〈俳句私論〉(1)

創作と鑑賞

俳句とは端的に言えば“人に非ず”と言う憑る文学です。
私はこれから何回かに分けて俳句に対する考えを随想風に書いてみたいと思います。
誰でも俳句を書き始めた時は、自分は一つ俳句で名を成し世に君臨して等と、思って始める人はまず無いと思います。又将来主宰を運命づけられている人でさえ、俳句と言うクリエイティブな仕事は、出来るか出来ないかやってみるより他に無いと思います。
まして大方の人は俳句と言えばまず作るもの、やるより無いと思えるのが俳句と言う文学形態の特性でもあります。
俳句との出合いは色々あると思いますが、私の場合実に他愛いない事でした。
療養所の廊下にポストがぶら下がっていて、その横に「投句作品はすべて天山誌に掲載」と書いてあるのです。結核に倒れる迄は京都新聞広告取り扱い者、コピーライターだった私は毎日の新聞に、自分の書いた原稿が載っているのに目を通すのも仕事の一つでしたので、入院してそれが出来なくなり淋しい思いをしていました。そんな時だったので自分の書いた物が活字にして貰えるのなら何でも、と俳句とは一七文字と言うだけより知らないのに、何やらまとめてポストへ入れました。
当時天山誌のリーダーだった川上草雨と言う方が、ペンネームの私を探して病床へ誘いに来て下さいました。それから半年一年とやっている内に、“俳句とは何だろう?分からない”と思えて来ました。
今から思えばあの時私は俳句に一歩踏み出したと思えるのですが、先にも書いた様に私が俳句で将来どうと言う訳もなし、そう深く考える事もない、敢えて勉強する程の事も無いわ。とそれにしても俳句程私に打ってつけのものも無い。とすれば私は自分の生活の記録として日記の様に書き続けて行けばよいと考えを整理しました。
又当時前衛かぶれしていた私は、俳句もアブストラクトリーに書ければと勝手な事を書いていた様に思います。そんな私が最初に魅せられたのは八木三日女さんの俳句でした。新聞に載った三日女さんの俳句はフレッシュで若かった私にジンジン来ました。
花鳥諷詠を固執する伝統派と言うのがあると言う事を知ったのもその頃でした。
俳句結社大樹へ紹介して貰って投句する様になり、生活の事を書くとよく通用する事も知りました。
元々自分の記録として書いて来たのだから、私は自分の為に生き様を綴るのも良いし、それにどうしても前衛派的なものも書きたいと黙々とやっていました。
以来私は入った動機が動機だけに俳句とは唯々創るもの、人の句は読むものと思い鑑賞するものだと、言う事は思いも及びませんでした。
ところが段々俳句にのめり込み追求する内に、色々な事が分かって来て俳句こそ鑑賞する文学だと思える様になって来たのです。
 (この続きは八月のこの欄に俳句私論二として綴ります)

俳句の館開設十年目の私の活動
私が[俳句の館]と称してこのホームページを開設して九年が過ぎました。
今ではこの欄を見て下さっているカウントが一ヶ月に一千回を越える様になりました。
これは私の理論や作品に整合性を認めて戴いていると言う事と理解出来ますし、又この私の理論や作品を理解してアクセスして下さる皆さんが高い理解力を持って観賞して下さる方々だと嬉しく思っています。
私はこの十年間で足の公害性のケガが治らず、動けなくなったのを活用して、著書を二十冊余り作成する事が出来ました。
これらの著書は全て国立国会図書館に保存して戴いていますが、その半数近い九冊を以って、ノーベル文学賞に応募して世界の俳句愛好者に、日本固有の凄い働きをする俳句作品とその理論を、知って戴いて楽しんで戴きたいと言う最終目的を果たしたいと思ってやってきました。
今迄にこれらの著書を多くの俳句指導者の方に、送付させて戴いて多くの方から賛美の反響を戴いていますが、これからは第一目的のノーベル文学賞の審議会の方にどうしたら眼を通して戴く事が出来るかと言う活動の時期に来ました。
私は審議会の方々にこの素晴らしい日本固有の文学形態(読み手が一瞬に作者になっている文学を越えた文学形態)と、美と愛に満ち満ちた俳句の世界を理解して戴けたら文学賞の対象になるのは当然だと自負しています。
しかしそれには日本語と英語と言う言葉の問題も大きく関わって来ますし、又ジャンルの問題とか色々有りますので、私の力がどこ迄行けるか、実力主義でやって来た私は日本の学歴社会に乗れない無力さをつくづく感じています。今活動の第一歩として“京都抒情、歩いて巡る京の都”上下巻を出版社から売り出して欲しいと持ち込みしているのですが、これは大変な事でどうあってもここをクリアしないと次へ進めないと頑張っている所です。良いお知恵が有りましたら教えて戴きたいと思っています。

平成十九年七月     磯野香澄

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