「月の生物」を意味し、クレータ島の王たちの添え名。彼らは生贄に供された雄牛神で、ミノタウロスMinotauros、すなわち「月の雄牛」として周期的に再生した[1]。クレータ島の祭儀は、おそらく王朝以前のエジプトにおいて、月に子を生ませた「 ハアービ〔アーピス Apis〕の雄牛王」たちに起源を持つと思われる。ミーノースは、紀元前2000年の初めに統治していたクレータ島の王朝の名でもあり、当時歴代の王たちはみな「月女神」と結婚していた[2]。「月女神」はまた「母神レア−・ディクテュンナ」でもあり、 パーシパエー(「輝ける者」)と呼ばれた「クレータの娘」でもあった。後の神話編纂者は、供犠としての パーシパエーと雄牛神との交わりを奇妙な倒錯とし、彼女の息子の雄牛の顔を持つミーノータウロスを化け物として、書き換えた。しかし、生贄の動物数頭と性交のしぐさを演じるのは、古代オリエントの女王たちの風習であった[3]。
Barbara G. Walker : The Woman's Encyclopedia of Myths and Secrets (Harper & Row, 1983)