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e-mail 版 三月書房販売速報(仮題)
旧号合冊 第11冊[101〜110号]
通巻101号 2008.10.21発行 通巻106号 2009.12.31発行
通巻102号 2008.12.31発行 通巻107号 2010.03.30発行
通巻103号 2009.03.10発行 通巻108号 2010.06.30発行
通巻104号 2009.06.09発行    
通巻105号  2009.09.29発行    
※各号の最終版を一部修正して掲載しました
  ※非営利目的の転送は歓迎します
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三月書房販売速報[104]
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2009/06/09[11-02-104]  (c)SISIDO,Tatuo   

     e-mail版 三月書房 販売速報(仮題) 104号
     
      ※いちおう出版業界向けに制作してます※
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[#00] 景気底打ちとか、回復のきざしとか、いいかげんな報道がちらほらみられるようになってき
    ました。政府とかマスコミとかは、嘘であっても景気のよいことを言いふらす必要があること
   は、わからないでもありませんが、実体経済はあいかわらずたんたんと悪化しつつあるよう
   です。むしろ、いままでが恐慌のほんの序の口で、ほんとうのどん底はこれからだと考えて
   おいても間違いないでしょう。
   いずれにしろ、わが出版業界については、底打ちとか回復のきざしとかの、いいかげんな
   報道すらまったく見かけません。とくに雑誌の売れ行き不振と広告の急減による廃刊休刊
   続出は、もはや止めようがないようです。定期刊行雑誌の流通が細ると出版業界全体の
   流通がピンチになるということはもはや常識ですが、先日、もひとつ別の怖い話を聞きまし
   た。
   大出版社を支えているのが週刊誌やコミック誌などの定期刊行雑誌だとすると、あまたあ
   る編集プロダクションや小出版社の多くを支えているのが、企業や団体が発行している非
   売品の定期刊行雑誌の下請け仕事なのだそうです。保険会社、クレジット会社、自動車販
   売会社、化粧品会社、健康食品会社、学習塾、大学案内、各種会員制クラブ、航空会社、
   鉄道会社、宗教団体、その他無数の会社や団体が、会員や顧客や乗客その他に向けて
   定期的に発行している無数の雑誌類は、非売品ゆえに出版業界の売上統計に入ってい
   ませんが、その制作経費は莫大でしょう。その編集作業は大部分が外注であり、多くの編
   集プロダクションはそれらを受注することによって、経営がなりたっているわけです。
   そして、そちらで稼いでおいて、年に何冊かだけ自分たちの出したい本を出版している編
   集プロダクションや小出版社が少なくないようなのです。その下請け仕事が、企業の経費
   削減でどんどん減りつつあるそうで、編集プロの経営は今後かなり厳しくなりそうです。
   そうなると、儲かりそうもない自腹の出版物も出せなくなりそうで、この状態が1年か2年続
   くと、少部数の新刊書やマイナー雑誌のラインアップがかなり寂しくなってしまいそうです。
   そして、うちの店なんかの場合は、大出版社の雑誌不調よりも、もっとじわっとこたえそう
   な気がしてなりません。
   

[#01] 最近売れてるような気がする本(順不同)

  ◆「KAWADE道の手帖 谷川雁」吉本隆明ほか 河出書房新社
  ◆「親鸞(別冊太陽スペシャル)」吉本隆明ほか 平凡社
  ◆「吉本隆明・全マンガ論」小学館クリエイティヴ
  ◆「にゃおんのきょうふ」美津島明 純響社
    吉本氏は今年もお元気ですが、出版量はやや減少気味で、「マン
    ガ論」が単行本としては1冊目です。「にゃおん」はまだ一般流
    通していない新しい出版社の本です。少しだけ「吉本論」の部分
    があるので、うちの店では〈吉本〉本として売れています。この
    本についてはブログ「三月記(仮題)」をお読みください。
    
    
  ◆「大辻隆弘評論集 アララギの脊梁」青磁社
  ◆「言葉のゆくえ」坪内稔典/永田和宏 京都新聞社
  ◆「(歌集)くびすじの欠片(かけら)」野口あや子 短歌研究社
  ◆「この一身は努めたり」小高賢 トランスビュー
  ◆「(歌集)ゆきあひの空」石川不二子 不識書院
  ◆「(歌集)大空の干瀬」前登志夫 角川書店

  ◆「闇の鶯」諸星大二郎 講談社  
  ◆「竹内好が残したもの」鶴見俊輔・編 編集グループ〈SURE〉
  ◆「動的平衡」福岡伸一 木楽舎


[#02] これから売れそうな気がする本(順不同)

  ◆「アンティーク・ドール(別冊太陽スペシャル)」平凡社※入荷済み
  ◆「吉本隆明1968」鹿島茂 平凡社※入荷済み
  ◆「羽化堂から」前登志夫 NHK出版※入荷済み
  ◆「西遊妖猿伝 西域篇」諸星大二郎 講談社
  ◆「続 臨床瑣談」中井久夫 みすず書房
  
    
[#03] 短歌本の売上げ(TOP14) 2008/06〜2009/05

  01 30冊 河野裕子歌集「母系」             青磁社
  02 17冊 村木道彦歌集「存在の夏」           ながらみ書房
  03 16冊 小島ゆかり歌集「折からの雨」         本阿弥書店
  04 15冊 中澤系歌集「uta 0001.txt」[※1]        雁書館
  04 15冊 石川不二子歌集「ゆきあひの空」      不識書院
  04 15冊 吉川宏志「風景と実感」[※2]         青磁社
  07 14冊 竹山広歌集「眠ってよいか」         ながらみ書房
  08 13冊 坪内稔典・永田和宏「言葉のゆくえ」     京都新聞出版センター
  09 11冊 牧水賞の歌人たちVol.3「永田和宏」     青磁社
  09 11冊 永田紅歌集「ぼんやりしているうちに」[※3] 角川書店
  09 11冊 「続・河野裕子歌集」(現代短歌文庫)    砂子屋書房
  12 10冊 澤村斉美歌集「夏鴉」             砂子屋書房
  12 10冊 河野裕子「私の出会った人びと」      本阿弥書店
  12 10冊 高野公彦「ことばの森林浴」          柊書房

    [※1]2004年刊。通算38冊。
    [※2]2008年1月刊。通算28冊。
    [※3]2007年12月刊。通算32冊

   今期も短歌本の売れ行きはまずまず順調でしたが、前期よりは少し落ちたようです。
   (※前期に10冊以上売れたのが17点だったのに対して今期は14点)。ただし、ここに
   は載せてませんが、雁書館の休業バーゲンは半年で300冊ほど売れて、10冊以上売
   れた本もごろごろありましたから、その分も入れると大売れでした。他に冊数は不明
   ですがウェッジ文庫の「塚本邦雄の青春(楠見朋彦・著)」はとてもよく売れてます。
   

[#04] <天に唾する>京都の書店のうわさ(その66)

  ○4月1日に「大垣書店四条店」がオープンしました。四条烏丸交差点を北へ50メート
   ルほどの西側のビルの2階で、売場面積250坪らしい。
   この店についてはブログ「三月記(仮題)」をお読みください。
   
  ○“古本ソムリエ”の“善行堂”氏が、「ガケ書房」の近所で古書店を開店するそうです。
   氏のブログの5月9日付けに「ガケ書房近くに『古書 善行堂』の店舗を確保した。出来
   れば6月中にオープンしたいと思っている。」とあります。古書業界も景気は悪そうで、
   地べたの店をたたんで通販専業になる話はよく聞きますが、カフェなどとの複合店以外
   の新規開店は、ほとんど見かけなくなってます。いまどき地べたで開業するのは無謀と
   しか思えませんが、ほんとに大丈夫なのでしょうか。
   
   「善行堂」さんは本業は別にあり、“余暇”に集めた本を「ガケ書房」などで委託販売され
   てます。ちかごろは「ガケ」の常設棚以外にも、「海文堂」や「ブックファースト」等でしば
   しば出張販売をされてますが、仕入れはほぼすべて古書店の均一台とブックオフだけ
   というのは有名な話です。
   公安委員会の許可をとって開業すれば、お客からの買い取りは可能になりますが、古
   書組合に加盟する予定は、さしあたってはないとのこと。店番してたら仕入れに出掛け
   られないし、人を雇うのはたいへんだし、本業は続けられないし、クルマも必要だろうし、
   店賃の他にも様々な経費がかかるしでたいへんだと思うのですが、ご本人はかなり楽
   観的な見通しを持っておられるようです。先日うちの店に来られたので、止めたほうが
   よいのではと、いちおう言ってお きました。

   
   しかし、何が何でも翻意させねばというよーな義理はぜんぜんないので、あとは知った
   ことではありません。なお、開店後も「ガケ」などでの委託販売は続けたいとのことでし
   た。それにしても、いわゆる「セドリ」だけでよくそれだけの在庫を揃えることができるも
   のだと、ちょっとあきれるほかありません。
   ※参考図書「関西赤貧古本道 (新潮新書)

  ○「町家で古本屋!!開店までの記録帳」というブログがあります。   
   ネット古書店をしている若い方が3人で古書店の開店準備中とのこと。およその場所は
   教えてもらいましたが、まだ詳細は非公開のようです。このブログを読んでる限りでは、
   本番よりも準備の方が楽しい文化祭かなにかのような感じがしないでもありませんが。
   
  ○春秋社の「2008年度書店様売上ベスト300位リスト」に見る京都の書店

   ※順位は全国順位。( )内は2007年順位。期間は2008/01〜2008/12
  
    20(22) ジュンク堂京都店   前期比109%
    24(27) ジュンク堂BAL店       101%
    31(32) アヴァンティBC         109%
    57(79) 大垣烏丸三条店        141%
   121(---) BF京都店         ※2007年10月開店
   138(172) 三省堂京都店         130%
   154(173) 京大生協ルネ         124%
   196(197) 立命大存心館ブック店    106%
   268(410) BF四条大宮店         443%
   
   どこもえらく好調のようで、軒並み順位も売上げ冊数も増加しています。これが京都だけ
   のことなのかどうかはわかりませんが、春秋社全体でも、なかなか好調だったような雰囲
   気です。ちなみに全国1位の紀伊国屋新宿本店は5%減、2位のジュンク池袋本店は3%
   増でした。見落としかもしれませんが、前年196位、前々年95位だった大垣ビブレ店は見
   あたりません。

   
[#05] 雑、雑、雑、……
   
  ○NHKの子会社から「吉本隆明 語る ~沈黙から芸術まで~ 」というDVDが出ます。今年の正
   月に放送された番組に特典映像をつけたもので、けっこうよい価格ですが、うちの店なら
   少なくとも10枚位は売れそうです。しかし、DVDというのは非再販品のため、発行所のサイ
   トでは予約特価20%引き、そしてアマゾンでは27%引きの上に送料無料です。
   まことにばからしい話ですが、うちが日販から仕入れるとたぶん正味80%です。とても勝
   負にならないので、ネット通販の常連客にはお知らせだけにして、通販は辞退しました。

   それにしてもアマゾンの仕入れ値はいくらなのでしょう。お客に27%、アフリエイトに数%?、
   クレジットの手数料が数%、そして宅配便の送料と考えると、仕入れ値は最悪でも60%未
   満でしょう。
   なお、詳しいことは伏せておきますが、うちの店の案内で知ってアマゾンに予約された方が、
   今日現在、少なくとも10名おられることがわかっています。
   本も非再販品になったら、たとえば「1Q84」などは、アマゾンの占有率が現在の10倍くら
   いになるかもしれません。それを阻止するには、よほどの大書店でも、利益がほとんどな
   くなるくらいのサービスをするしかないというようなことになるのでしょうね。もちろんうちは
   そういう競争は辞退しますが。
   
  ○今春もいろんな雑誌や新聞にうちの店の記事をたくさん載せていただきました。

   「京都新聞」の2009年3月19日号では、永田和宏氏が「京都歌枕」に三月書房を取り上げ
   てくださいました。店内写真付きのかなり大きな記事で、うちの店が「歌枕」であるわけと、
   店名を読み込んだ短歌をいくつか紹介しておられます。まことにけっこうなことで、とても
   よい宣伝になってありがたいことですが、「歌枕」といわれるのはちょっと気恥ずかしいよう
   な気がします。しかし、「歌枕」というのは、はるばると訪れてみると、なにやらぱっとしない
   とこだったり、どこにあるのやら地元の人も知らなくなっていたりというようなことが、大昔か
   らよくあるようですから、うちもあっという間にそうなることでしょう。
   
   「月刊京都 2009年6月号」は本の特集で、うちの店も大きく載せていただきました。この号
   についてはブログ「三月記(仮題)」をお読みください。   
   
   京阪神エルマガジン社から5月に出た単行本「京都の迷い方 」は、“京都を愛する50人によ
   る京都案内。新スタイルな京都本”ということで、「三月書房」は永江朗センセが執筆されて
   ます。このセンセの文章はまったく文句のつけようのないけっこうなものですが、たいへんに
   けしからんことに、うちの店の店内写真は10年ほど以前のものの使い回しです。何しろレジ
   横に掲示してあるのは、今は亡き小沢書店の「前川佐美雄全集」の内容見本です。この写
   真はこの出版社の街ガイド雑誌には何度も載ったことのあるものですが、こんな新刊書にま
   で載るとは思いませんでした。ほかの49スポットの写真もひませの使い回しかどうかは知り
   ませんが、うちのよりはどれも新しそうな感じでした。

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この「販売速報(仮題)」はe-mailの性質上,簡単に改訂することができ
ますが、その度に全読者に送信するのは、お互いに煩わしいので、最終版
をおよそ1ヶ月後にHPに掲載します。

   ◆1998/11/27 創刊準備号(通巻01号)発刊
   ◆「バックナンバー(01〜102号)」はHPにて公開中です。
     
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