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高齢化社会
人口構造が高齢化していく状態にある社会を言う。
人口の高齢化を示す指標はいろいろあるが,
通常は総人口に占める高齢(65歳以上)人口(65歳以上人口,老年人口ともいう)の割合を示す
老年人口の年齢構造係数(老齢人口比率)とか,
生産年齢人口(15〜64歳人口)に対する老年人口の割合を指数化した老年人口指数などがよく使用される。
人口高齢化の原因は,その社会の人口が人口移動のない封鎖人口であるかぎり,
出生率,死亡率の低下がある程度持続された結果とされている。
なお出生率,死亡率の低下が持続的に続くという状態(人口転換現象とか人口動態革命という)は,
社会が産業化する過程と関連しておこることが,経験的に明らかにされていることから,
高齢化社会は産業化と結びつけて,後期産業化社会あるいは脱産業化社会と合わせて,論議をする場合もある。
[高齢化する日本の社会]
日本の高齢化社会の始期をいつごろとするかについては
必ずしも一致した見解があるわけではないが,
総人口に占める高齢(65歳以上)人口の割合が7%台になった1970年ころを始期とする主張が一般的である。
そしてその後の高齢人口割合の推移をみていくと,80年に9.1%,90年に12.1%,95年に14.6%となっている。
厚生省の社会保障・人口問題研究所の将来人口推計によると,
2000年に17.2%,2010年22.0%,2020年26.9%,2030年に28.0%と急速に高まっていくとされている。
今後の日本の高齢化社会は出生率の低下傾向が続くことによって,
新たに少子・高齢化社会という言葉が登場するようになってきている。
このなかでとくに留意すべき点として,
(1)人口高齢化の速度が異常に速いということ,
(2)老年人口の比率が著しく高く,絶対数が多いこと,
(3)増大する高齢人口のうち,とくに80歳以上の高齢者が激増していくこと,
(4)これまでの高齢化社会は従属人口指数(年少人口と老年人口の和を生産年齢人口で割った指数)が
史上最低まで低下していくなかで高齢化を迎えたのに対して,
21世紀の高齢化は従属人口指数が急速に高まっていくなかで展開していくこと,などがあげられる。
これに加え今後の経済,社会の変動と関連する人口の動きのなかで,
これからの高齢化社会にいくつかの留意すべき問題が生じてくる。
たとえば核家族化がいっそう進み高齢単身世帯や高齢夫婦世帯が増えるなどの事情によって
家族形態や家族機能が変化し,経済構造の変化,高学歴化,女性の社会参加の機会の増大などが顕著になっていく。
このために一方では80歳以上の高齢者の増加に伴う虚弱あるいは障害老人の激増が予想され,
他方では家族介護や女性の介護負担によって支えられてきた介護問題が深刻化し,
介護の社会化は避けることのできない問題となってきている。
また予想以上の少子・高齢化の進展と従属人口指数の高まり等によって,
従来予想していた以上に社会保障給付費の増加がみられるのに対して,
それを負担する条件は従来以上に悪化するために,社会保障構造そのものの見直しは必至となってきている。
これに加え高齢者や女性の労働力化率の促進が課題となり,
高齢化社会における雇用問題に新しい課題を生み出すことになる。
あるいは人口の社会移動の変化により,地域別の人口高齢化にいろいろの変化が現れる。
たとえばこれまで人口高齢化が著しく進展してきた過疎地域の高齢化がこれまで以上に進むとともに,
他方では人口移動率の低下,定住化傾向の進展によって,
これまで比較的おくれていた大都市地域でも今後急速に人口高齢化が進展し,都市型高齢化社会が現れ,
21世紀に本格化する高齢化社会に新しい問題を投げかけることになる。
[高齢化社会をとらえる視点]
このような変化とは別に,日本の高齢化社会は,
現在とは異なる経済・社会・文化などの発展状況とのかかわりのなかでとらえることも重要である。
たとえば経済の低成長やサービス経済化の進展が人口高齢化にどのような影響を与えるかとか,
あるいはマイクロ・エレクトロニクスやロボットなどの先端技術の発展や情報化社会の進展が
高齢化社会に与える影響など,本格化する高齢化社会をとらえるいろいろの視点がありうるのである。
したがって人口高齢化を契機に現れる高齢化社会の課題は,たんに増大する高齢者の問題とか,
あるいはこれら高齢者の老後生活に欠かすことのできない保健,福祉
あるいは年金などの所得保障の問題だけではなく,より広く多面的にとらえられる必要がある。
すなわち高齢化社会の課題は高齢者問題にとどまらず,各世代の問題として,
ひいては全国民の課題として理解されなければならない。
そして高齢化社会の問題を明らかにするためには,
いろいろな学問・研究領域の協力を内容とする学際的接近が必要になるとともに,
高齢化社会への対応を図るためには行政面でも各省庁の枠をこえた努力が求められる。
世界大百科事典より引用