作句上のコツ

十六、一句の中に一つの芯

 俳句の元になる材料に出合った時の状況を、あれも言いたいこれも有ったと何もかも詰め込みたくなるものですが、そうすると何が書いてあるのか分らなくなります。一つの事に絞って色々の事の中で一番肝心な事をみつけて、それを中心にしてさらっと書くと良いのです。ではこれを書きたい時はどうしたら良いかを書いてみましょう。まず要らないものから外して行くのが肝心ですが"これとこれとはどうしても書きたい”と言う事があります。その時に何を感じたかが大事です。
目に見えた事でその感じた事を書くのです。又その感じた事がその句の芯です。その感じた事から外れない様に読み手に伝わる様に書きましょう。一つの例として〈鮎の茶屋雨後の蛙に迎えられ〉と言う句があります。先にこの句の良い処を書いておきますと、それは楽しかったとか面白かったとか、自分の感じた事を書かず、唯有った通り書いてある処です。でも今度は何を言おうとしているのか読み手には伝わりません。それは何故かと言いますと「鮎の茶屋」と言って突如「雨後の蛙」と書かれると、鮎の茶屋の事を書こうとしているのか、雨後の蛙を言おうとしているのか分らないのです。折角面白い句材も読み手にしっかり伝わらないと、もったいない事です。そこで雨後の蛙と言うと句がそれて行ってしまい、鮎の茶屋に関係の無い蛙になりますので、雨蛙とすると読み手は雨蛙が茶屋とどう繋がるのだろうと期待が持てます。〈鮎の茶屋雨蛙に迎えられ〉でさっきより大分近くなりましたが、これでもまだ上下の繋がりがなく、読手は何を言おうとしている句か分りません。そこで簡単に上下をくっつけてしまう方法があります。この場合「に」の下に「も」を入れて「にも」とすると上下が一挙にくっついて、
〈鮎の茶屋雨蛙にも迎えられ〉となって内容が一つに絞れます。こうすると鮎を食べに渓谷の料理屋さんへ行ったら、思わぬ蛙の出迎えに微笑ましい気持ちになった事が伝えられました。又「にも」と言う
事で茶屋の人が迎えてくれている事が含まれています。こうして十七字を一本に繋いで、一句の中に一つの芯としてちゃんとまとめて、読手に渡る様に書くのが作句上のコツです。
平成二十年十一月

 

 

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