(私の言い訳。御免なさい)
この欄で『作句上のコツを百余書いて行こうと思う』とこの項を設けた時に書いています。それから暫く経った時に失明してワープロが打てなくなりました。以来掲載する内容を変えてスキャナでアップロード出来る原稿にしました。そして二年余りで盲人用の音声パソコンが打てる様になりました。それからオリジナルなものを掲載する様に成って、ふと気付くと作句上のコツを掲載し出して間もない時にワープロが見えなくなって、その続きの事を忘れていました。ここ二、三ヶ月それを戻そうとして、何せ見えないものですからちぐはぐな事をしていた様です。今回やっと思い出して元の道へ戻せる様になりました。        平成二十年一月  磯野香澄


作句上のコツ

六、ありの侭を簡単に

何事をやるのも始めは無心ですので上手く行きますが、少し慣れてくると色々な思いが出てきたり、種尽きだと思ったりして上手く行かなくなるものです。青竹を刀で切るのをテレビでやっていたのですが、初めての人は一と振りで切れるのですが、その師匠の話では二度目からは切れ無くなるとの事でした。相撲もはじめは無我夢中で取り組んでいて、上位に上がってくると作戦とか小細工をする様になって、そこを越えると又無心になれて優勝につながる様になるそうです。色々考えるのも大事で、考えて考えてどうにもならないと開き直った時が、そこを抜けられた事だと思います。又創作と言うのはその元が無いとどう仕様もありませんが、何にでも興味をもって心に感じたところを見つけて材料にして下さい。
美しいと思ったり可愛いと思ったり、何でも心に止まった時にメモしておくか思い出して、その心に止まった時にどんな風景だったか、肝心な処の風景を切り取って十七字にまとめると良いのです。無理な事を言おうとせず、必要な言葉だけを拾い、無駄な言葉を捨てて自分の思った心がにじみ出る様にするのです。そしてなるべく簡単に書く様にするとよいのです。今回は私、香澄の句を例にして如何に簡単に書くかをお話しましょう。
お正月に梅宮大社へ行ったら、ここはお酒の神様で特設のテントで巫女さんが朱塗りの升で御神酒を授与と言うのか、振る舞いがあったのです。その時朱塗りの升で戴いたのがとても嬉しくて、それを句にしたのです。〈丹の升で御神酒を賜う初詣〉 こう書くとこれ以外に何も入れ替える言葉は無いのですが、これでは言い放っているだけです。ではどうすればよいか。そこで〈丹の升で御神酒を賜い初詣 〉としてみます。これではまだ振る舞い酒を喜んでいるとしか思えません。先ずこの様にありの侭に簡単に書いて、ここ迄書けたら、嬉しかった心を表すためにはどうすれば良いかと言う事になります。この場合〈丹の升で賜う御神酒初詣〉と入れ替える事で、嬉しさや感謝やお正月らしい気分が出ました。その場の風景の中で名詞だけを拾い、有りの侭に書くのが作句上のコツです。

 

 

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