作句上のコツ

はじめに
かつて結社俳文学研究会京都俳句で、初歩から奥義迄を指導してその俳句の有り方や書き方、そして気付か無い作句のコツを分り易く指導して来ました。これからその百二十回に渡った作句上のコツを順次掲載して行こうと思います。俳句は写生と言って絵画や写真の様に目に見えた物をその通りに書くのと、如しと言って他の物になぞらえて書く方法とが有ります。
又生活俳句と言って暮らしの中の思いや出来事を書くのが有りますが、俳句の発生は連句の最初の句、すなわち発句が元になっています。発句とは最初の句で挨拶句でもありますので、挨拶は身近な自然の現象を取り入れて書くものですから、そこから始まった俳句はあくまでも自然の出来事を書くものです。それが近代になって新興俳句とか比喩俳句が隆盛を極めました。そしてあらゆる内容のものが十七文字で書かれる様になり、昭和から平成の初期までは隆盛を極めたのです。しかしそれらの手法が行き詰まりこれは俳句だけに限らず又世界の芸術にも同じ様な現象が起こりました。俳句の基本は挨拶の自然を描写するのが元になっていますので、そこへ立ち返る傾向が強くなっています。まして京都俳句では芭蕉の作風を踏襲していますので、完全な写生で初歩から奥義迄貫いています。写生で書く奥義とはどんな句かその素晴らしさを、俳句を愛好される方々に知って戴き、そんな俳句が書ける様になって戴きたいと、これからその肝心な所、作句のコツを書いて行きたいと思います。

平成十九年十月  磯野香澄

一、すっきりと初歩の写生
俳句は誰でも子供の時に一度は習っていると思いますが、それからは殆どの人が無縁になっていてそれだけに俳句を安易に思っている人が多い様です。俳句と言う言葉を知らない人は先づ無いと思いますが、それでは俳句とはどう言うものかと言う事になると、知っている人は少ない様です。現に俳句をしていると言う(結社に所属している人でも)分らない人の方が多いと思えます。マスコミ等が俳句と言うと、どの様なものでもそれが俳句だと思ってしまいます。そこで自分も俳句でもやろうかと思う人が、安易にどんな物でも十七字にさえすれば俳句だと、迷句珍句を書いてしまいます。始めはそれでも良いので
すが、マスコミと言う大量媒体は変な事を言っていても、信頼性が高いのでそれが先入観となっていて、幼稚園の子の様な事を言っているのに気付かない人が多いのです。これは私はマスコミの重大な責任だと思っています。少なくとも俳句を作ろうと思えば、最初は指導者について俳句の道の手引きをして貰う必要があると思うのです。それは俳句の道は素晴らしいものですが、反面むつかしいものでもあるからです。そして俳句を作る為には俳句とは何かを知る事と、どうすれば良いのかと言う事を順番に教わり、それを自分の物にして行く道筋を知ることです。順番に作り方を覚えてそれに従って作って行くと、自分でも納得出来る作品が作れる様になり俳句の妙味を楽しめる様になります。何回も聞いておられると思いますが、学習の第一歩は写生です。印象深かかった景色の一瞬をとらえて、何処にどんな物があったかを書けば良いのです。そして沢山作って行くと十七文字がうまく操つれる様になります。何を言っているかが書ける様になったら次のステップへ進みます。俳句は雑多なもので無く、すっきりと深味のあるものですから、そこら辺りが我流では中々分りませんので、自発的に教えを乞う位の気持を持ちたいものです。今回は俳句の組立てを生花になぞらえてお話してみましょう。お華は先づ中心になる花があり、それを〈芯〉と言い次の花を〈添え〉そしてその次を〈留め〉と言いますが、(流儀に依っては天地人とか)俳句も自然の中で印象の強く目に写ったものを中心にして書きます。次にお華で言うなら〈添え〉として、それがどうだったかを書きます。そして三ツ目の〈留め〉そのあり方をすっきりと仕上げれば良いのです。俳句はすっきりと書くのがコツです。

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