推敲指導2

原 暗き世も杯交わし初笑い
推 暗き世も杯交わす初笑い


 原句で[杯交わし]で口当たりも良く滑らかに書けていますが、これは結果的にお話になっていて、読み手はああそうですかと言った反応しか有りません。そこで[杯交わす]にしてリアリテイが感じられる様にしました。又別の推敲の仕方として書いてみますと[暗き世も]を[暗き世や]にし“も”を“や”にして原句の[交わし]にすると字面では良くなりましたが、内容的に相反して詩的情感がなくなりました。色々推敲して最初どう思ったかがきちっと表現出来る所迄推敲したいものです。

原 初日の出鎮守の森の靄晴れて
推 初日の出鎮守の森の靄あがり


 現句の場合日の出と靄の関係が曖昧で、日の出で靄が晴れたのか靄が先から晴れていたのか、どちらだと言う所を[靄あがり]として初日の出によって靄が晴れたとすると全体の整合性が生じました。

原 お礼肥貰い年越す梨畑
推 お礼肥まいて年越す梨畑


 原句では[貰い]でこれはよくある事で、うっかり擬人法で書いています。これを[まいて]として、作者が梨の畑にしっかりと作業が出来て、年を越す満足感が書けました。

原 餅搗きや蒸篭を囲む工場跡
推 餅搗きや蒸篭を囲み工場跡


 この作品も最初の“暗き世”の句と同じ様に[囲む]としますと唯お話をしているだけの作りになっています。そこで[囲み]にしますと現実感が出ました。助詞をどう使うか、ここが俳句の難しい所です。

平成二十一年一月

 

 

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