作句上のコツ
二十一、作句上の枝や葉 二年間にわたって俳句を大きな観点からとらえて俳句とはどう言うものであるか、そしてどう書けばよいかと言う事を話して来ました。それを空から見た森に例えるならば、俳句と言う森はどんな森であるか、そしてそこに生えている木はどんな木なのかと、この欄で書いてきました。今回はその森に生えている木の枝やその枝に付いている葉の部分を書いてみたいと思います。 この枝や葉と言うのは初歩的な事で別に俳句で無くても文字を綴る場合は全てに言える事です。 又これは誰でも分かる初歩的な事です。 句会の選評で“松笠”と言う言葉が出てきました。これでも「まつかさ」と読めるので、余り句に影響は無かったのですが、むしろこの方が読み易い位のものです。日本語字典には[松毬]となっています。果してこれが「まつかさ」と発音出きるのかどうかも疑わしいものですが、統一された表現に従うのは当然の事です。松の実又はその実が抜けて落ちているのも見た目も[松笠]でもいいのでは無いかと思える形状をしているのです。 しかしこう言う場合は理屈抜きにして決められた表記通りに俳句と言えど統一された事に従うのが当然と言う事になります。俳句を書く場合、最終の仕上げは文字を的確に使うと言う事になりますので、些細な事とは言うものの伝達の面からは重要な事です。読み手に自分の伝えたい事をきちっと伝えなければ何もならないので、枝や葉と言う最先端の部分は一字なりともおろそかに出来ないものです。 俳句のもう一つの面は何と言っても詩性と言う大事な役割を持っていますので、漢字を的確に使うと同時に漢字で行くか、かなで行くか、より適切な方を選び、十七文字より無いのですから、その文字の持つ効果を百%発揮出来る様にします。その時に漢字を使うか、かなを使うか決めるのに、幼児的な事や易しい事の表現だから[かな]を使おうとか、内容が堅いのだから[漢字]を使うとか理屈で選択するのでは無く、書いてみてどちらが良いか感覚的に良い方に決めるのが、詩を書く場合の当然の態度です。句作の仕上げの時点でもう一度、この文字で適切かどうかをチェックするのは基礎的な作句上のコツです。 平成二十一年四月
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