アルカディアの聖王で、すべての「オオカミ人間たち」lycanthropesの祖。彼のトーテム像は、オオカミだった。かつてリュカーオーンは、アリストテレースが教えたリュケイオン(「オオカミ-神殿」)の学園で崇拝されていた[1]。リュカーオーンは、オオカミの姿になることができた古くからの神々、たとえばアポッロン・リュカイオスやゼウス・リュカイオスなどの、地上における化身だったと思われる。
Barbara G. Walker : The Woman's Encyclopedia of Myths and Secrets (Harper & Row, 1983)
リュカーオーンは、lukavnqrwpoV〔狼-人間〕の意味とされる(L&Sによる)。
一説では、アルカディア人の王リュカーオーンは敬虔で、神々が彼をしばしば訪れた。しかし彼の息子たちはこれらの客人が真に神かどうかを疑い、子供を殺して、その肉を混ぜて客人に供したところ、神々はこれを怒って、嵐を送り、息子たちを雷霆で撃って殺したという。
また一説には、リュカーオーンとその息子たちはあらゆる人間よりも高慢不敬であった。ゼウスが彼らの不敬をためすべく日傭労働者の姿で近づいた。彼らは彼を客人として招き、年長のマイナロスの議によって、土地の者の一人の男の子を殺し、その臓腑を犠牲にまぜて供した。ゼウスはこれを怒り、のちにトラぺズースTrapezusと呼ばれた土地で机(トラぺザtrapeza)を倒し、リュカーオーンとその息子たちを雷霆で撃った。しかし、一番年下のニュクティーモスだけは、ガイアがゼウスの右手をつかんで、その怒りを彼を撃つまえにしずめたので、助かった。このニュクティーモスが王となった時に、デウカリオーンの洪水が起ったが、ある者はこれはリュカーオーンの子供らの不敬がその原因であるという。また別の伝えではリュカーオーンはオオカミとなった。(『ギリシア・ローマ神話辞典』)