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遺伝子医学・分子生物学
組換えDNA実験法や遺伝子操作を中心にして,さらにその他の技術を組み合わせて,
有用な生理活性物質や動植物個体を開発したり,それらを大量に生産する技術。
この本来の定義から離れて,組換えDNA実験の同義語として使われることのほうが一般的である。
遺伝現象を分子レベルにおいて解明しようとする生物学の一領域。
現代生物学の中心的位置を占める。
分子遺伝学では,組換えDNA実験によってクローン化された遺伝子の構造をもとにして
タンパク質や酵素などの生体分子をつきとめ,それらの働きを解析して生命現象を説明しようとする。
1930年代にM. Delbruckを中心として,バクテリオファージを研究材料にして,生物学に数量的な法則を導入し,
物質的な基礎をかためようとする新しい生物学として創始された。
1953年,J. D. WatsonはF. C. Crickとともにデオキシリボ核酸(DNA)分子の立体構造について
「二重らせん仮説(ワトソン・クリックのDNAモデル)」を提唱し,
DNAの分子構造から遺伝情報が子孫に伝えられ,発現される仕組みが説明されることを示した。
次いで,大腸菌とそのバクテリオファージやプラスミドを主な研究材料にした分子遺伝学の興隆時代が訪れ,
遺伝子の構造と働きについて基本的な知識が得られた。
1972年,最初の組換えDNA実験がP. Bergらによって発表され,
組換えDNA実験の成功によってそれまで不可能であったヒトや動物の遺伝子を分子レベルで
解析することが可能になった。
1980年,J. W. Gordonはクローニングされた遺伝子をマウスの受精卵に注入して
トランスジェニックマウスの作製に成功した。
この研究方法は,1989年M. R. Capecchiによって始められたノックアウトマウスによる解析方法とともに,
細胞分化や個体発生,器官形成,発癌の過程で作用する遺伝子が動物個体内でどのように働くかについて
解析することを可能にした。
1985年,K. B. Mullisはポリメラーゼ連鎖反応(PCR〔法〕)を開発し,
この方法によってきわめて微量な遺伝子DNA断片を増幅させて検出し,解析することが可能になった。
最近,遺伝子をクローニングしても,断片的な情報に還元しただけで生命現象の解明にはほど遠いという反省から,
細胞あるいは動物個体で発現しているすべての遺伝子をクローニングし,
遺伝子の番地を付けてカタログ化する均一化cDNAライブラリー(均一化ライブラリー)が発表され,
また国際協力研究として「ヒト・ゲノム計画human genome project」が1989年より発足し,
最終的にはヒトの染色体上のすべてのDNAの塩基配列を明らかにすることを目的としている。
医学領域では1985年,L. M. Kunkelは,進行性筋ジストロフィーで異常を起こしている
ジストロフィンdystrophinのcDNAクローニングに成功し,
これを契機としてさまざまな遺伝病の遺伝子がクローニングされ,
患者や保因者の診断,出生前診断などの遺伝子診断〔法〕が行われ,
さらに,患者に遺伝子クローンを移入する遺伝子治療が行われるに至った。
分子遺伝学の応用である遺伝子工学によって
成長ホルモンやインターフェロン,コロニー成長因子などの医薬品が開発された。
分子遺伝学は基礎生物学,医学,薬学,農学,工学などの広い分野でその研究手法が使われ,
生物系科学全般に時代を画する進歩をもたらした。
さらに分子遺伝学の進展は社会思想,哲学,倫理,文学,経済,コンピュータの開発思想などにも
大きな影響を与えている。
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