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脳死


脳の寿命が尽きた状態をいう.

従来,個体の死は循環や呼吸系の機能停止ならびにこれに伴う脳機能停止を確認することによって

診断してきた(従来の死の判定)。

しかし,個体の本質は脳機能にあるという見地から,

脳の機能停止(脳死)をもって個体死とみなすという概念(脳死による判定法)が登場し,

医学的にも定着してきている。

従来の死の判定も終局的には脳機能の停止(付随的脳死secondary brain death)であるから,

通常の死の判定においては問題はないとみられるが,

これとは逆に重篤な脳損傷,頭蓋内出血,麻酔事故,一過性の心停止においては,

脳死のみが先行する(原発性脳死primary brain death)ことがあるということが明らかとなり,

この場合には,循環や呼吸機能とは無関係に脳死をもって個体死somatic deathと

みなすことができるか否かは医学界のみならず社会的にも重要課題となっている。

脳死の判定法としては,脳幹部の機能停止をメルクマールとしたもので,

1) 深昏睡,2) 両側瞳孔散大対光反射および角膜反射の消失,3) 自発呼吸の停止,

4) 急激な持続性低血圧,5) 平坦脳波,6)  1) 〜5) がそろって6時間後まで継続的に検出されると

いったことがあげられる(脳波学会例,1973)。

このほか聴覚性脳幹部反射をはじめ各種の脳神経反射の結果や脳血管撮影法も補助手段として

脳死の判定に利用されている。

1968年のアメリカのハーバード大学医学部の不可逆的昏睡の判定基準をはじめとして,

わが国においてもいろいろな医学関係の学会が検討しており,

厚生省の脳死委員会(1985)も脳死の判定基準を推奨している。

そもそも,脳死の判定は臓器移植や救急医療の中止と密接に関係しているといった背景から,

これを個体死とみなすか否かについては社会ならびに社会倫理的にも論争を呼んでおり,

日本医師会生命倫理懇談会(1988)が脳死と臓器移植に関する最終報告を行ったり,

臨時脳死及び臓器移植調査会が最終報告書を提出し,

いずれも脳死をもって人の死として臓器提供をしてよいという見解を出していた。

1997年6月,国会で臓器移植法が成立し,脳死を人の死と見なすことができる条件が定められ,

脳死‐臓器移植の問題も新しい局面をむかえることになった。



    
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