作句上のコツ

十九、ればと言う面白い言葉

 今回は少しレベルを落として“れば”と言う面白い言葉を使った書き方のお話をしましょう。
俳句に“れば俳句”と言う正式な言い方は無いのですが、分かり易い様にこう呼んでおきます。
れば俳句とは、「こうすればこうなった」と言った作り方の俳句をさします。れば俳句がすべて悪いと言う訳でもありませんが有る程度経験を積んだ頃にうっかり書いている場合が有ります。出来れば避けたい書き方です。
何故かと言えば、この“れば”を使うと何でも言えて果てしなく書く事が出来ます。例えば「窓を開ければ雨だった」「家へ帰れば猫がいた」「掃除をすれば日が暮れた」と何でも言えるのです。これに季節の言葉を入れると俳句らしくなります。
もう一つ似たような言葉で“けば”が有ります。これも「お寺へ行けば友がいた」「手紙を書けば褒められた」とかこの“けば”もここに季節の言葉を入れると“れば”と同じ様に何でも書けます。
“れば”“けば”を使ったものは先の言葉と後の言葉二つの関係が何の係わりも無くても、文章として成り立ちますが、俳句は作文では無く、又報告文や説明文でも無いのですから“れば、けば”俳句で良い作品に仕上がる事は、万に一つと言ってよい程無いのです。
俳句は「何処で」「何が」「どうだ」の三つの言葉が、三つ共しっかり結びついていると、よい出来上がりになるのですが、稀にはこれこれこうだとお話で言った、唯一行で良い句が出来たと言う場合も無いとも言えません。この様な場合は三つの言葉がばらばらの事も有りますが、誰が聞いても成程と思う事や人に伝えて感動させる内容の句もある事は有ります。しかしこれも万に一つと言った様な確率です。
反対に良い俳句として、一つの言葉で心の状態と景色が目に見えて両方の意味が一度に表現出来る言葉が使われている書き方です。この言葉がうまく出て来た時はとても良い作品に仕上がります。しかしその様な言葉は中々出て来ません。
そんな例句が見つかれば又この欄に書きたいものです。
“れば、けば”や作文の端折りの様な句や、報告、説明にならない様に書くのが作句上のコツです。
平成二十一年二月

 

 

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