古代の中東一帯において、この語は月を意味した。しかし旧約聖書(『ダニエル書』第5章 25節)に出てくる場合には「数えられた」と訳されている。月は暦のもとであり、時を計るものだからである。ベルシャザル王は宴のおり、壁に書かれた MENE, MENE, TEKEL, UPHARSIN という不吉な銘文を見て怯えた。王に召された予言者ダニエルは、これを次のように解き明かした。
1)神があなたの治世を数えて、これをその終わりに至らせた。
2)あなたははかりで量られて、その量が足りないことが現れた。
3)あなたの国が分かたれて、メディアとペルシアの人々に与えられる。
壁に現れたもとの銘文は、おそらくヘブライの聖書記者の知らない言語で書かれていたのであろう。そしてダニエルの言葉は、王の執政期の終わりを告げる「破壊者」としての月女神が描かれた古い像をもとにして、銘文のおよその意味を述べたものと思われる。
Kingship.
Barbara G. Walker : The Woman's Encyclopedia of Myths and Secrets (Harper & Row, 1983)
バーバラ・ウォーカーの所説の正当性を判断する材料を持たぬが、Mene-、Mino-が「月」を意味するということは、大いに整合性を有するように思える。それは、例えば、メネラーオスMenelaosを「月の王」、ミーノータウロスMinotaurosを「月の牡牛」と解釈するような例においてである。