作句上のコツ
八、基本的な推敲の方法 俳句を始めますと大抵は先ず五、七、五と指を折って、十七文字に思った事をはめ込もうとします。 こうして十七文字になる迄、口と指でやり直す事になりますが、これは大変記憶力の要る作業です。常々文字から遠ざかっていると、ここでペンを持つ等考えられないと思いますが、面倒でも書き付ける習慣を付けると、メモをするのが如何に効率が良いかと言う事が分って来ると思います。それは何故かと言いますと、書き残しておくと前に書いたのと比較出来るからです。それに記憶に頼るより目で見ると具体的に認識出来るので、頭で覚えているより目で見て認識する方が遥かに楽で確かなのです。反対に言えば指折りするだけで推敲して行ける人は跳び抜けた記憶力を誇る人のする事だと言えます。 このメモをする習慣は俳句の推敲をする最後の処で大きくものを言います。人間の頭は、手足や目や耳等身体から脳に伝わって来た事は鮮明に判断出来るけれど、言葉と言う形の無いもので頭の中だけで判断するのはとても大変な事なのです。五七五と指を使わずに頭の中だけでしようと思っても無理です。 俳句はそんな処に頭を使っている場合ではありません。目で見て先のと比較出来る様にペンや紙代を惜しまず、何回でも見て判断出来る様にハッキリと書き付ける事です。そして書きそこね以外は絶対に消さない事です。一字でも違えば横に同じ様にもう一度書いておくのです。後で比較するとどちらが丸かよく分ります。推敲の最終段階になると尚更の事で、最低一句で七、八回は書いて比較して無理の無い言葉、無理のない表現で書けているか思った通り見た通り、に書けているかを自分の気持ちと照らし合わせて行きます。書けていなかったら又横に並べて書いて言葉を頭の中だけで組み立てるのでは無く、文字という目で見える物にして頭の力を肝心な処に、この場合推敲と言う究極の作業に全力投入出来る様にしましょう。 紙に書いて消さない。一字だけだと思っても横に始めから書く、そして比較して見る。これは重要な作句上のコツです。 平成二十年三月
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