作句上のコツ
十五、写生再確認 今回はこの辺で一度原点に戻って、しっかりとした俳句が書ける姿勢を培う為にも、写生の書き方を再認識してみるのもと思い書いてみる事にしました。分かっている人も自分の知っている事と思い合わせて、頷き乍ら読んで下さい。何時も言う事ですが、誰でも処女作と言うのはとてもよく書けるのですが半年から一年程経つと思いばかりが強くなり、どう書いてよいか分らなくなる時期が来ます。それを通過するのに一般的にはとても長い期間をかけてしまいます。それは俳句が何であるかと言う知識が得にくかったり、又知識として分かっていても自分の作句と結びつかないからです。そこで私は歌の口移しや習字の手移しの様に、一緒に写生に出かけていました。すると誰でも簡単に作れて、二時間もあれば五句位楽々と書けました。忙しくなって一人一人についてあげられなくなって来た頃に、出かけていた時と同じ事を言って指導していました。それと同じ事をここに書きますので身につけて下さい。先ず写生は自分の立っている場所から辺りを見回わして、どんな様子かを目と耳でしっかり掴んで下さい。ビルの中では季節感が無いので、なるべく自然の風景のある所へ行きましょう。その方が句材も沢山あります。 そこで、何がどう有るかを見た通り聞こえた通り書くのです。その時同じ様なものを並べたのでは俳句になりませんから、“何が、何処に、どんな様子なのだ”と書くのです。こうすると時間的な事も書けます。俳句は小さい時から使って来た日本語その侭書けば良いのですから、きちっと伝達出来る様に書きましょう。うまく書けない時は思いを入れて書こうとしているか、あれもこれもと欲張っている時です。思いは一生書いて行かなければならないのですから、思いは書かない様におさえて置く様にして、背伸びをして書くよりも自分の力を溜めておいて、誰にでも通じる書き方が出来る習慣が身につく様に、レベルを落す気持ちで書いて下さい。こうしていると分かりやすく、そのうちに景色を書くだけで気持ちが伝えられる様になります。ありの侭をうまく捕らえて十七文字に仕上げましょう。 俳句はやさしく読み手によい感じを渡せるように書くのがコツです。 平成二十年十月
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