作句上のコツ
二十三、省略を適切に 先ず俳句を書く為には句材を賜って来てそれを俳句の形にしますが、その時五七五の俳句の形にしようと思いますと、ここで一番大きい省略をする事になります。 その時にどの言葉を捨てるかと言う事ですが、話し言葉の場合、公の場や目上の人には丁寧に「どうしました」とか「こうです」と言う様にきちっと話しますが、家庭や親しい人と話す場合「ああで、こうで」と「ました」と丁寧に言う所を省いて話します。その時省いたからと言って意味が通じない事が無いのと同じく、俳句でどれだけ省いてもうまく書けば、ちゃんと意味は通じます。公の場や文章ではきちっと「ました」迄言わないと可笑しくなりますが、近しい人に省略して話さないと反対に可笑しいものです。この様に言葉と言うものは変幻自在と言おうか融通性のあるものです。一番丁寧に言った場合と一番削った場合との間には大きい差があります。句材から五七五の定型にしようと思えば最初は随分捨てる事になりますので、それより最初は言葉を省略すると言うより、むしろ必要な言葉を残すと考えた方が早いと言えます。俳句は言葉の粋を極めた所で書くものですから、省略して通じる所はギリギリ迄省きます。 一般の詩にはカオスと言って、意味がはっきりしない部分があるものですが、其の方が読み手に想像する余地を与えられるので、其の効果は大きいとされています。 俳句も又詩情が無い事には俳句とは言えないし、カオスと言う混沌としたと言おうか、もやっとした部分が当然あります。そこを佳しとするのですが、表現があいまいではっきりしないのはカオスでは有りません。やはりどんな場合でもきちっとした日本語で文法に従がって書かれていなければならないのは当然です。しかし何と言っても五七五で言い切らなければならないので、ほかの文章の様に上から順番に文法通りと言う訳には行きません。 そこで省略とか入れ替え等と手段が取られるのですが、どれだけ省略をしようと上下を入れ替え様と、それなりの法則と言うものが有ります。厳密に言えばどれだけ省略や入れ替えがされていても、きちっと文法に適っていなければなりません。 無理な言い方や自分で作ったいわゆる造語は使ってはマイナスになるので、自分が一番感じた事だけに絞って、省いたり切れをうまく検討してまとめると、すっきりと仕上げる事が出来ます。 無駄な文字が入っていないかを確かめてより適切な言葉で書くのが作句上のコツです。 平成二十一年六月
|
|