これもまた私たちがやりました多摩ニュータウンですが、 こういった形で町の中と外の景色をある空間秩序として継承していくということによって、 町が場所性を取り戻していくということに繋がっていけるのではないかというように思います。
これはカトマンズ盆地の中のパタンという町です。
ダーバー・スクエアという町の中心部で、 正面にカトマンズ盆地をとりまいている山が見えております。
今ちょうど雲で隠れておりますが、 天気が良ければそこにヒマラヤのランタンリルンという山が見えてくるはずです。
こうゆう形で山が見えてくるという状態を継承していくことで、 世代を通じて、 住んでいる人や外から来る人にも共通して持てる風景を、 町に提供することができるのではないかと考えております。
そういった上ものにとらわれない、 上もののあり方に左右されない基盤としての風景というものを、 「共有の資産」として、 町にどうやって残していくか、 あるいは伝えていくかが大切になっていくのではないかと思います。
これはアテネのエオルー通りという通りです。
この通りはアクロポリスの丘に向かって一直線に伸びる通りです。
その正面にパルテノンが見え続けるという道であります。
こうゆう地形あるいは文化財と密接に関係を持った風景を持続していくことが、 町のデザインの連続性を持ち続けていくために非常に重要なキーになってくるのではないかと思われます。
まわりの建物は時代とともに新陳代謝していきます。
例えばこの通りで見ても、 まわりの建物は新しいものもあればかなり古いものもあるわけです。
おそらくそのように新陳代謝していっても正面にアクロポリスが見えてくる、 パルテノンが見えているという風景が持続していく限りは、 エオルー通りとしての風景は継承されていくというふうに見ることができるのではないかと思います。
15 そういった意味でも、 京都というところは非常に恵まれた空間資質を持っているわけです。
こういった空間秩序を町の中に継承するということが、 たいへん大事なことではないかと思います。
ここでもまわりに見えている建物は新しくなって来ていますけれども、 この川とか山とかの見え方というものを共有できるテキストとして位置づけて強化していく、 こういったことが大事ではないかと思います。
これはギリシャのミコノス島です。
このように町の中から海が見え続けていくということも大切なことではないかと思います。
やはり町と海の関係をダイレクトに町の中に引き込んでくるような風景を創っています。
そういったものを町の共有財産として考えていくということが大事ではないかと思います。
18 これは香港でありますが、 香港もこのように10年前20年前あるいは50年前とはまったく違った形の新しい建物がどんどん建っています。
この山と海とその斜面に林立する建物というシナリオで考えると、 上ものはどんどん変わっていっても香港らしさというものは続いていくのではないかというふうに思われます。
19 そうゆう視点で見ますと、 神戸は海と山がある非常に恵まれた資質を持っているわけです。
私たちが神戸に行ってびっくりする事柄の中に、 デパートの中の方向が「海側」と「山側」で標示されていることがあります。
これは東京あたりから来た人間にとって非常に新鮮です。
やはり神戸の空間秩序を考えていくと、 海側山側という大きな空間秩序を町づくりの中にどう生かしていくか、 継承していくかということが、 キーポイントになってくるのではないかと思います。