京都府立総合資料館から寄贈の依頼

 新年早々にちょっと嬉しい事が有りました。
毎回この欄を見て下さっている多くの方にもこの事を知って戴きたくなりました。
私は〔芭蕉作風踏襲理論と実践実例〕を初め〔磯野香澄俳句の世界〕として、全部で九冊の総集編とも言うべき書を作成し終わりました。
これらの書は以前にも書いていますが、ノーベル文学賞に取り上げて戴くのが目的で、七年の歳月をかけて完成しました。
途中で失明してしまいワープロから盲人用の、音声パソコンに切り替えてどうにか昨年の暮れに、完成する事が出来ました。
中でも〔京都抒情〕と題した上下巻二冊には、京都を観光的にどなたにでも楽しんで戴ける様にと、一句一句に現代文訳を付けました。
京都の観光地で余り知られていない所や、私独自の感覚で成した二百句を読んで戴くだけで、京都観光が出来る様に作成しました。
私は理論編とこの〔京都抒情〕上下巻の三冊だけでも、ノーベル賞に取り上げて戴ける価値があると自負しています。
日本では私は一個人の俳人に過ぎませんので、認められる事を期待していなかったのですが、今度府立総合資料館から〔京都抒情〕の寄贈依頼がありました。
その時私は京都市の観光課と京都府庁の観光課と、全日本着物振興会それにNHKの四箇所に、寄贈させて貰っただけなのに、資料館の方が何処で〔京都抒情〕の事をお知りになったのかと不思議でした。
資料館の係りの方にお聞きしましたら、係りの方は国立国会図書館の資料で知りましたと言う事でした。
私は国会図書館に何時も納本しているので〔京都抒情〕も納本していたのを忘れていた事に気がついて、資料館が何処で知られたのかと言う疑問が解けました。
それに国立国会図書館と言う図書館の最高の機関で、見つけて下さったのだと嬉しくなりました。
こんな訳で国内では分って貰う事が難しいだろうと思っていましたのに、分かって下さる方が有るのだ、と嬉しくなってこの欄に書かせて戴きました。
又これはその時私が申し出て同総合資料館に、展示して戴く様になったのですが〔口伝噺親王さんをお守りした村人〕と言う私の家や村に伝えられた事を、まとめて物語にしたものですが、歴史資料になるので採り上げて戴きました。


平成十九年二月    磯野香澄


人間の能力全てを使う俳句
俳句は世界最短の文学と言われて、たった十七文字で完結する文学の形ですが、その短かい俳句を書くと言う行為の中に、人間のあらゆる能力が含まれています。
俳句は他の文学の様に何でも思いの侭に書けば良いと言う物では無いので、何を書くのが俳句かと言う事を知らねばなりません。
そして先ず社会的な事を判断する能力、常識的な事をちゃんと踏まえられる事、自然の中で繰り広げられる色々な情景を感受する鋭敏な感受性、豊かな心と感覚が求められます。
実践に当ってどんな能力が使われているかを掲げて見ますと、
先ず俳句を書こうと思えば材料が無いとどうしようも無いのですから、句材を戴く為に方々へ出歩くと言う行動をします。この行為は学課で言うなら、体育に相当すると言えます。
次に情景を言葉に変換すると言う近代人だけしか出来ない作業をします。これは目で捉えた風景と感動した心を文字で表現するのですから、この文字に置き換えると言う作業は物理的な能力を必要とします。
三番目に、書くと言う国語の能力は当然で、それにはきちっとした言葉の使い方や文法が正しく使える事が必須です。
四番目に、推稿すると言う作業をしますが、それは言葉を捜してよりその情景に相応しいものを当てはめるのや、要らない言葉を削ぎとって確実に適切な言葉だけを残す事で、数学的な能力を駆使します。
五番目に、俳句を短冊とか色紙やその他色々な物に墨書します。これは当然書道に通じます。
六番目は、俳句を書いたものに添えて色んな俳画といって絵を描く分野も有ります。
七番目に、俳句を朗詠すると言う行為は音楽に相当すると言えます。
八番目に、俳句は宗教的な精神性が底に流れていますので、人間の精神的な有り方が問われます。昔の学課で言うなら修身の分野です。
ここで三次元的な工作は余りする機会が有りませんが、それでも私の花を俳画の変わりに添える場合は三次元の工作です。又俳句を書く物を自分で作って味のある形の物を楽しむ事もありますので、工作をする様な器用さも必要です。
こうして挙げて見ますと、俳句は人間の持つあらゆる能力を駆使する文学だと言う事が分ります。
そして句材には自然全ての働き、人間の行動全てに渡ります。即ち宇宙の現象全てが対象です。
私は著書を作りだした初の頃に〔宇宙は俳句〕と題して一千冊を読んで戴いた事がありますが、この題名は芭蕉の俳句を研究していた時に到達した究極の真理の言葉だったので、それを題名にしたのでした。そしてこの〔宇宙は俳句〕と言う言葉の持つ意味を分析して、その一部と言える事を書いたのが〔人間の能力全てを使う俳句〕と言う此の文章になります。

平成十九年二月     磯野香澄

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