「年」の意味である。たとえば、毎年1月にアレクサンドリアで聖処女コレーKoreから生まれる救世主のように、毎年生贄とされ、そして再生する神の添え名である[1]。古代ギリシア・ローマ神話のアイオーンは、シヴァ-プラジャーパティを崇拝したタントラ教にもとづくものであったと思われる。シヴァ-プラジャーパティは、毎年、死の神となって人間の命を救った。ブラーフマナ(ヒンズー教の祭儀書)によると、「年は死と同じものである。そして、年が死であると知っている者、その者の命を年が破壊することはない」[2]。
Barbara G. Walker : The Woman's Encyclopedia of Myths and Secrets (Harper & Row, 1983)
アイオーンは、ギリシア語で(ある長さの)「時」「時代」「世代」の意。 グノーシス神話では至高の神的「対」から流出し、「プレーローマ」の中に充満する擬人化された神的存在である。(『ナグ・ハマディ文書』)
西部イラン、すなわち、かつてのメディア帝国の領域からアルメニア、小アジアにかけて、古来からズルヴァン信仰が根を張っていて、やがてミトラ神信仰(密儀)とも習合した。その担い手は元来メディア帝国内の祭祀部族であったマギ(Magi)であり、彼らが奉じる至高神「ズルヴァン」とは、アヴェスター語で(無窮の)「時間」あるいは「空間」を意味し、ギリシア語で「アイオーン」の名が与えられた。ズルヴァン信仰によれば、この神は善と悪、光と闇、男性性と女性性を同時に含み、アフラ・マズダーとアングラ・マインユ両者の父でもある。特にこの最後の観念は、ボイスによれば、マギが、西漸してきたゾロアスター教に直面したとき、アヴェスターのヤスナ書30_3がこれら二つの原初の霊を「双生児」と述べていることを捉えて、これらに霊の上位にズルヴァン神を生みの親として、同時に宇宙万物の宿命を定める神として置くことで始まった。(大貫隆「ゾロアスター教とマニ教」)