三月書房HOME販売速報総目次三月書房販売速報[105]


e-mail 版 三月書房販売速報(仮題)
旧号合冊 第11冊[101〜110号]
通巻101号 2008.10.21発行 通巻106号 2009.12.31発行
通巻102号 2008.12.31発行 通巻107号 2010.03.30発行
通巻103号 2009.03.10発行 通巻108号 2010.06.30発行
通巻104号 2009.06.09発行    
通巻105号  2009.09.29発行    
※各号の最終版を一部修正して掲載しました
  ※非営利目的の転送は歓迎します
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三月書房販売速報[105]
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2009/09/29[11-03-105]  (c)SISIDO,Tatuo    *転送歓迎* 

     e-mail版 三月書房 販売速報(仮題) 105号
     
      ※いちおう出版業界向けに制作してます※
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[#00] あいかわらず出版業界の景気はよくないようで、夏頃からまた一段と悪化しつつあるような
       感じです。世間でも小売業界の売上げはかなり落ちているようですが、消費者物価もだだ下
       がりで、いよいよデフレスパイラルに突入かもといわれてます。再販制度とデフレは比較的相
       性がよいように思っていましたが、デフレスパイラルとなれば、むしろ足かせとなるでしょう。
       うちは他店よりもかなり早くから新本特価販売をやってますが、偶然ながらもデフレ対策として
   はたいへん有効だったといえるでしょう。現在では、特価本を扱う書店が増えたばかりでなく、
      新本と古本の併売店が急速に増えつつあるようですが、これもデフレの影響が大きいからでしょう。
   
   産経新聞の8月9日の記事“新刊書店「冬の時代」…古書買い取り販売に活路?”によると、
       某書店は発売6カ月以内の文芸書なら定価の30%程度で買い取るとのこと。よほどの売れ筋
       ならともかく、どうということないものまでこんな値段で買い取っていたのでは、商売になりそうも
       ありません。まさか売れなかったら新本として返品するつもりではないでしょうが、第三者にも
       はっきりわかるような何らかの障壁を設けないと、まじめにやっていても疑いの目で見られるこ
       とは避けがたいでしょう。

   10年近く前のことですが、京都の某書店が系列の新古書店で買い取ったコミックを大量に返品
       していたのが取次にばれて、何千万も弁償させられた上で閉店に追い込まれたことがあったと
       聞いてます。別のうわさでは1店だけではなくて2店だったとかとも聞きましたから、おそらく全
       国どこの都道府県でもざらにあった話でしょう。今後、不正返品が増えるようなら、委託制度が
       崩壊してしまうかもしれませんが、そうなれば再販制度ももたないでしょう。
   
   デフレも問題ですが、IT化によって紙の本の売上げが本格的に落ちつつあることはもっと根本
       的な問題です。「出版ニュース 9月下旬号」に載っていた「今、アメリカの大学でライブラリアン
       と呼ばれる職業が絶滅しつつある(石坂久幸)」という記事は、なかなかスゴイものでした。英
       語圏ではネットで利用できるデータベースが急速に充実しつつあるようで、アメリカの大学図書
       館では利用者が激減し、図書館そのものの規模がどんどん小さくなりつつあるようです。石坂
       氏の説によると、わりと近いうちに、新聞、自費出版代行、復刻版、マイクロ・フイルムの作成、
   辞書・事典・索引・便覧・名鑑・地図などの参考図書の出版などが、ほぼ確実に消えてゆくだろ
   うとのことです。
   日本では図書館の無料貸本屋化が以前から問題になってますが、今後も英語圏同様のIT化
   が進むとすれば、むしろそれは必然であり、なおかつ無料インターネット・カフェも兼ねることに
   なるでしょう。
   
   
  [#01] 最近売れてるような気がする本(順不同)

  ◆「続 臨床瑣談」中井久夫 みすず書房
  ◆「ドノゴトンカ:創刊準備号」りいぶる・ふとん ※売り切れ
  ◆「京都の迷い方」京阪神エルマガジン社
  ◆「南海キッド」杉浦茂 青林工藝舎
  ◆「イエローマン」杉浦茂 エンターブレイン
  ◆「吉本隆明1968」鹿島茂 平凡社
  ◆「吉本隆明のDNA」藤生京子 朝日新聞出版
  ◆「よい『お葬式』入門。」吉本隆明ほか 講談社  
  ◆「 (歌集)空庭」黒瀬珂瀾 本阿弥書店
  ◆「幻想の重量:葛原妙子の戦後短歌」川野里子 本阿弥書店
  ◆「 (歌集)駒鳥」江戸雪 砂子屋書房  
  ◆「私の戦後短歌史」岡井隆 角川書店
  ◆「現代短歌朗読集成」 CD全4巻/付・解説書1冊 同朋舎
     売れたのはまだ5冊ですが、定価が8400円ということを考えると上々でしょう。この本が売
     れたのは通販ばかりですが、某結社のメーリング・リストに宣伝を流してもらったのと、ブ
     ログ「三月記(仮題)」で宣伝したのが効果的だったようです。
 
  ◆「京都繁華街の映画看板“タケマツ画房の仕事”」
     竹田耕作・竹田啓作/編著 キャッスル・カンパニー
     この本についてはブログ「三月記(仮題)」をごらんください。
  

[#02] これから売れそうな気がする本(順不同)

  ◆「(歌集)西行の肺」吉川宏志 角川書店※入荷済み
  ◆「対峙と対話」大辻隆弘、吉川宏志 青磁社※入荷済み
  ◆「人生に退屈しない知恵」森毅×鶴見俊輔 編集グループ〈SURE〉
  ◆「ドノゴトンカ 創刊号:特集・辻潤」 りいぶる・ふとん
  ◆「(増補改訂版)異形の心的現象」吉本隆明/森山公夫 批評社

    
[#03] 近ごろちょっとまずいことになったらしい出版社など

   春以降、ゴマブックス、エム・ピー・シー、草の根出版会、社会保険新報社、雄鶏社、ユーリーグ、
   メディア・クライスなどが破綻したようですが、うちの店とはほとんど縁のない出版社ばかりでした
   から、幸いなことに売れ残りは1冊も見あたりません。

   ところで、「ゴマブックス」と「ごま書房(※正確にはごま書房新社VM)」がまったくの別会社だっ
   たことをやっと確かめました。以前からややこしいなとは思っていたのですが、とくに不便もない
   ので無視してました。“ごまの本”というシリーズの版元が「ゴマブックス」ではなくて、「ごま書房」
   であるというあたりが、とくに紛らわしかった原因のようです。「ゴマブックス」の危機説が流れる
   中で「ごま書房」の本をあわてて返品してしまった書店も少なくなかったようですが、これだけ似
   た社名だと無理もないでしょう。
   同様に“ワニの本”を出している「KKベストセラーズ」と「ワニブックス」も別の会社だとやっと確
   かめました。「KKベストブックス」とか「ワニマガジン」というのもありますが、こんなややこしい
   社名だと、どれかが危なくなったとき、他の社も巻き添えを食って風評被害にあう可能性が少
   なくないでしょう。
   
   晶文社が業務縮小とのうわさは聞いてますが、正式な発表はまだないようです。しかし、同社
   から著書を出している岡崎武志氏がブログで公表されたので、ネット上ではわりと知られてい
   るようです。「書いていいのかな。…晶文社の一般書、文芸部門が縮小され、在庫のみを売っ
   ていくという体勢になり…」
   
   もともと晶文社は、学校案内で稼いで一般書の赤字を埋めているらしいと聞いていましたが、
   おそらくその学校案内が少子化やネット情報の影響で以前のようには売れなくなってしまった
   のでしょう。以前は実用書は晶文社出版という別会社でしたが、ちかごろは1本化されている
   ようです(ひょっとしたらいまでも別会社かも)。新刊が出なくても、長く売れそうな旧刊書はま
   だまだ多数ありますが、しばらくは返品の方が売上げよりも多い時期が続くでしょうが、その
   返品の大波さえ乗り越えることができれば、あとはなんとかなるのではないでしょうか。
   
   先の「ゴマブックス」の危機説はかなり以前からネットに流れていましたが、これは著者関係
   のブログに印税や原稿料が滞って困っているとの情報が載ったのが元でした。以前なら、著
   作者側のこの手の情報が、流通側に広く流れることはほとんどなかったのですが、ブログ等
   の発展により今後この傾向はさらに加速することが確実です。それゆえ、出版社の資金繰り
   が一時的にピンチになった場合には、うるさそうな著者への支払いを優先的に行ったほうが
   よいでしょう。印刷とか製本とかへの支払いが滞っても、いきなりネットに公表されることはな
   さそうですから。
   
  ○うちの店にとっては上記の出版社よりも、書店用品販売の「出版サービスセンター」の倒産
   の方が影響がありました。ここからは日販帳合で手提げバックや雑誌袋や通販用ケースな
   どを仕入れてたのですが、販売の最小単位が他社よりも少量なのが長所でした。
   

[#04] <天に唾する>京都の書店のうわさ(その67)

  ○前号にてお知らせした「古書 善行堂」と「町家古本はんのき」は無事開業して、それぞれ
   順調のようです。両店とも今月末で三月になるわけですが、どちらもまだ見学に行ってない
   ので、それ以上のことはわかりません。とくに「善行堂」はうちと定休日が同じ火曜日なので
   今後も行く機会はなさそうです。ちかごろ、書店以外でも火曜定休の店が増えているような
   気がしますがどうでしょう。
      
  ○「ブックファースト京都店」が8月上旬に売場を縮小しました。3階4階5階と6階の半分あった
   売場が、4階と5階だけに減ったので、およそ7分の4になったわけです。2007年10月のオー
   プン当時の広告では約30万冊の在庫とありましたが、現在は約20万冊と訂正されてます。
   単純に計算すると、売場面積が43%の減少で、在庫冊数は33%の減少ということは、やや
   ゆったりとした並べ方が、ややぎっしりに変わっているのではと思いますが、ちょっと見たと
   ころでは、なんともわかりませんでした。
   この件に関してはブログ「三月記(仮題)」もごらんください
      
  ○筑摩書房の「全国書店ランキング」から京都市の分のみ 
   ※順位は全国順位。( )内は前期順位。2008/06〜2009/05  
    24(27) ジュンク堂京都店  
    31(32) ジュンク堂BAL店     
    38(48) 京大生協ブックセンター
    54(42)  アヴァンティBC     
    67(118) 三省堂京都店    
   107(97) 大垣烏丸三条店      
   113(227) ブックファースト京都店        
   126(135) 立命大存心館ブック店
   209(172) ふたば書房京都タワー
   221(234) 同志社大生協書籍部

   以上が300位までです。これで見ると2007年10月オープンだったブックファーストはけっこう
   伸びているように見えますが、ほぼ同じくらいの広さのジュンク堂京都店に比べると、まだ
   冊数では半分以下です。しかし、2倍以上も広いBAL店ですら京都店に負けていることを見
   ると、ジュンク堂京都店が強すぎるのか、空中店舗はやはり不利なのかというあたりでしょう。
   ちなみに三月書房は591(713)と、かなり上昇しているようになってますが、これは毎月きっ
   ちりとは送っていないためでしょう。ようするに13ヵ月分送った年と11ヵ月分しか送っていな
   い年があったとかそういうようなことです。実際にはほとんど伸びていないか、むしろ落ちてい
   たような気がしますが、それでも1000位以内にあるというのはなかなかけっこうなことと思います。
      

[#05] 雑、雑、雑、……
   
  ○うちの店の宣伝を無料でしてくださった雑誌
   
  「ディスカバー・ジャパン 創刊号」エイ(木偏に世)出版社
   これは特集が“京都の秘密”となってますが、書店関係は別に何の秘密情報もないようです。
   ブックディレクターの幅允孝さんが、書店を回って実際に本を購入してくださるという、まこと
   にありがたい企画で、うちのほかは「恵文社一乗寺」、「アスタルテ書房」、「KARAIMO BOOKS」、
   「萩書房一乗寺」、「ガケ書房」、「大龍堂書店」、「shin-bi」。「KARAIMO」は今年の3月にオープ
   ンしたばかりの上京区の古書店、「shin-bi」は数年前に“COCON烏丸”内にオープンした京都
   精華大学のアンテナショップ、その他はおなじみの書店ばかりです。「古書 善行堂」と「町家古
   本はんのき」は、せっかく行ったのに休みだったとのことで、外観写真のみ載ってます。
   なお、うちの店では特価本の「日本遊歩記」など計10冊を買っていただきました。他店でも数冊
   から最高30冊(「KARAIMO」)も購入されたようです。

  「Meets Regional別冊 STREET BOOK“通りを楽しむ京都街本
   うちの店は“二条を歩けば本に当たる。”という記事に、「檜書店」、「月と六ペンス」、「カフェ・ビ
   ブリオテック・ハロー」と一緒に載ってます。うちは二条通りには面してなくて寺町通りを北へ3軒
   ですが、他の3店は寺町二条の角から西へ行って、烏丸通りまでの間にあります。「月と六ペン
   ス」というのは初耳でしたが、わりと最近オープンしたブック・カフェのようです。
   何冊かおすすめ本をと言われたので、取材時の新刊本から「世界は分けてもわからない(福岡
   伸一)」、「杉浦茂ニコニコ大会(青林工藝舎)」、「京都繁華街の映画看板」、そしてポット出版の
   「エロスの原風景(松沢呉一)」の4冊を選んでみました。他の3冊は表紙だけの小さな写真です
   が、「エロスの原風景」は“ノーパン喫茶の頁をわざわざ開いた状態にした、大きな写真が掲載
   されてます。こちらは4冊選んだだけで、とくにこの本をプッシュしたわけではなく、ましてやこの
   頁をすすめた覚えはまったくありません。取材に来られたのは、編集者、ライター、カメラの3名
   のお姉さま方で したが、そのどなたかのセンスなのでしょう。ポット出版は何か粗品でも送った
   ほうがよいかも。

  「歌壇 2009年10月号 特集・短歌の図書館」本阿弥書店
   これは寄稿依頼を引き受けたので、無料で宣伝していただいた上に原稿料までいただけること
   になってます。出版業界以外の商業誌から原稿を依頼されたのは初めてですが、書いたのは
   いつもと同じようなネタで、うちの店におけるここ何十年かの短歌本の販売についての雑感の
   ようなものです。見開き2頁で2000字程度、「レジからの眺め」というタイトルは編集部がつけて
   くれました。9月15日発売ですから、立ち読みは10月14日までにどうぞ。
   
---勝手に宣伝-----------------------------------------------------
  「歌壇 2009年10月号」定価800円 本阿弥書店
    “特集・短歌の図書館ー歌人の読書案内”    
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この「販売速報(仮題)」はe-mailの性質上,簡単に改訂することができ
ますが、その度に全読者に送信するのは、お互いに煩わしいので、最終版
をおよそ1ヶ月後にHPに掲載します。

   ◆1998/11/27 創刊準備号(通巻01号)発刊
   ◆「バックナンバー(01〜102号)」はHPにて公開中です。
     
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