら心で思った事が書けるか言葉の遣い方を勉強します。四歩目あたりから複雑に成ってきますが、面白さや書けた喜びも湧いてくるものです。ここからが俳句です。でも世の中にはここ迄で俳句を書いていると、思い違いをしている人が沢山います。テレビや新聞で取り上げているのはこの段階の句で、ここで指導者がこれらの句が一番良い様な言い方をしますので、“生活俳句”でもこれで俳句だと思っている人が多いのです。俳句は読み手がいい気分で読めるもので無いと推敲不足か失敗作です。
自分が今どの様な書き方が出来ているかと言う事を知るのも大きな作句上のコツです。
平成二十年七月

 

 

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