推敲指導5

原 客を待つ午後や山吹谷に咲き
推 客待つや谷は山吹今盛り


 原句は“午後や”とや切れになっているので“山吹”が別の事になって「どう言う事なの?」と言う事になりますので、少し高度な推敲になりますが“午後”が働いていませんのでこれを省いて“客待つや”として“谷は山吹今盛り”とします。原句と同じく[や]切れにしていますがこの場合は字面では切れていても、内容はつながっています。客を待つとは暇な事で美しく咲いた山吹を見ています。そして満開の山吹を賛美する反面その盛りに比べて『店の暇な事よ』と言う詠嘆が底にあります。

原 シャッターのモデル花見に興をそえ
推 シャッターのモデル花見の人が見る


 原句では“興をそえ”とありますがこれは説明になっています。又この言葉の為に“花見に”と言う言葉迄説明文にしていますので、その言葉を具体的に表現します。“花見の人が見る”としますと具体的に花を見に来た人が、写真撮影に興味を引かれていると書けました。ただ“花見”とある上に“見る”と重なっているのを避けたいところでも有りますが、まあこの辺で良いと言えます。

原 車窓へと迫り来る冨士春の旅
推 車窓へと迫り来る冨士花の旅


 原句では“春の旅”とありますが“迫り来る冨士”と[春]ではこの内容の場合春夏秋冬何時でも当て填める事が出来ます。そこで冨士が見える感情に当て填まるものが感じられないと一句として完成しませんので、一応“花の旅”としました。花を見る旅の中途で冨士が見えて豪勢な旅であると喜びが書けました。又〔迫り来る冨士〕と書けたのは現実感があって実際見て書けたもので良かったと思います。

原 陽射し浴び菜の花畑足を止め
推 菜の花の畑に陽射し足を止め


 原句の“陽射し浴び”ですと下五の“足を止め”にかかって作者が陽射しを浴びている事になります。そうなると「それがどうなの?」と言う事になりますので、そこで菜の花に陽射が当っていると表現するには“菜の花の畑に陽射し”とします「ええっ美しい」と思って、当然“足を止め”となります。この様に上五が下五につく事もありますので、その言葉が的確に働いているかを気をつける事です。

平成二十一年四月

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