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♪2004.11.22 小雪号 vol.52/♪2004.12.7 大雪号 vol.53/♪2004.12.21 冬至号 vol.54/
♪2005.1.5 小寒号 vol.55
/ ♪2005.1.20 大寒号 vol.56/vol.57〜vol.64

♪2004.11.7 立冬号 vol.51
こんにちは、エステイト 信の井上です。風通信・立冬号をお届けします。
秋も酣。晩秋です。11月は「お茶の正月」といわれ、「炉開き」や「口切のお茶事」が行われます(本来は陰暦10月の亥の日に行われる)。
5月に摘まれた抹茶の原葉・碾茶は茶壷に密封して夏を越しています。茶壷の中で熟成された新茶は、この季節にやっと封を切って賞味されます。お茶をする人であれば口切茶事にお招きいただけることは茶人冥利に尽きることのようです。
この、「炉開き」や「口切茶事」のお菓子といえば、「亥の子(いのこ)餅」。本来はお茶に関係なく猪の多産にあやかって、亥の月の亥の日の亥の刻に食べて、みんなの健康や子孫繁栄を願ったとか。
現在では、11月の茶菓子としてお菓子屋さんの店頭に並んでいますが、もともとは、大豆・小豆・ささげ・胡麻・栗・柿・糖の七種の粉で作られました。日本では平安時代より「玄猪(げんちょ)の式」という宮中の儀式として陛下は亥方に向かってつくつく(搗臼)の作法をされ、「神無月しぐれの雨のふるごとに我をもうかなえつくつく」と、三度唱えられるそうです。また、最初の亥の日には菊、中の亥の日には楓、三度目には銀杏が添えられました。江戸時代には「亥の子餅遊び」といって「亥の子といえば餅をつく〜」と戸外で唄いながら遊ぶほど、たいそう子どもたちにも親しまれていたようです。抹茶ひとつをとっても現在では茶壷に詰めて夏越しをせずとも冷蔵倉庫での保管や窒素ガスを利用した酸化防止で新鮮な原葉が入手出来ますが、なにやら味気ない思いがしませんか?そういえば、利休は、「お茶の正月」をどのようにして決めるかと問われたとき、「柚(ゆず)の色づくを見て囲炉裏(炉)を開けるように」と言うているそうです。
便利になった世の中もそれはそれで有難い面も否定できないのですが、たまには自然の移ろいや月の満ち欠け(陰暦)に身をゆだねてみるのも悪くないと思います。
ちなみに今年の陰暦10月の最初の亥の日は11月16日(火)。亥の刻は夜9時から11時まで。亥の子餅、いかがですか?
   緞子織る機(はた)を休みて亥の子かな   虚子

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◆ 町家で暮らすということは・・・   「スローライフ」に「自然と共棲」、そして・・・
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「自然と共棲」と一口に申しますが、今の世の中、そう簡単なことではありません。夏の猛暑と台風のせいで今年は山の実りが少なく、各地で熊が出没しているようですね。熊の立場から言うと、生きていくためにはそれもやむをえないことなのかもしれませんが、実際のところ自分や家族が遭遇したら…と、思うと心底、怖いですね。でも考えてみれば、これは人間が宅地や工業地のために野(里)山を乱開発したことが原因と言えましょう。むべないことと言えばむべないこと。
「スローライフの実現のために・・・云々」とか「町家に住むことはスローライフの実践である」かのように言われたり、「スローライフ」ということばがちょっとした流行のように使われたりもしておりますが(個人的にはこのことば、嫌いです)、町家に住むこと、即スローライフの実践でも何でもありません。町家は、商売人や職人にとっては、むしろ、「闘いの現場」であると言えるかもしれません。ニーズを掬いあげて世の中に受け容れられるものを売り(作り)商売(仕事)を継続していくことは、そうそう生易しいことではないからです。実のところ、「ゆるゆるスローライフを楽しもう!」などと悠長にしてはおられないというのが当事者としての本音です。
町家に転居されたうちのお客さまなんかとお話しすることが多々あるのですが、皆さん、口を揃えて「生活がシンプルになった」「前ほどいろんな物が欲しくならなくなった」と、おっしゃいます。そういうものなのかもしれませんね。わたし自身は生まれた時から町家暮らしなのでとりたてて何も思わないのですが、想像に難(かた)くないです。「身をやつす」とか「人を羨む」とか、どうでもいい、些抹なことに思えてくるのだと思います。日々の生活の中で、飾り立てる無意味さに気づき出すのかもしれません。言い換えると、いろんなものが削ぎ落とされて「素(す)になった、ナチュラルになった」ということではないでしょうか。
うちの息子(5歳)なんかも、保育園に行くときにはキャラクターもののTシャツなんぞを着たがりますが、寝るときにはくパンツは決まって染色されていないオーガニックコットンのものです。快適なものは何か、よく知っているんですね。頭でそう思うというよりも、皮膚が主張するようです。
人間は、本質的には非常に自然な生き物なんだと思います。体裁とかよそ目とかを気にしないようになれば、人はもっと自然に「自然と共棲」し、「より人間らしい生活」ができるのではないでしょうか? そのことに気づくのに、「町家で暮らす」ことはほんの少し近道なのかもしれません。いろんな虚飾を捨て去れば、「本質」が見えてくると同時に、「心の平安」が手に入れられるのでは…などと考えたりもします。さらには、「居住まいを正す心地よさ」をも得られるのではないかと思います。
今の日本人は、ことさらに「スローライフという旗をかかげてそれを目標」としたり、「スローライフの実践」のためにあれこれがんばるよりも、もっと「自然に暮らす」ことを考えるべきなのかもしれません。

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◆ 京ことば*ノート p.19 「移動」に関することば
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今回は、「移動」に関することばです。音便関係が多いです。
例1)いごく→動く     例2)いのく→少し移動する     例3)いのかす→移動させる     例4)のく→どく
例5)どく→立ち去る     例6)かく→持ち上げて運ぶ
〔参考〕例5)おっちんする→坐る(幼児語)     例6)じっとぉしとく→じっとしておく・動かない

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◆編集後記
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立冬号、いかがでしたでしょうか。心が痛むニュウスが多い毎日です。先日、仁和学区(仁和福祉団体協議会)の方から献血のお願いのちらしが廻ってきました。地震の被災地では、かなり血液が不足しているようです。現地にボランティアにいかなくてもできる貢献もあります。健康体のみなさん、ぜひとも献血にお出掛けください!
日本赤十字社などが新潟県中越地震の義援金受付を開始しております。ご協力いただける方、よろしゅうに。
◆日本赤十字社のホームページhttp://www.jrc.or.jp/
◆赤い羽根共同募金 新潟県中越地震災害義援金http://www.akaihane.or.jp/saigai/


2004.11.22 小雪号 vol.52
こんにちは、エステイト 信の井上です。風通信・小雪号をお届けします。
台風・地震と例年にない被害が続いていますが、読者の皆さま、被災された方はおられませんか?
台風23号の被害に遭われた、近畿地方のある避難所でのこと…家が浸水して、その地区の住民が小学校に避難されたのだそうです。着のみ着のままという方も多く、市役所の職員が配った毛布にくるまり、夜を明かしたとか…。で、その時、毛布とともに配られたものは何だったと思われますか?・・・プライバシーを考慮して「ついたて」だったそうです。そう言えば、阪神・淡路大震災の折、避難所で各家族毎についたてで囲って休んでおられたテレビ映像が記憶にあります。しかし、今回、そこの避難所では配られたついたて、誰も使用することはなかったとか。翌日もそのままで、とうとう三日目に市の職員が一方的についたてを配置してしまったのだそうです。
避難住民の一人が話されたこと。
「こんなついたて、殺生やわ。隣の子どもの顔が見られへん」。阪神淡路大震災の時のように都市での災害であったならば、住民の心の平安のためにも「プライバシーを護るついたて」は有効かもしれませんが、日頃からご近所づきあいが密でコミュニティがしっかり機能している地域においては、果たしてどうなんだろう…と思ってしまいました。さて京都やったらどないなるんやろか…?

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◆ 今回の地震や台風水害に学んだこと     
合板を使(つこ)た家で水害が起こると…
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この度の災害、台風と地震とが続けて起こったがために被災の度合いが増しているところもあるようです。心よりお見舞い申し上げるばかりです。
1995年に起きた阪神・淡路大震災から来年1月で10年となりますが、今回の地震(新潟県中越地震)と比べてみると、阪神・淡路では、主として家屋の倒壊が圧死や火災などの大きな被害を引き起こしました。今回は、家屋被害は少なく(注*1)、山間部で起きた「地滑り」が被害の主要因となりました。今回、小千谷市では震度7の揺れが観測されました。震度7クラスの地震では建物の30%は全半壊の被害を受けると言われています。ところが今回の全半壊率は約0.4%でした。阪神大震災の時、神戸市長田区は32.8%で、昨年7月の宮城県北部地震の6.0%と比べても桁違いに低いことがわかります。
震度7や6強という強い地震が何度も起きながら、住宅の倒壊被害はかなり低い数字となりました。専門家らは、豪雪に備えた住宅構造(豪雪地帯であるがゆえの軽い屋根、太い梁と柱…柱や梁の断面積が雪国でない地域の2倍近くあったそうです、高い床…雪下ろしで埋もれないよう、高さ2m近い基礎)が地震の揺れに耐えた可能性を指摘しておられるとか。町家がたくさん倒半壊したTV映像も流れましたが、これは、新潟は雪が深い地域であるがゆえに自動車を家の中にしまおうと表の部屋、つまり、京町家で言えば「ミセの間」部分を車庫に改装したお家が多く(かまちや敷居などを取り払ってしまっています)、そんな家は屋根や二階の加重に耐え切れず悲しい結果を招いたようです。
阪神大震災の倒壊原因の代表的なものに、耐力壁(注*2)の不足が挙げられるのだそうですが、今回の台風による水害ではこの耐力壁に使われているのが合板であるがゆえに現在、いろいろな問題を引き起こしています。合板は木の薄いスライスを接着剤で固めてあるもので、つまりは接着剤の塊。これはいったん水に浸かると接着剤はフカフカになり、木部はべろべろになってもとには戻りません。当然、強度はゼロというてよいでしょう。現在よくあるパネル工法の家でも、パネルが合板でできているので同じことです。また、パネル工法は全体で強度バランスを保つ特殊工法なので、家の修理というてもかなり大掛かりになり、そう簡単にはいかないようです。在来工法であっても、フローリングの床は水分を含んで接着剤がはがれることも多々あります。家の内外壁部に合板を貼ってあれば、水に浸ってべろべろ状態。
壁の内部に断熱材を使用していると乾きにくく、断熱効果も薄れてしまいます。湿気は家の大敵です。カビが生えたりして不衛生であるばかりでなく家自体をも傷めやすく、断熱材を取り換える必要があります。断熱材は、合板でサンドイッチされたなかにグラスウール断熱材が詰められています。これがいったん浸水すると断熱材の水が抜けずに水布団状態になり、これを撤去しないかぎり水の御殿で暮らすことになってしまうというわけです。
町家であれば・・・浸水しても土壁は乾燥させるだけです。漆喰の汚れが気になれば上から塗り替えるだけ。もちろん無垢の柱や板は湿気が抜けて乾けば元通り。
また、地震の際も、基礎と柱が接着していないため免震構造であったり、梁と柱が伝統的軸組み工法であるがゆえに揺れを吸収することができるといわれています(もちろん、きちんとメンテナンスしてある町家であれば・・・ということですが)。たとえ倒壊したとしても、一気にぐしゃっとはいかずにゆるゆる傾くため、逃げ出す時間はあるはずです。昔の人は、「蔵は家財を守り、主屋は人を守る」と言うたとか。今回の災害にあたり、われわれ日本人は、「家」というものについてあらためて考えるよい機会だと思います。

注*1)新潟県中越地震では、家具の転倒や落下物によるけがが負傷者の4割以上を占め、家屋の倒壊によるけが(7%)を大きく上回ることが東京消防庁の調べで分かりました。
注*2)耐力壁というのは、筋交いや構造用合板で構成され、帯荷重強度や耐震強度を高めた壁のことで、地震・台風などに抵抗するとともに、長年の建物の変形にも抵抗するということです。建物の耐震性能を決めるのは、力壁の分量と配置という説もあります。


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◆ 「消防団員募集中!」
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京町家でお商売をしている自営の方、20〜40代のあなた、消防団に入りませんか? 募集中です!

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◆ 京ことば*ノート p.20 「サ行」が「ハ行」に・・・
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子音のサ行がハ行に変化することがあります(逆もあり*)。
例1)しちや(質屋)さん→ひちやさん     例2)布団をし(敷)く→布団をひく     例3)しない方がいいよ→しなさんなや→しなはんなや
例4)しちじょう(七条)へ行く→ひちじょう(または、ひっちょ)へ行く     例5)しつこい味だ→ひつこい味や
例6)ほんとうにそうやね→ほんに(または、ほんま)ほうやね     例7)ごみをす(捨)てる→ごもくをほかす
*逆パターン例8)そこのおひと(人)→そこのおしと

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◆編集後記
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小雪号、いかがでしたでしょうか。今回は小雪には少し早いのですが、内容を鑑みて少し早めに出すことにしました。ご了承くださいませ。
先日、工務店の社長さんが来られて、台風被害の後始末について「今の家はヌノ基礎やベタ基礎なので土台がコンクリートで固められ作ってあるから、床下から水を完全に抜くのが相当難しい。町家であれば、土の上に石を置いて柱がたっているだけなので、放っておいても自然に流れてしまうから水を抜くなんて考える必要もない。つくづく町家は日本向けの家だと思う」という話をされていました。ほんに、ほんまに・・・

♪2004.12.7 大雪号 vol.53
こんにちは、エステイト 信の井上です。風通信・大雪号をお届けします。
先日、<京町家・風の会*>の例会で、「ロクタ紙を貼ってみよう!」というミニワークショップをやりました。(注*)当店主宰町家愛好者の会町家を改修する際、土壁の状態が悪ければ「和紙を貼ることも方法の一つ」ですよと、いつもご紹介しているのですが、この秋、千本丸太町でオープンされた-男ものアンティークきもの「武乃家(たけのや)」-さんは、お家の壁の改修に際して、ご自分たちでロクタ紙を貼られました。今回の例会では、「武乃家(たけのや)」の東さん・滝井さんにロクタ紙はりの実演とお話をお願いし、その後、希望者にはロクタ紙貼りミニワークショップを体験していただきました。
ロクタ紙は、和紙(日本の紙)ではなくネパール紙です。正真正銘の和紙であれば、紙すきのときにトロロアオイやノリウツギなどの植物から採取される透明の粘液(トロロ)を混入するのですが、そうすると当然コスト的にはUPします。コストを抑えるための方法として、コウゾ・ミツマタ・ガンピなどに代表される原料植物をまとめる糊(トロロ)として化学物質が使われることもあるそうです。しかし、ロクタ紙はネパールという国情ゆえもあって、このトロロに関してもまったくの天然物が用いられています。シックハウスや化学物質過敏症、アレルギー疾患の家族をお持ちのみなさんもおられることと思います。お家の改修や改装の折、ちょっと考えてみてくださるきっかけになるとよいのですが…。
◆ 「武乃家(たけのや)」◆男ものをメインにしたアンティークきもの・こもの/そのまま着ていただける汚れの少ないきもの/お仕立て・リフォーム
◇住所:中京区聚楽廻中町27-29◇電話:075-811-6990

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◆ 町家はいつでも現役。経年変化を楽しみまひょ!   骨董趣味でチョイスするものではおへん…
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先日、ある町家大工さんと話す機会がありました。実は、その大工さんが改修された町家を二軒ほど仲介したことがあるのですが、どちらも借家とは思えない手の込んだ素晴らしい改修がなされており、いろいろ町家を見慣れているはずのわたしでさえ、びっくりしてしまったほどです。
家の傾きを直すため柱や土台はジャッキアップ。腐った柱は根継ぎをし、壁は全面塗りかえです。天井板ははずして作業場に持ち帰ってばらして洗いをかけ、傷んだ部分のみを取り替えてまた組み直されたのだそうです。どの作業にしても、新調するほうが手間も時間もかかりません(大工さんにしてみても、町家を改修するよりは新築する方がずっと楽なのだそうです)し、コスト的にも新建材などを使えばずっと廉価にあがります。ま、そこまで手を入れる(つまり、費用を出す)ことにされた家主さんもえらいと思うのですが…。
軒の垂木(たるき)にしても全部を取り替えるのではなく、悪いものだけを新しくし、かつ白木のままなのです。塗装したり、古色をつけたりはしておられません。70年前の垂木の隣には白木の垂木が並んでいます。使われた材木には、この家に10年住めば10年の経年変化があるはずです。30年住めば、きっとどれを取り替えてどこを直したのか、ぱっと見には分からなくなるはずです。
昨今の町家ブームや骨董趣味で町家を求めて来られる方は、白木の柱や床にわざわざ古色をつけたり、汚れてもいない壁に墨色を吹き付けたりしたがられます。町家=古色蒼然とした…というイメーヂが強すぎるのだと思います(ま、それと言うのも大方の責任は「町家ブーム」を作り出したマスメディアにあるのだと思いますが…)。ですから、洗いをかけた家なんて、もっての他という世界です。
本来、町家というのは毎年毎年手を入れながら維持していくものです。うちの家も築70年を越える町家ですが、何のかんの言いつつ毎年どこかしらなぶっています(今年は屋根の全面葺替えと和室に内障子を入れました)。
町家は骨董品ではありません。常に変化している現役なのです。そこに暮らす人とともに齢(よわい)を重ねて労り合い、経年変化を愛でるものではないでしょうか?
中でも京町家は、商売(作業)の場でもあります。家は、日々、苦楽をともにする相棒というてもよいかもしれません。そうなるともう、町家とか建物とかいう「ハコ」ではなく、人格(家格?)ある一個人のような気がして来ませんか?

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◆ 京ことば*ノート p.21 性格や性情を表すことば その1
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性格や性情を表すことばのうち、今回はあんまりよい意味では使わないものを集めてみました(ア・カ行)。
例1)あかんたれ:弱虫・意気地なし      例2)いけず:意地悪/いけずしー:意地悪をする人
例3)いちびり:調子に乗ってふざける人・お調子者   例4)いらち:せかせかした落ち着きのない人・やたら性急な人
例5)えげつない:あくどい・いやらしい・どぎつい…辛辣さを込めて使う   例6)えずくろしい:度を越している・くどくどしい
例7)がさい:粗野な・荒々しい・おおざっぱな   例8)けつあきざる:中途半端な者
例9)けったいな:おかしな・妙な・変な     例10)ごて:ごてごていう人(参考/ごてくさ:ぐずぐず並べ立てた不平不満)
例11)こんじょわる(根性悪):意地悪・意地悪な人…「いけず」より重い感じ

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◆編集後記
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大雪号、いかがでしたでしょうか。今年は大雪にならぬよう祈るばかりです。
前述のロクタ紙ですが、ご興味おありの方は下記サイトをご参照ください。〔参考-ロクタ紙について-〕
http://www.nbazaro.co.jp/catalogue/vol7/vol7.html   http://www.marinapaper.com/

〔参考-ロクタ紙施工例-〕http://www.linkclub.or.jp/~yonemura/file/materials+parts/rokuta.html
http://www.kkj.or.jp/house_check/symbiotic/03_22/p02.html

お求めは、フェアトレードのネパリ・バザーロで販売しておられる他、うちの二軒お隣の楽天堂さんでも取り扱っておられます。

♪2004.12.21 冬至号 vol.54
こんにちは、エステイト 信の井上です。風通信・冬至号をお届けします。今回が今年最後の風通信です。今年もご愛読いただき、深謝申し上げます。
来年の抱負は…と申しましても、今までと同じように、真の意味での「町家暮らしをする京都人」を一人でもたくさん増やすことに精進、日々を重ねることに他ならないのですが、業務的にはいくつか考えていることがあります。それぞれにつきましては、また、年が改まってからお話しすることにいたします。もったいぶっているわけではないですが…(笑)。
町家の仲介という仕事をしていて、このごろつくづく思うのは、今こそ次代へきちんと京都の有形無形の文化を継承していかんとあかんなぁ…ということです。もちろん、京町家もその中の重要な一つであることには違いないのですが…。ある意味、形のあるものは保存したり再生したりしやすいです(自然物を除く)。ですが、形のないもの、つまり、技術(職人技)やしきたり・慣習、ことばなんかは意識して繋(つな)いでいかねばならないものの類だと思います。
普段、何気なしに目にしたり耳にしていることでも、京都ならでは、京都で始まった…ことが何と多いことでしょう。
わたしも妻も40代なのですが、京都が京都らしくあったころを知っている最後の世代かもしれません。それらをよい形・状態で次代へ継承していくことは、われわれにとって重要な責務のような気がしてなりません。

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◆  「町衆の情熱をもう一度、今の時代に復活させるのが学校運営協議会」
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京都市教育委員会は、先月4日、学校運営に地域住民や保護者の意見を取り入れる「学校運営協議会」制度を御所南小・高倉小・京都御池中学の3校に導入すると発表した。教職員の人事や学校予算の使い方にも住民の声を反映して「開かれた学校づくり」を進める狙いだとか。来年1月にも「地域運営学校」がスタートする運び。地域と学校の関係が希薄化する中、住民が積極的に学校づくりにかかわれる制度をつくろうと、6月に地方教育行政組織運営法が改正され、市町村教委が同協議会の設置校を指定できるようになった。同協議会を設置することで、児童や生徒の意見や市民の声を生かした特色ある学校づくりにつながるということである。京都市教委は「毎年数校ずつ指定校を増やし、信頼される学校づくりを進めていきたい」としている。京都には明治初期、町衆が資金と知恵を出し合って「番組小学校」をつくり上げた土壌があり、市教委は「町衆の情熱をもう一度、今の時代に復活させるのが学校運営協議会」と強調する。[11/5 京都新聞より要旨抜粋]

本来、京都・洛中では元学区にひとつの小(中)学校があり(注*1)、その設立の費用も労力も、さらには運営資金までも番組(学区)の住民が負担していたという経緯があります。この記事を目にしたとき、「なぁ〜んや、昔にもどるだけやないかいな…」と、思いました。平成に入り、昨今の子ども数の減少から小中学校の統合が進んだお蔭で、一学区に一つの学校という図式が崩れ、その学区では地域住民の関心が学校から離れてしまったことは事実です。
うちの仁和学区などは幸いなことに学校統合されずにおりますので、学区に小学校がひとつあります。明治の時代から変わりなくずっと、学区民と学校は密接な関係にあります。今でも、例えば「12月の学校行事」を一覧にしたプリントが回覧版を使って全家庭に廻ります。学校で何をしているか知っているのは、PTAだけではないのです。3、4年前に仁和小学校が建て替えになった時、学区の全家庭に寄附金の依頼がありました。仁和まつりや運動会、防災訓練は仁和小学校で行われますし、小学生の社会学習の一環として工場見学を受け入れてくださったりしています。そのお店の大将が卒業生なのですから、話は極めてスムーズに運びます。
でも、これが「わが町(学区)の学校」でなくなったらどうでしょうか? 自分の孫や子が通学している間は別としてそれ以降は関心がなくなってしまうのは、当然といえば当然のことなのかもしれません。学校統合をしたということは、京都洛中にはせっかく「番組小学校」というシステマティックな制度があり評価もされていたのに(注*2)、お上(行政)は画一的に文部省の基準なんぞを遵守しようとしたのでしょうか?京都洛中の特異性を無視した全く愚かな行為だったと言わざるを得ません。

海外でもコミュニティスクールの価値が見直されているとか…。京都洛中の場合、地域と学校が完全にリンクしているわけですから、当にコミュニティスクールです。「学校運営協議会」制度は今後の教育の流れといいます。昨今、巷で話題の学校崩壊だとか防災防犯の面に於いても学校と地域が密な関係であることは非常に有効なはずです。
ただ、問題は、公務員である教師がどれほどこの「学校運営協議会」制度を受け入れ、機能させていく上で関わっていくかだと思います。学区の人間が学校運営に今よりも更に積極的に関わることで得られるメリットは少なくないとは思うのですが、校長を始めとする教師連が京都・洛中の人でなければいろいろ行き違い等が起こるのではないかとも思います。それに、元々京都は共産知事が7期28年間も続き、京教組が大きな勢力を有している府(県)だけに、一筋縄ではいかないかも…と思ったりもします。ま、いずれにしても、これからの学校の変貌が楽しみなことには変わりないのですが…。

注*1)京都の小学校:国の学校制度創設(明治5年)に先立ち、明治2年に創設された64の番組小学校。現在、これらの小学校のうち多くは統廃合されましたが、22校は残っています。教育機関としての機能だけでなく、役所・警察・消防・保健所等の機能も併せ持っていたということです。現在でも、番組小学校の学区は元学区と呼ばれ、自治会組織の単位となっています。
注*2)うちのまぐまぐ風通信の2004年9月7日発行の白露号(vol.47)で、佐賀県教育センター「所報-ミネルバ通信」平成13年9月21日号の中の巻頭言で「時代はひとりでにくるものではない」と題する、松尾雅則氏(佐賀県教育センター副所長)が京都の小学校について述べておられる文章載せました。参照

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◆ 「消防団員募集中!」
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京町家でお商売をしている自営の方、20〜40代のあなた、消防団に入りませんか? 募集中です!

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◆ 京ことば*ノート p.22 性格や性情を表すことば その2
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性格や性情を表すことばのうち、今回はあんまりよい意味では使わないものを集めてみました(サ行)。
例1)ざんない:くだらない・だらしない     例2)しかつい:大人らしい・しっかりした
例3)しぶ・しぶちん:けち・けちな人     例4)しぶうこぶう:しぶって・けちって
例5)しみたれ:けちな・粗末な・粗相な     例6)じゃらつく:だらしなくする
例7)じゅんさいな:つかみどころがない・いい加減な     例8)しょうもない:どうしようもない・くだらない
例9)しんきくさい:面倒くさい・じれったい     例10)すかんたこ(好かん蛸):いけ好かない・嫌い
例11)すけんど:愛想がない・情がない。またはその人     例12)すこい(=こすい):ずるい
例13)せわしない:落ち着きのない


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◆編集後記
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冬至号、いかがでしたでしょうか。この一年を振り返ると、ほんとうにあれやこれやいろんなことが多かった年という印象です。地震も水害も天災なので仕方ない・・・と言いつつも、重なったがゆえに被害が拡大したりもしました。なんとかなぁ・・・と、思うと同時に、足許をかためていかんとあかんと痛感しています。「木を見て森を見ず」ということばがありますが、わたくしどもは、あえて「木を見て」いこう…と、思っています。
来る年はよき年でありますように。平和でありますように。どうぞ、今後ともよろしゅうお付き合いください。お願いいたします。

♪2005.1.5 小寒号 vol.55
あけましておめでとうございます。エステイト 信の井上です。風通信・小寒号をお届けします。
「足許をかためていかんとあかんと痛感しています。『木を見て森を見ず』ということばがありますが、わたくしどもは、あえて『木を見て』いこう…と、思っています…」と、先号の編集後記に書きました。日本のみならず、世界のどこに目をむけても穏やかでない日々が続いています。戦争にしても自然破壊にしても、いろいろ思うことはあるのですが、こんなときだからこそ、なおのことしっかりと足許を見ながら着実に日々を紡いでいきたいと思っております。

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◆ 「町家を保存すること」よりも肝腎なこと   …町家仲介を通して京都に奉仕できること
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「『町家保存運動』をもっと推進しよう」と誘ってくださる方があります。町家専門の不動産屋をしているわけですし、京町家再生研究会の下部組織の京町家情報センターの設立メンバーであり幹事でもあります。京都市景観まちづくりセンターの町家再生セミナー講師にもちょくちょくお呼びがかかります。「町家保存運動」・・・本来ならば、率先垂範すべき立場なのかもしれません。
しかし、ちょっと違うんです。・・・?
わたくし共は、「京都を明治村にしたい」わけではないのです。ですから、「町家」という「ハコ」の「保存」を目指しても仕方ないと思うのです。その町家を活かせる人が住人になって始めて「町家の再生」だと思うのです。町家の役割という意味で言うと、京町家は、他地域の町家とちょっと違います。基本的に京町家は職住一致のための建物です。仕舞屋ではありません。「町家ブーム」とやらで、東の方から大きな資本が入って来て、高い賃料を払い大幅な改装をかけた町家があります。まるでビルのテナント感覚です。お商売のやり方も人間関係の構築も大企業のそれを踏襲して、京都人から嫌悪感を示されているお店があることも事実です。東方の大企業のやり方でのごり押し、これが商売の鉄則といわんばかりの利益優先型…。京都には京都のやり方があることを感じる暇(いとま)はないのでしょうか?でも、そんな輩は、ブームが去れば尻をまくって引き上げるに違いありません。そのことがわかりつつ、みすみす我々は手をこまねいて見ていなければならないのでしょうか?
「町家を保存・再生すること」が重要でない訳がありません。そんなことは百も承知です。しかし、それにもまして肝腎なことは、「京都の伝統・文化を次代に継承する」ことだと思うのです。そして、それを抱くように包み込むのが京町家ではないかと…。「来(こ)し日々の在り様(ありよう)」を我が胸に問う時、返ってくるのは格子の美しさや火袋の清々しさでは決してなく、仕事をする祖父の邪魔をして叱られた、あの日のことだったり、店の間にうず高く積まれた商品の山だったりします。
職住一致、ここから生まれるあれこれは、何にも換えがたい珠玉の賜だと思います。これこそ「生活文化」というものではないでしょうか。
もちろん、わたくし共は不動産業者ですから、契約成立に伴い仲介手数料をいただいております。京町家の存続のためにボランティア活動をしているのではありません。しかし、職業奉仕と申しますか、自分の仕事を通してできること、仕事を通してだからこそできることもあると思うのです。町家物件の仲介を生業とすることで何かしら京都に貢献したい。京都をよくしたい…そのために、有形無形、精進努力して行きたいと心しております。本年も、風通信共々どうぞよろしゅうお願い致します。

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◆ 「消防団員募集中!」
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京町家でお商売をしている自営の方、20〜40代のあなた、消防団に入りませんか? 募集中です!

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◆ 京ことば*ノート p.23 性格や性情を表すことば その3
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性格や性情を表すことばのうち(例外もあり)、今回は(どちらかというと)よい意味で使うものを集めてみました(ア・カ行)。
例1)あたたこ:あたたかく   例2)あんじょう:うまいぐわいに・上手に・丁寧に
例3)あんばよう(塩梅よく):うまく…「あんじょう」と同じ   例4)いっぱいこ:たくさん…「ぎょうさん」と同じ
例5)うつやか:美しくしとやか   例6)うるさ:いろんなことに文句を言わずにおられない人
例7)うんとこさ:潤沢に   例8)ええもん:おやつ…子どもが使う。「けんずい」と同じ。
例9)えーし:よい衆・分限者   例10)えて:得意。得意なもの
例11)おことおさん:「お忙しいことですね」の意。商家を訪ねる際の挨拶
例12)おっとり:ゆっくりとして余裕があるさま   例13)おぼこい:幼稚な   例14)おむしやしない(虫養い):軽食
例15)かいらし:かわいらしい   例16)かなるい:簡単な・容易な   例17)かんかちこ:非常に堅牢な
例18)ぎょうさん:たくさん…「たんと」と同じ   例19)こうと:地味で上品な
例20)ごきんとはんに:「ご丁寧に」の意   例21)ころっと:すっかり・まるで


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◆編集後記
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小寒号、いかがでしたでしょうか。なんだかとりとめもなく書き綴っている風通信ですが、55号分並べてみると結構なボリュウムで、これはこれで一財産やなぁ…と、思います。書いているときは月2回というペースに追われがちなのですが、あらためて読み返してみると、まだまだ書きたいことが浮かんできます。どうぞ、今後ともよろしゅうお付き合いくださいますよう、お願いいたします。
ところで、私の短歌ですが、昨年一年間は「二十四節気を詠む」ということでお付き合いいただきましたが、今号からは「京都大路小路」ということで詠んでいきたいと思います。こちらもよろしゅうに!


♪2005.1.20 大寒号 vol.56
こんにちは、エステイト 信の井上です。風通信・大寒号をお届けします。年始は、比較的出足がゆっくりしている不動産業界ですが、大寒を過ぎるころからぼちぼち動き始めます。一般的な不動産屋さんは、一年の中でも2・3月はかき入れ時です。これは、転勤族の転入出や学生さんの 卒入学の仲介があるせいですが、当店はあまり関係ないと言えば関係なく・・・。
ところが、材木商の方にとってこの時期はとても忙しい時期であるそうです。一月は木の切り旬で、木の市が目白押しだとか。冬時期の、木がもっとも活動しないこの時期に切ってあげるのが、木にとって一番負担が少ないのだろうと思います。天然の物を相手にしている以上、何につけても無理はいけません。家を建てるのにも暦と相談しながら決めた昔日を、わたしたちはただ懐かしむのではなく、その意義をもう一度検証してみる必要があるのかもしれません。

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◆   『イタリア人の働き方―国民全体が社長の国』   …サラリーマンがいない国
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先日、妻と小学校時代の話をしていたらクラスメイトの家業の話になりました。彼女曰く「40人のクラスで、農家と漁師が二人ずつ、サラリーマンがひとりかふたりで、大工さんか左官屋さんがひとり、あと機屋(はたや)さん…」。 わたしの場合は? …思い出してみると同じような割合であったように思います。たとえサラリーマンであっても、勤務先は機屋さんだったり整経屋さんだったり、何かしら西陣織に関わる仕事でした。
内田洋子&シルヴィオ・ピエールサンティ著光文社新書『イタリア人の働き方―国民全体が社長の国』を読みました。起業家15例を挙げて、それぞれについて取材をもとに細やかな記述がなされています。もちろん内容はバラエティに富んでいてとても面白く、ただ読み流すだけでもかなり楽しめます。オススメ◎です。それはそれとして、今回注目したいのはイタリアという国についてです。経済という視点でみてみると、イタリアは決して優等生ではありません。むしろその逆に近い存在であると言ってもいいでしょう。しかし、ここでちょっと考えてみていただきたいのですが、イタリアは、人口5700万人の国で法人登録が2000万社とか。単純に頭割りしても3人弱に1つの企業が存在することになります。この5700万人の中には子どもも病人も含まれているわけですから、純粋に労働人口ということで考えれば、1人あたり会社1つ。この数字は世界一です。また、法人登録していない、個人事業主の例えば職人さんなどを勘定に入れると、数字的にはサラリーマンや役人が存在しない国となってしまいます(それはそれで楽しいと思うのですが…)! もちろんイタリアにもフェラーリとかベネトンとか有名企業はたくさんありますので、サラリーマンがいないわけはないのですが…。でも他の国に比べて、サラリーマン率が圧倒的に低いのは疑う余地がありません。
著者はあとがきの中で次のように述べています。侵略される歴史を繰り返してきたイタリア半島に住む彼らは、「守るべきものは、領土ではない。そこで生きる自分たちの暮らしの質だ」と冷静に判断し、現実主義へと進んだ。「自分の幸せは自らの力で、手で守り抜くしかない」という確信を持っている。結果、国家としてまとまって行うようなことはには、イタリアはからきし「後進国」のままだが、個人がその独創性を発揮するよう
な分野では、後続を大きく引き離す、抜群の能力と自由なフットワークを誇るようになっている。
これは何故だと思われますか? 著者が述べているように「自分の幸せは自らの力で、手で守り抜くしかない」ということに補足してイタリアの都市は自治の町であるということにも注目していただきたいと思います。お上(かみ)の庇護をあてにせず、自分らのことは自分らで。一番大切な守るべきものは自分の家族であり弟子である…。
まるで、どこかの町の住人と同じではありませんか?――そう、我等が京都洛中です。京都は侵略された歴史はありませんが、度々戦場となりました。その度に権力者が代わり、住民は自分の屋台を守るためにかなりの努力が必要でした。自分の暮らしは自分で守る…これは京都人のDNAに刻み込まれた生きていく上での人生の鉄則でもあります。京都洛中は個人事業者で成り立っている町でした。現在もベンチャー企業が元気のよい町です。イタリアではどうなのか不勉強でちょっとわからないのですが、京都洛中では職住一致生活を営んでいるのが普通でした。
京都の室町でいわゆる糸へん業界(繊維業界)が衰退した根本的な原因は、職住一致をやめたからだとわたしは考えています。その結果、京都商法の堅実経営の精神が受け継がれず、本業以外の投資や不動産、飲食業などに手を出したことによって室町の崩壊が始まったといえるのではないでしょうか。職住一致って、やっぱり何よりも京都を象徴するキーワードなんだと思います。

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◆ 「消防団員募集中!」
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京町家でお商売をしている自営の方、20〜40代のあなた、消防団に入りませんか? 募集中です!

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◆ 京ことば*ノート p.24 性格や性情を表すことば その4
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性格や性情を表すことばのうち(例外もあり)、今回は(どちらかというと)よい意味で使うものを集めてみました(サ行)。

例1)さぶ:寒い   例2)さぶしい:寂しい  例3)さらえる:何も残さぬように片付ける
例4)ざんぐり:柔らかくふくよかな・自然で風情ある・垢抜けていて、しかも自然・なにげなくすっと
例5)〜しい:○○する人  例6)しがむ:いつまでも口にいれてしゃぶる
例7)しんといて:〜しないでくださいね  例8)しんなり:しなやかな様子・たおやかな様子
例9)しんぼ:辛抱  例10)じんわり:じわじわと・少しずつ  例11)すんずり:涼しくて清々しい様子
例12)すんなり:細身でスマート  例13)せいだい:精を出して・十分に  例14)せきもん:急ぎの仕事
例15)せつろしい:とても忙しい・気ぜわしい  例16)そおろと:ゆっくりそおっと・注意深く

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◆編集後記
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大寒号、いかがでしたでしょうか。昭和40年代後半から50年代にかけて、繊維業界の羽振りがとてもよかったころ、職住分離が進みました。室町のお店(会社)はビルに建て直し、店主(社長)一家ははやりのように下鴨や北区小山に数奇屋風の大邸宅を建てて越していきました。お蔭で職住一致の暮らしは崩れ、町家が犠牲になっていきました。当時、もう少し町家の価値が認識されていたら…と、思わずにはいられません。今更、いまさら、なんですが。