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テュルソス(QuvrsoV)

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 ディオニューソスの杖で、先端に松かさ(strovbiloi)がついており、大地を肥沃にするこの神の力を表している。テュルソスは神自ら、サテュロスたち、マイナスたち、森の精たちsileniやディオニューソスの聖なるオルギアに加わるその他のものたちが持ち運んだ。ときにはテュルソスとブドウ酒杯(カンタロス)とが一緒に描かれることがあったが、王笏と宝珠(上に十字架をのせた金色の玉)の場合と同じく、男と女の結合を意味した[1]


[1]Larousse, 153.

Barbara G. Walker : The Woman's Encyclopedia of Myths and Secrets (Harper & Row, 1983)



ギリシア・宗教〕 テュルソスはディオニューソスとバッコス神の巫女たちの持ち物である。長い杖か槍または投げ槍の形をし先端にマツがついておりキヅタ、花々、ブドウの葉や房が巻きついている。

フランス・文学〕 フランツ・リストに捧げたボードレールの散文詩がその象徴性を明らかにしている。
 まず「テュルソスは代弁者として彼らが仕える神をたたえる際に祭司たち女祭司たちが手に持っている聖職のエンブレムである」。
 さらにこれらの茎、花々、葉、果物は絡み合って「祭司の杖のまわりで神秘的なファンダンゴ」を踊っているかのようだ。
 要するに「テュルソスとは我々の二重性の表象なのだ。力にあふれたうやうやしい巨匠よ、霊妙で奔放な《美》に仕える《バッコスの信徒》よ……。杖とはまさしくたじろがず揺るぎない御身の意志のことだ。花々とは御身の意志のまわりを回る御身の幻想の散歩だ。それは男のまわりで魅惑的な旋回をしてみせる女性的要素だ。直線と唐草模様、意図と表現、一徹な意志、蛇行する言葉、単一の目標と多様な手段。天与のもの、万能で分割不可能なアマルガム、一体いかなる分析家が御身を分割し、切り離そうなどという忌まわしい勇気を持てようか」。
 大きさを別とすればテュルソスとはその深いバッカス性を自覚したすべての人間にとって多様な内的存在のシンボルではなかろうか。
 (〔世界シンボル大事典〕)