あるところに、悲しくて悲しくてしかたのない人がいました。その人がお寺の和尚さんに「どうしたらこの悲しみが消えるでしょうか」とたずねました。お寺の和尚さんは、「それでは、とっても幸せな人の家のかまどの灰をもらってきて、自分の家のかまどにくべなさい。そうすれば悲しみは消えてなくなるでしょう。」と言いました。 それで、その人はさっそく幸せそうな隣の家の人のところへ行って訳を話し、かまどの灰をくれるように頼みました。隣の家の人は、「灰をあげたいのはやまやまですが、そんな訳なら私の家の灰は役には立たないでしょう。なぜなら私は実はこれこれこんな事情で、とても幸せとはいえないのです。どうか他をあたってみて下さい。」と言いました。 その隣の家の人も、またその隣の家の人も、幸せそうに見えていても聞いてみるとそれぞれに悲しみをもっていて灰はもらえません。村中の家を回ってみてもだれも「とっても幸せで悲しみが1つもない」なんていう人はいませんでした。 そうして灰をさがしているうちに、その人は「悲しみは誰の心にもあるんだなぁ」と少し気持ちが軽くなったということです。 |