作句上のコツ

七、「動」の現象

今迄作句上のコツで俳句を生き生きと書くとか、現在進行形で書くと句が生き生きすると書いてきました。その結果大方の作品がその方向へ進んでいて結構な事だと思います。
こうして現在進行形で書ける様になりますと、その上は「動」と言う現象が発生する様に書く事にチャレンジです。今月の出句の中に面白い現象の句が出ましたので例として引用してみましょう。〈潮干狩母を浜家に預けおき〉五月の句会に不在投句されたもので、出席した全員が選句すると言う結果になりました。披講される度に爆笑が起り楽しんだのですが、笑っては失礼なのですが、こんなに選句者が笑えると言う事はこの句に「動」が発生しているからです。この例句を読まれている今の貴方も笑っていらっしゃると思いますが、この面白さを分析しますとそれは「母」が荷物に見えるからです。母に札を付けて荷物棚に預けているような様子が、目に浮かぶ出来上りになっているのです。作者はそんな事は思ってもいないし作句の時点では真面目に書いています。その時の様子をその侭書けていてここ迄書けたと言うのはすごい進歩です。唯言葉の選び方で人を扱うのと物を扱う言葉が混同している処に、変な方向へ行ってしまった原因があります。〈潮干狩母を浜家に待たせおき〉ですと選者は浜辺の一景として素直に書けていると思うのですが、「預けおき」とした処が荷物にみえるのです。そこで爆笑になったのですが、これを〈潮干狩り浜家に母を待たせおり〉と文字を二、三変えて言葉をきちっと配置すると潮干狩りの景色も見えるし、内容の心の動きが滲み出て来ます。出来上った作品を見た場合自然にみえる言葉使いが大切です。適切な言葉で的確な配置で書くと言う事は大変根気がいりますが、きちっと書けて「動」の感じられた時の喜びは何とも言えません。心が浄化されて豊かになります。俳句に携わる幸せを感じるのもこんな時です。文字と言葉を適切に配置するのが、動く現象を生む作句上のコツです。

 

 

作句上のコツ トップ

戻る  次へ

トップ 推敲 絵解き

アクセスト 出版ページ ギャラリー