「あがなわれし者」を意味し、ホメーロスの語るトロイの王で、ヘカベー(へカテー)の姿をとった月母神と結婚した。一説にはトロイの聖なる呪物であるパッラディオンは、男根の形をしたプリアモスの笏であるという。他の説では、パッラディオンは女性のシンボルであったという。おそらく聖なる結婚を表す男根と女陰の2つの部分を持ったものであったと思われる。
Barbara G. Walker : The Woman's Encyclopedia of Myths and Secrets (Harper & Row, 1983)
プリアモスには五十人の息子があったが、そのうちの十九人は嫡出だった。このことは、トロイアにおいては王の統治期間がクレータやアルカディアにおけるように、王と後継者によって分担される太陰月百カ月の周期ではなく、十九年のメトーン〔アテーナイの天文学者、前四三三年〕周期だったことを示唆している。プリアモス王の十二人の娘たちは、おそらく月々の守護者だったのであろう。(グレイヴズ、p.866)