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MRSA


英】methicillin resistant Staphylococcus aureus

同義語:メチシリン耐性黄色ブドウ球菌

MRSAはメチシリンなどのペニシリナーゼに安定なペニシリン剤,セフェム剤などのβ‐ラクタム剤のみならず,

アミノ配糖体剤,マクロライド剤などの多くの薬剤に対し多剤耐性を示す黄色ブドウ球菌である。

黄色ブドウ球菌は細胞壁を合成する4種類のムレイン架橋酵素,

別名ペニシリン結合タンパクpenicillin binding protein(PBP)を有しているが,

MRSAはこの4種類のPBPのほかにPBP‐2′と呼ばれる78 kDaの特殊なペニシリン結合タンパクを産生する。

β‐ラクタム剤は,このPBP‐2′に親和性が低く,

このためMRSAは薬剤が投与されても殺菌されずに増殖していくことになる。

このPBP‐2′はmecAと呼ばれる遺伝子によりその産生が制御されており,

β‐ラクタム剤の投与により,これらの薬剤に耐性のmecA遺伝子を有するMRSAが残存選択されてくることになる。

MRSAの病原性は一般の黄色ブドウ球菌とほぼ同等と考えられる。

その出現には抗菌薬の開発,進歩が大きく関与しており,イギリスで1961年に最初の報告がなされている。

その後,欧米では1960年代後半から,

わが国では第二,第三セフェム剤が使用されはじめた1980年代から増加してきているが,

わが国におけるMRSAの分離頻度は世界的にみても非常に高いこと,

MRSAは多剤耐性であることに加え,元来黄色ブドウ球菌であるためヒトへの定着性が強く,

コアグラーゼ,エンテロトキシン,ロイコシジン,TSST‐1(トキシックショックシンドロームトキシン),

エクソフォリアチン(表皮剥脱毒),溶血毒などの種々の毒素や菌体外酵素(細胞外酵素exoenzyme)を産生し,

外科手術後の患者や免疫不全患者,長期抗菌薬投与患者などに院内感染症を惹起させる。

このため,とくに病院〔内〕感染対策が重要となっている。


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