推敲指導4

原 裸木や鳥の巣透ける裏の山
推 裸木に鳥の巣透ける裏の山


 原句で[裸木や]とや切れにしていますが、ここで一旦切れると鳥の巣が何処か別の所に有る様に思えます。そこで切らずに[に]で続けると裸木に鳥がかけた巣が裸木と同じ様に、葉が取れて枝だけが透けて見えて、とっくに鳥が捨てた巣で寒そうな裏山の様子が見えました。

原 春霞たなびきにけり愛宕山
推 春霞たなびく朝や愛宕山


 原句の [たなびきにけり]ではせっかく良い情景を見られたのが、短歌の下を切った様な感じで勿体無い事です。[けり]は俳句の場合殆ど使いません。そこでこの二文字で[朝]としますと、頂上が一段高くなった愛宕山に霧がかかって流れている様子が実感出来て、その情感が感じられる様になりました。

原 春月やかすかに聞こゆ笹の音
推 春月やかすかに揺れる笹の音


 原句では[聞こゆ]になっていてこれでは月が出ているのに辺りが見えません。[春月]の意味が無いのです。そこで[揺れる]にして月の光で笹が揺れているのがおぼろに見えて、その音が聞こえているとしますと、一応は整合性が生じました。

原 友の家二膳目催促豆ご飯
推 友の家二膳目そっと豆ご飯


 原句の[催促]では当然貰える者がまだ来ないのでそれを正当化している事になります。そして俳句に熟語はなるべく使わない事と言えますので[そっと]として状態を表す言葉にしますと、自分の立場と豆ご飯の美味しさが書けて、その情景が見える表現になりました

平成二十一年三月

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