━━エステイト 信の風通信 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆◇◆ 京町家、扱こうてます! ◆◇◆ ━京町家専門の不動産屋エステイト信の風通信メイルマガジン━゜・.★。・゜・*。:☆.*:・゜ Copyright(c) 2002, Estate-Shin。☆*゜・゜★・。・゜★。・* ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ vol.1〜vol.10/vol.11〜vol.22/vol.23〜vol.32/♪2004.1.6 小寒 Vol.33/♪2004.1.21 大寒 Vol.34/ ♪2004.2.4 立春 Vol.35/♪2004.2.19 雨水 Vol.36/♪2004.3.5 啓蟄 Vol.37/♪2004.3.20 春分 Vol.38/ ♪2004.4.4 清明 Vol.39 /♪2004.4.20 穀雨 Vol.40 /♪2004.5.5 立夏 Vol.41 /vol.42〜vol.50/vol.51〜vol.56/vol.57〜vol.64 ♪2004.1.6 小寒 Vol.33 あけましておめでとうございます。エステイト 信の井上です。風通信・小寒号をお届けします。 2004年・平成16年の初頭にあたりまして、今年も変わらぬご愛顧をお願い申し上げますと共に、みなさまのますますのご健康とご発展をお祈り申し上げます。 わたくしどもエステイト 信は、家族でやっている京町家専門の小さな不動産屋です。会社組織ではなく、まったくの個人商店ですので、「店としての方針(考え)」と「個人の意見」は、大方の部分でリンクしています。と、申しましても、やはり、企業ですから、微妙なところでの差異が全くないといえばウソになりますが…。 わたしは、昭和32年の生まれで、現在46歳です。妻は、昭和39年生まれ。多分、京都のよき時代を知っている最後の世代ではないかと思います。本年は、もう少し「京町家暮らし」について、思い出も含めて細かいことを書いていこうかな…と、考えております。本年もどうぞよろしゅうお頼み申し上げます。 ◇・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ◆ 町家の仲介のとき、いっつも考えていること 京町家に暮らす人を増やせば、町家は残っていくはず… ◇・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 年頭にあたりまして…ちょっと改まりまして、当店の基本方針と申しますか、コンセプトをちょっと書いてみたいと思います。 うち(当店&わたくしども)は、いわゆる「ハコ」としての京町家の保存には興味がありません。京都・洛中を明治村にしたいと考えているわけではありません。旧いものが好きで好きでたまらない、というような骨董趣味もありません。むしろ、旧い家という建造物を残すだけなら、どれほどの意味があるのだろう…と考えています。また、京町家の意匠についても、美しいからとか恰好いいからどうこうという議論は無意味と思っています。 うちが目指しているのは、京町家に暮らす人を増やすこと、それも、ただ住まう人でなく、職住一致でお商売や作業をしながら生活を共にする人。更には、職人さん、伝統産業(工芸)の後継者を増やしたい…そうすることによって、自然と京町家も正しい形で再生され、残っていくはずです(もちろん、うちでは、そういう方々を優先的に仲介しております)。 意匠や構造、部材についても、それが使われてこそなんぼのもん、「用の美」と考えています。 「町並の保全」ということに関しても、それを声高に叫ぶよりも町家の住人を増やすことで自然とその目的は達成されるはず。たとえ新築住宅であっても、本能学区のように、建築協定を設定することでそれなりに町並保全に繋がるはずです。 うちの仲介のやり方としては、賃貸にせよ売買にせよ、経済的にOKだから、とか、社会的な地位があるから…とかでなく、きちんと町家暮らしができる人…ご近所づきあいや学区のこと、お家のお守(もり)ができる人…ということをまず考えています。「物件」だけを求めてこられるお客さまには速やかにお引取り願っているのはこのためです。まぁ、これは、うちが会社組織などではなく、営業成績とは縁の薄い商売だからこそ叶うことかもしれませんが…。 更に、ご入居後のあれこれ(ご近所や学区とのつきあい方とか、京都の慣習、冠婚葬祭のことやら…)についても、うちらがここに永年居ればこそ…と申しますか、お役に立てることは多々あるはずと考えています。 よその大方の不動産屋さんのように、仲介後は「はいさようなら!」ではなく、お客さまとその後もずーーっとお付き合いいただいているのはありがたいことですし、願いでもあります。これも家族でやっていればこそ…!かもしれません。 京町家にご興味がおありになる方、どうぞ、<京町家・風の会>例会へお越しください。わたしたちをより深くご理解いただくこともそうですが、他の会員さんと交流していただくと、いろいろよいことがありますよ! みなさん、楽しんでくださっています。 <京町家・風の会>については、下記サイトをご参照ください。http://web.kyoto-inet.or.jp/people/est-shin/kyoumatiya06.htm ◇・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ◆ 「消防団員募集中!」 ◇・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 京町家でお商売をしている自営の方、20〜40代のあなた、消防団に入りませんか? 募集中です! ◇・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ◆ 京ことば*ノート p.1 ほっこり ◇・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 標準語だと、「暖かなさま、ほかほか」(広辞苑)だそうですが、京都で使われると、「疲れたけれど、ほっと安堵する」或いは「思わしくない」という意味で用います。だいたい、一仕事終えたときに使うことが多いです。このごろでは「ほっと一息つく」といった状態と取り違えて使われる方がおられます。「ホッとする」ということばと語感が似ているせいかもしれませんが…。 用例1)今日は朝はようから出かけて、やっと家に帰ってきてほっこりしたぇ。 用例2)なんや手術のあとがほっこりせんようやなぁ…。 ◇・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ◆編集後記 ◇・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 小寒号、いかがでしたでしょうか。本年もご愛読のほど、よろしゅうお願い致します。 昨号まで続けておりました「町家一口メモ」をいったんお仕舞ということにして、今度は、「京ことば*ノート」を始めることにしました。思いつくままに、「ほっこり」から始めようと思います。「あれっ、これどんな意味なんやろ…?」と思われる語などがありましたら、どうぞリクエストをお寄せください。お待ちしております。 ♪2004.1.21 大寒 Vol.34 寒中お見舞い申し上げます。エステイト 信の井上です。風通信・大寒号をお届けします。 一年で一番寒い時期です。町家は寒いものなのですが、空家の町家はことのほか寒いです。家具や建具がないせいもあるでしょうが、それ以上に「人が住んでいない家」というのは寒々しいものですね。 わたしも生まれてこの方、46年ほど町家で暮らしていますが、確かに冬の町家は寒いです。たまに知人のマンションなどを訪ねますと、暖かい…というより、「むぅ」っとした感じがして気分がすぐれなくなったりするくらいです。普段、風通しのよい(と、いうより隙間風の多い)家に居ると、空気が動かない家というのはちょっと不思議な存在にさえ思えてきます。高気密高断熱もはたしてよいことなのかどうなのか、ほんとうに人間の住まいとして適切なのか…、「?」の毎日です。 快適さというのは、人間にとってどれだけ重要なことなんでしょうか? 人それぞれに尺度は違うでしょうけれど、身体的な快適さを求めすぎると、精神活動が鈍くなってくるような気もします。適度なストレスは却って健康のもとともきいたことがあります。この四季のある日本において自然とともに暮らしていくということはある意味、贅沢なことと言えるようにも思います。京都人はよく言います。「寒い暑いもご馳走ですから」。。。 ◇・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ◆ 京都でお商売しよと思(おも)たら…(4) 店の雰囲気を切り盛りするのも店主の力量 ◇・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 「何や、あの店は入りにくい店やなぁ…」という話を耳にすることがあります。町家で営業されているところでも、それぞれの店主のカラーとかお考えが出て、入りやすい店とそうでないところがあるようです。店の表構えや内部の雰囲気でそれとなく来て欲しいお客さまにアピールしたり、客層を選別している…というのはよくあることですし、言わずもがな、京都らしいやり方といえるのかも知れません。 このところの町家ブームにのって(?)若い方が開店されたお店…主に物販店…を訪ねたとき、ちょっと違和感を覚える場面に遭遇することがあります。先日の冬至号(vol.32)で、『「お客と顧客」…常に頭の中に置いておかんとあかんこと』と書いたのですが、お店に店主の友人らしき方々やいわゆる常連さんがたむろしておられるところがあります。それ以外のお客が入りにくい雰囲気になってしまっているのです。親しさゆえちょくちょくお店を訪ねたり、話し込むというのはよくあることなのですが、本当の意味での京都人であれば、そういう新規、もしくはそれに近いお客さまが店に入ってこられたらすっとお店の奥へ引っ込むか、さりげなく店を出ていくものです…。 でも、これはその友人や常連さんのせいではありません。やはり、店主の姿勢の問題だと思います。そういう店の雰囲気を切り盛りするのも店主の力量です。 「一見(いちげん)さんお断り」で営業するのならともかく、たくさんの方にご来店いただいて…という物販店であればなおさらのこと、よく考えていく必要があろうかと思います。これが飲食店で、特に業務拡大を図らず、常連さんだけで楽しくそこそこ…というのなら、話はまた別ですが。それに、いくら友人といえども、営業中の飲食店に来て水一杯でさようなら…という方もおられないでしょうし。 お客さまに来ていただくというのはどういうことなのか、店の中のあれこれを整えたり、商品に腐心をするのはもちろんのことですが、お客さまに接する者の物腰、対応は最重要ポイントです。「気遣い」こそが最大のご馳走です。ここでいうところのお客さまとは、物を買いにこられる方ばかりでなく、出入りの業者さん、納品の方、作業をしてくださる職人さん…のことです。とくに用事がなくても「まいど、どうでっかぁ…」と、様子を見に来てくださることも少なくありません。そういう方を大切にするというのも京都商法の一つだと思います。 丁稚などという「徒弟制度」があった頃や、親方さんについて修行をした方であれば、そんなことはそれなりにきちんと身についていることなのでしょうが、今時の若い店主はお店をオープンすることばかりが先行して、その辺のことに思いを馳せるいとまがないようです。店主が追究したいお店のカラーとの兼合いもあるでしょうが、お客さまが求めるお店の在り方というのもしっかり考えていかんとあきません。 ◇・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ◆ 京ことば*ノート p.2 ぬくい/ぬくとい/ぬくたい/ぬくぬく ◇・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 標準語だと、いずれも「暖かい/温かい」となります。旧幕時代には「ぬくい」というのは大阪弁だったそうですが、現代では京都でもつかいます。これから派生して、あたたかいご飯のことは「ぬくごぜん」とも(冷たいご飯は「ひやごぜん」)。 用例1)おぉさぶ、はよ家に帰ってぬくぬくしよ。/用例2)この子ぉはいっつもぬくたい手ぇしたはるなぁ… ◇・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ◆編集後記 ◇・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 大寒号、いかがでしたでしょうか。先号で「京ことば*ノート」を始めることについては申し上げたのですが、と、同時に、「京町家幻視曲-京町家を詠む-」もいったんお仕舞いにして、「京都幻想–二十四節気を詠む-」を始めています(先号では表題に誤植がありました。ゴメンナサイ!訂正いたします)。短歌の方もどうぞお楽しみに!【註】短歌はここをクリック! ♪2004.2.4 立春 Vol.35 こんにちは、エステイト 信の井上です。風通信・立春号をお届けします。 先日ある家主さまのお家にうかがった折、次のような質問を受けました。「うちの貸家をおたくにおあずけすることはやぶさかではないのだが、井上さんが亡くなった後はどうなるのか?」と。わたしは昭和32年生まれの満46歳で、その家主さまご夫妻よりも20歳ほども年下です。 確かに、いまどきの30年ほどしたら建て替えの必要な住宅ならば、わたし一代でそのお家も寿命を終えてしまうのがふつうでしょう。でも、300年もつといわれている京町家は話が別です。現在築80年の家ならばあとの200年余のことも考えていかんとあかんのです。 もちろん、100年200年先のことを具体的に考えることはできませんが、少なくとも自分が今のように仕事をすることが叶わなくなるであろう30年先のことを見越してきょうを考えていかんとあかん…と、つくづく思った一日でした。 ◇・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ◆ 京都でお商売しよと思(おも)たら…(5) 職住一致の落とし穴? ◇・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 京町家の一番の特長は「職住一致のための家」。これは世間一般でも、もちろん当店でもよく申し上げていることです。 確かに職住一致のメリットはたくさんあります。その中でも最大のメリット(と、うちで考えていること)は、「その仕事や仕事をする親を見て子どもが育つ」ことです。繊維業界で育った妻は、3歳のころからちりめん巻きをしたといいます。うちによく遊びに来る仕出屋のお嬢は、幼稚園時代から卵割を手伝ったと話します。うちの二人の息子も、ゼロ歳のころから物件案内に同行させたり、一歳を過ぎるころになるとお客さまがみえるとスリッパをお出ししたりもします。 目にみえることも目にみえないこと(たとえば、立ち居振舞いや帝王学など)もふくめて、職住一致の家庭で大きくなることは、子どもにとって大きな影響があるといえるでしょう。 では、職住一致のデメリットはいったい何なのでしょうか?ありたいていに考えれば、「時間や仕事と家庭のけじめがつかない」と、いうことが思い浮かびそうですが、実際にその中に身をおいてみると、これはほとんど問題になりません。職住一致の生活をしたことがない方は、えてしてこのようにおっしゃいますが、「生きる・暮らす」ということが「仕事をする」ということと二アリーイコールである京町家住民にとっては、職業と暮らしを分けるということはまったくナンセンスです。したがって、けじめをつけるという発想すら出てきません。 では、デメリットは? …うちもそうなのですが、職住一致でやっている個人商店というのは、一人企業が多いです。例えば、わたしが事故かなにかで仕事ができなくなったとき、たちどころにエステイト 信は停滞します。停滞ならまだましです。わたしが頓死でもしようものなら、どうでしょうか?残された家族の生活が心配? 否。そんなものはどうとでもなるでしょう。また、なるようにしていかんとあかんのです。 一番心配なのは、現在、進んでいるお話やおあずかりしているお家のことです。お客さまや家主さまにかけるご迷惑をどうすれば最小限に抑えられるか、これが問題です。いつなんどきそのような事態になってもあわてることがないように覚悟はしている…と、妻はよく言います。職住一致である限り、家業である限り、それ相応の覚悟は必要です。生半可な気持ちでは、続けていけません。 わたしが年老いて仕事ができなくなったときのことはおいおいに考えていくこともできるでしょう。どちらかの息子が継ぐ…ということもありうるかもしれませんし、まったく血縁のない後継者が出て来てくれてもいいと思っています。 自分がほんとうに価値のある仕事だと思うのなら、100年200年先につながるような仕事の仕方、また後継者を育てることは不可欠であると思います。また、そういう視点から自分の仕事をみていくというのも、ある意味での京都商法かもしれません。(次号に続く) ◇・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ◆ 京ことば*ノート p.3 大阪弁(関西弁)と京ことば ◇・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 大阪弁(関西弁)と京ことばの区別ができない方もおられるようです。主に音の違いなのですが、大阪弁(関西弁)では「イ段」の音を京ことばでは「ア段」で受けたりとか、微妙にちがいます。例を挙げてみましょう。 [標準語/関西弁/京ことば]の順で記します。 例1)行かれる/行きはる/行かはる 例2)食べておられる/食べてはる/食べたはる 例3)〜される/〜しはる/〜しゃはる 例4)とても〜/ごっつい〜/ごっつぅ〜 例5)おっしゃる/言いはる/言わはる(ゆわはる) いかがでしょうか?何とはなしにつこてることばですが、結構ちがうんですよ! ◇・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ◆編集後記 ◇・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 立春号、いかがでしたでしょうか。きのうは節分。季節を分ける日でした。恵方(今年は東北東)を向いて巻き寿司、食べはりましたか?恵方は「明けの方(あきのかた)」とも言い、その年の歳徳神(としとくじん)のいる方向をいいます。この日、京都では豆を撒いたり節分おばけ*がでたりします! *節分おばけ…昔は節分の厄除けに老女や幼女が「おば髪(け)」という髪を結ったのが、起源だとか。ま、ハロウィンの仮装のようなものでしょうか…。 ♪2004.2.19 雨水 Vol.36 こんにちは、エステイト 信の井上です。風通信・雨水号をお届けします。 先日、ふとTVをつけたら「マネーの虎」なる番組をやっていました。そこに出ていたのはカフェを始めたいという30すぎの男性で、彼の起業計画によると、その店の従業員には劇団員をバイト店員として雇うということでした。接客時の笑顔とかことばなど、マニュアルをこなす力が普通のバイトさんとは雲泥の差だという話でした。この選択について、読者の皆さんはどう思われますか? 「それはよい考え!さすが!」ですか? ちなみにうちの妻にこの話をしたら、彼女は「わたしなら…自営業の家の子であることを採用の条件にする」と言いました。妻に言わせると、職住一致の自営業かそうでないかは、その人の人となりを左右するくらい大きな問題だそうです。…そういえば、後で聞いた話ですが、彼女の結婚相手の第一条件は「自営業者」だったそうです。 ◇・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ◆ 京都でお商売しよと思(おも)たら…(5) 職住一致の京町家で育った子ぉは… ◇・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 職住一致の家で大きくなることは、子どもにとって大きな影響があるという話を先号でしました。 正直なところ、以前のわたしは、自営業の家に育つということがなぜにそこまで大きな意味を持つのか、よくわかりませんでした。京町家専門の不動産屋をするようになり、町家に住みたいお客さまにいろいろお会いするうちにだんだんわかってきたような気がします。うちでは、ご来店いただいたお客さまが帰られた後、「今のお客さんは自営のうちの子か、サラリーマンのうちの子か?」という話をよくします。更に、うちで成約に至るのは、自営のうちの子が圧倒的に多いということも事実です。何がどう違うのか、一言では申せませんが、その人の持つ雰囲気とかちょっとした対応の仕方がぜんぜん違うのは動かしがたい事実です。 一昨日のことです。家主のTさんと入居者の選別について話をしておりましたら(Tさんは某株式会社を経営されており、不動産賃貸業…つまり家主業は副業)、Tさんが「従業員としてたくさんの若い子を雇ってきたけれど、自営のうちの子とサラリーマンのうちの子とでは仕事の仕方がぜんぜん違う。サラリーマンのうちの子は給料のために働くが、自営のうちの子は何をさせてもひと工夫しようとする。そこから何か自分のものにしようとする」という話をされました。今は雇われている身であっても、ものの見方というか、その人に潜在的に備わっている思考パターンが経営者の理論であり、経営者の目なんですよね。だから、ふとした対応などにそれが自然と出るということなのだと思います。 誤解しないでいただきたいのですが、何もわたしは自営のうちの子でなければ自営業者になれないと言うているのではなく、サラリーマン家庭に育った人が起業を志すのならば、経営者の目で見ると言うことにおいて、自営業の家の子とは、まず出発の時点から差があることを自覚した方がよいのでは、ということなのです。自営のうちの子であれば無意識にできることが、たくさんあるということなのです。特に京町家…職住一致の家に育てばなおのことです。 平たく言えば、例えば25歳で起業した人が30歳になれば5年のキャリアですが、自営のうちの子なら30歳になった時、すでに25年以上のキャリアをもっている…といっても過言ではないかもしれません。3歳でものごころついてから27年もたっているのですから。 また、京都ではこんなこともいいます… 「商売をしよと思たら商売人の娘を嫁にもらえ…」。 ◇・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ◆ 京ことば*ノート p.4 京ことばの種類 ◇・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 京都以外の方に京ことばというと、何にでも「〜どす」と付ける…と思われている方があるようですが、これは祇園などの花街(かがい)ことばで、京ことば(町方ことば)は以下のように大きく分けて3種類あります。 1)中京ことば:主として室町の糸へん業界(繊維問屋)の商家のことば 2)西陣の職人ことば:西陣の機屋(はたや)街で主に職人さんが遣う 3)祇園の花街ことば:祇園など5花街でもちいられる この中で一番丁寧といわれているのは、室町ことば(中京ことば)です。 ◇・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ◆編集後記 ◇・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 雨水号、いかがでしたでしょうか。下の息子が満2歳になりまして、この春から保育園に行くことになりました。その申請のためもあって、少し早めに確定申告をする必要があり、電話の回線をかえたりしたこともあって、年明けから事務作業に忙殺されておりました。平常の業務に戻ってみると、すこし風も春めいて、世の中は転勤・新入学進級のシーズンが間近です。当店は不動産屋といっても町家専門ですから、大手の賃貸屋さんのように次から次へとお客さんが来店される…ということはないのですが…。 ♪2004.3.5 啓蟄 Vol.37 こんにちは、エステイト 信の井上です。風通信・啓蟄号をお届けします。 NHK大阪文化センターで「京町家の選び方、暮らし方」と題して3回講座の講師を引き受けることになりました。京町家の歴史や構造、借りる際のポイントから実際の暮らしについてまで。そのうちの1回は現地見学となります。日時は4月10・24日と5月8日の13:00〜14:50です。詳細は下記サイトよりご覧ください。 http://www.nhk-osaka-cul.com/ ご存知のように、啓蟄は二十四節気のうちのひとつなのですが、これをさらに細分すると七十二候というものになります。啓蟄から春分までの間の七十二候は以下の通りです。 初候 :蟄虫啓戸(ちっちゅうこをひらく):冬蘢りの虫が出て来る 次候:桃始笑(ももはじめてわらう):桃の花が咲き始める 末候:菜虫化蝶(なむしちょうとなる):青虫が羽化して紋白蝶になる… 読んでいるだけでなんとなくうきうきして春の気分になりませんか?よろしければ少し遠足気分でNHK大阪講座へもお出かけください…! ◇・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ◆ 京都でお商売しよと思(おも)たら…(6) 商売人&経営者としての目、在り方 ◇・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 先号で「自営のうちの子とサラリーマンの子とでは仕事の仕方がぜんぜん違う」という話が出たことを書きました。仕事をする上で、与えられたこと、お決まりのこと、つまりルーティンワークをこなすことは当たり前のことです。従業員の側から言えばサラリーの代償としてそれだけの仕事はする、ということですよね。もちろん、マニュアルにあることをこなせなければ問題だし、ときには減俸ということもあるかもしれない…。だからというて、それ以上のことをしたからその分だけお給料が正しくUPするということにはならない場合もあるわけです。一方、経営者の目で働くということは、マニュアル程度のことをするのは当たり前のことで、あとはどれだけその人がそれにプラス?をするか、また、オリヂナリティを発揮するか…が問題になってくるのです。また、経営者であるということは、師とあおぐ人や先輩・同朋はあっても、上司が存在しないということでもあります。つまり、誰かから「仕事を与えられる」ということがないということです。無の状態からどれだけ自分で仕事を見つけ出してそれをやりとげるか、どうやって次につながる仕事にしていくのか、これを考え見極め工夫するのが経営者とは言えないでしょうか? また、経営者である限りは、今現在を見つめ運営していくことももちろん大切ですが、10年先20年先…ひいては次の世代へと継承していくことを考えることも肝要です。「今」のみを俎上にあげて、「今のお客さんや売り上げがどうこう」よりも、もっと大切なのは「10年20年、50年とお店を続けること」だと思います。目先の利益を上げるよりも、何十年も続けられる企業にするということはずっと難しい。いろんなところで、「商いは牛のよだれのごとし」とか「ひたすら永続させることこそ命」だとか、耳にされたことはありませんか? そのためには今、何をせんとあかんか。お客様によろこんでもらうためには何をせんとあかんか。お商売を続けていこうと思ったら、経営者の目をもって24時間考えてんとあきません。寝ても醒めても、自分のお商売のことを考えていないといけません。 大切なのは、「こころ」ではないかなぁ…と、思います。商品に対するこころ、お客様に対するこころ、仕入先や出入りの業者さんに対するこころ、自分のポリシーに対するこころ。それが自然と立ち居振る舞いにあらわれるはずです。頭を下げる角度がどうのこうの…これも無意味なことではありませんが、マニュアルは所詮マニュアルでしかありません。お客様に対する「こころ」が自然と頭(こうべ)を垂れることにつながれば、ほんとうの商売人ですよね。一朝一夕にできることではありませんが。 うちでは妻が4歳の息子(斐文/ひふみ)によく、「うちはね、お客様に来ていただいて、町家を借りたり買うたりしてもらってお金をいただくの。そのお金でご飯を食べたり、お洋服を買うたりできるの。お客様が来てくれなければ、何もできない。だから、お客様が来てくれはったら、大切にせんとあかんの。ひみちゃんも毎日ご飯を食べてるんだから、協力してね」と、言うてます。 丹後ちりめんの織り元の娘だった妻は小さいころから周りの人に、「うちは機屋(はたや)さんがちりめんを織ってくれてそれを売ることで商売をしてるんだから、機屋さんはできるかぎり大事にせんとあかん。どうすれば機屋さんが気持ちよく上等のものが織れるか、いつも考えてんとあかんし、それをどうすればきちんと得意先に伝えられるか考えんとあかん」と、言われて育ったそうです。得意先(室町の白生地問屋さん)に対しては、「商売人としてのプライドを持ちつつ、ある意味、運命共同体であり、織り手さんの擁護者であるべく」接するよう、しつけられたといいます。 商売人&経営者としての在り方、これがとどのつまり、肝腎なのです。「京都商法」というものを考えるとき、これ抜きで論じることはできません。…つづく ◇・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ◆ 京ことば*ノート p.5 大阪・船場ことばと京ことば ◇・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 京都ことばには何種類かある…という話を先号で書いたのですが、大阪弁にも いくつかあるそうで、そのうちの「船場ことば」は非常に京ことばに近いもののようです。たとえば、「おいでやす」とか「ごめんやす」とか…。実は、この船場ことば(生粋の大阪商人ことばと言い替えてもよいかもしれません)を用いていた船場界隈の人々は、豊臣時代に京から越してきた京の町衆だったそうです。京ことばと大阪弁が融合してできたのが「船場ことば」。時を重ねるうちに、スピードUPしたり大阪独自の表現が加えられたり…と考えるとわかりやすいでしょうか。 [大阪弁/船場ことば/京ことば]の順で記します。 例1)よう〜せえへん/できしまへん/でけしまへん 例2)あきません/あきまへん/できまへん・あきまへん ◇・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ◆編集後記 ◇・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 啓蟄号、いかがでしたでしょうか。「船場ことば」というてまず思い浮かぶのが、文豪谷崎氏の夫人、松子さんです。大阪弁の中で最も美しいともいわれる船場言葉ですが、現在、もうほとんど耳にすることができないそうです。大阪市内に住む年輩のわずかな人たちや、船場の豪商が別荘地にした芦屋の古老などが使う程度だとか…。町家の保存再生も大事でしょうが、こんなことも大事にせんとあかんのやないか…。ほんまに大切にして継承していかんとあかんのは、ハードではなくソフト面だとつくづく思う今日このごろです。 ♪2004.3.20 春分 Vol.38 こんにちは、エステイト 信の井上です。風通信・春分号をお届けします。 先日、17日から彼岸に入っております。春分の日をはさんで前後一週間、先祖の供養をしたり、お墓参りをします。また、昼夜の長さが同じになるので、仏教の解く、「中道の教えに叶う」につながるとか。 さてお彼岸の定番お菓子といえば、春は牡丹餅(ぼたもち)、秋はお萩。牡丹は、春に咲く花であることから、春のお彼岸に食べるのは牡丹餅。牡丹の花の開いたさまに似ていることから名づけられたそうです。餡は漉し餡。一方、お萩はつぶ餡でつくられ、この小豆のつぶれた形が萩の花に似ているからとも葉に似ているからともいわれています。 また、「暑さ寒さも彼岸まで」というように、季節の変わり目でもあります。衣類の調節もさることながら、昔から、農耕の区切りとして祭りが行われていた時期であり、それが宗教(仏教)行事と結びついて現在の年中行事として定着したのでしょう。 京都・洛中の冬の寒さ…底冷えは格別といわれていますが、だからこそ、この季節の到来の喜びも格別です。 ◇・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ◆ 京町家で暮らすとき、ご近所感情も尊重してくださいね… 管理している不動産屋がしたらあかんこと ◇・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 今回は、京都商法の話はちょっとお休み。京都人気質と申しますか、ご近所づきあいのことを少し…。 先日、とある京町家に引っ越して間無しの若いカップルから連絡が入りました。その内容は、「お隣の木が伸びてきて倒れてきそうなので、どうすればよいか?どうもお隣は空き家のようなのですが…」でした。 このお家は、当店が管理業務を委託されており、入居後のあれこれは家主さまでなく、当店へ連絡いただくようになっております。 では、この場合、どうすればよいでしょうか? これが、マンション・アパート等であれば、管理をしている当店がお隣の住民を探し出し、「その木を何とかしてほしい。或いは、乗り越えてきている分を伐ってもよいかどうか?」と、お訊ねするのが普通です。で、最初、わたしは今回もその方向で話をもっていこうとしました。 まずは隣家の持ち主を家主さまに訊ねて…残念ながら現在の持ち主さまのことはご存じなかったものの、その後の調査で隣家の持ち主さまを知っておられるであろうお方を割り出すことはできました。では早速その方に問い合わせて…と、思ったのですが、一晩考えました。「ちょっと、待てよ…これはご近所付き合いの問題でもあるから、うちがいきなり出ていくのはまずいのではないだろうか…?」。そう考え直しました。そこで、その若いカップル(Mさん)に以下のようなメイルを書きました。 """"""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""" お隣の木のことに限らず…の話なのですが、ご近所のことはまずはMさんでよい手立て・方法を見つけることを考えた方がよいと思います。確かに、Mさんのお家はうちが管理に入っているので、いろいろ言うてくださるのは大歓迎なのですが、ご近所同士のことは、あんまり不動産屋が首を突っ込むと、えてしてよい結果を生まないと思うのです。うちがそうであるかは別として(笑)、「不動産屋」というのはあまりよいイメーヂを持っておられない方があることも事実ですし、何かあると「不動産屋が出てくる」というのでは、Mさんたちがご近所からよく思われない…かもしれません。 「家(部屋)のことで不都合があれば、管理の不動産屋に解決してもらう」というのは、マンションでは普通のことなのですが、京町家の場合、ご近所感情というのも尊重する必要があると思うのです。 もちろん、お隣やご近所と話をされてこじれたり、うまく話が進まないようであれば、うちの方へふっていただいて構いませんよ〜! うちが話をするのを厭(いと)うとか、そういう意味ではありませんので、誤解のないように願います。 ご近所の方にしてみれば、貸家であろうが、持ち家であろうが、そのお家に住んでられる方としてお付き合いくださるのですから、関係ないことですし…。この辺のところ、京都人の微妙な感情なのでちょっとわかりにくいかもしれませんが、ご理解ください。よろしゅうお願いいたします。 (引用終わり) """"""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""" 京町家の管理業務というのは、マンション・アパートと重なる部分も多々ありますが、京町家特有のあれこれ…というのがあることも確かです。もちろん、雨漏りしたとか水道管が破裂したとか…家の中のことであれば飛んでいかねばなりませんが、ご近所のこととなると、まずはその住民同士で解決をはかる…というのが鉄則です。でないと、「なんやぁ、水くさいなぁ。ちょっと言うてくれたらよいのに(不動産屋まで呼ばんでも…)」となり、後々のご近所づきあいがうまくいかないこともあるかもしれません。「管理」ということばに振り廻されてはいけないのです。管理をしている当店がまずは考えんとあかんことは、「当店が管理している町家の入居者に、いかにあんじょう暮らしていただくか」なのです。 ◇・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ◆ 京ことば*ノート p.6 「おこしやす」と「おいでやす」 ◇・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 「おこしやす」と「おいでやす」、どう使い分けたはりますか? 両方とも「いらっしゃいませ」の意であることには変わりがありません。 「おこしやす」は「おいでやす」よりも更に丁寧な表現…とされている方もありますが、普通は、遠来からのお客さまの場合、「おこしやす」で、近場からの方には「おいでやす」と用います。京都は山に囲まれているので、山を越してまで来てくれはって、「よぅお越しやす」なわけです。 ◇・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ◆編集後記 ◇・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 春分号、いかがでしたでしょうか。今年は大河ドラマのお蔭もあって、京都の観光客はたいそうな数が見込まれるそうです。西から東から、みなさんほんまに「よぅお越しやす」です。「ちょっと興味があるから、こんどの京都観光の折、町家の物件案内をしてもらえないか…」、そんな依頼を受けることがあります。町家の物件は観光資源ではありませんし、当店も人手がない不動産屋なので、そのようなご要望にお応えするわけにはいきません。それに、改修のことやらご近所・学区のことなどをお話しせずに物件の案内だけするというのは、当店のポリシーに反します。ムっとされるお客さまもおいでになりますが、ま、これも仕方のないことかなぁ…と、思ったりしています。 ♪2004.4.4 清明 Vol.39 こんにちは、エステイト 信の井上です。風通信・清明号をお届けします。 四月新入学の季節です。京都は学生の町でもあります。近頃、立命館や同志社のように市外への流出が増加しているとはいえ、他の都市に比べれば多くの大学や私立高校があります。当然、京都市に在住する学生の数も多いわけで、せっかく住むのなら「町家に!」という学生さんも少なからず…です。改修に関する費用負担の問題やお町内・学区のお役とか経費のことなど、学生にとってはちょっと荷が重いかな…という感がなくもないのですが。ただ一般に受け入れる側の京都人は、「学生さんだから…」と、きわめて好意的に見てくださることが多いです。有り難いことです。入居する側の学生さんはこれに甘んじることなくご近所の方に感謝して、「できることはさせてもらう…」気持ちを持ち続けてください。何と言うても、ご近所の方は、あなた方が学校やバイトに行っている間、あなた方のお家のお守りをしてくださっているのですから…。 ◇・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ◆ 京都でお商売しよと思(おも)たら…(7) 京都の商売人は学問が好き…? ◇・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 京都商法の話に戻ります。京都商法の一つに「学問主義」があります。いわゆる「学者(研究者とかコンサルタント)」の意見を尊重したり、共同で商品開発を試みるなど、自分の商売の中にアカデミックな香りを盛り込もうとします。先年、ノーベル賞を受賞された島津製作所の田中氏のことはみなさんご存知だと思いますが、産学連携によって古くから技術の基礎となる研究が盛んに行われ、創造性にとんだ最先端の商品を開発してきました。京都の商売人は学問が好き…と言うてしまうとそれまでなんですが、たとえば1989年に設立された「産学公の連携による研究開発・新産業創出を支援する-京都高度技術研究所ASTEM」*などもその一つでしょう。アメリカが永年の不況から抜け出すために打った策の一つが、この産学共同であったことは有名な話です。 言い換えると、京都は学問の都でもあります。京都にはたくさんの私立中学高校や国公私立大学がありますが、これは宗教に関連する機関が多いこともその理由のひとつでしょう。また、一般には商売人には学問など必要がない!という考え方もあるようですが、京都人の商売人はそうは考えず、帝王学や経理・経営学とともに子弟の教育に熱心でした。京都商法の祖といわれる、石門心学で有名な石田梅岩(江戸時代)などのように、商売人にもそれ相応の学問を…と説く学者を尊敬し、経営の礎としている社主が少なくないことからも学問を尊ぶ京都人気質が理解できるのではないでしょうか。今は、将来の人脈を作るために子どもを進学させたりもしています。すべては「お家(商売)存続」のためなのですが…。 また、京都は内陸のために大きな土地もなく、交通の利も得られなかったため、いわゆる軽薄短小産業…その分、工夫と高い加工技術力、付加価値で評価されてきました。加えて、京都人気質もあって大企業よりも中小企業でやっていこうという気風があります。ハイテクを用いた有名なベンチャー企業が多数あることは周知の事実ですが、これはこんな土壌にあるのだと思います。つまり、高品質多品種少量生産と分業性(自社生産工場を持たず下請けに発注)、かつ少数精鋭の社員というのがキーワードであるようです。まさしく、これは「京都商法」にほかなりません。 この高品質ということにおいては、京都はご存知のように、京都というより、日本の伝統工芸を支えてきた技術者集団が暮らす町です。織物にせよ指物にせよ、緻密で精密、かつ美しいものを生産することにおいては伝統があります。ハイテクノロジーを生み出す背景にはそんな歴史的要素も無視できません。 自社工場を持たない…ということは、西陣の出機屋(でばたや)さんからの発想と思われますが、商品が思うように売れなかったとき「これはあかん」と思ったら、身軽に転身できます。工場をどうしようとか、社員の給料が…とか悩むことなくさっさと見切りをつけて次の商売へと移行できるのです。いつまでもいつまでも引きずって、契機を逃してしまってはお家の存続が叶わないかもしれません。世の中の流れを読んで生き残っていく…。これも無視できないことです。 *参考)http://www.astem.or.jp/top.html 京都経済界の発展、地域産業の振興、科学技術の進展に寄与することを目的に、京都府、京都市、京都商工会議所を中心とする地元産業界、京都大学を中心とする関西地区の大学によって、技術開発の先端機関として設立されました。 ◇・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ◆ 京ことば*ノート p.7 出がけの会話 ◇・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 今回は、出がけの会話です。 §家で「行ってらっしゃい」のかわりに… A「行てきます」…※ B「おはようお帰り」 夜遅くなることがわかっているときでも使います。深い意味はない…? ※もともとは「いてさんじます」と言うてたようですが、今はちょっと耳にしませんね。 §道で近所の人や知り合いに会うたとき A「いやぁ、どこ行かはんの?」 B「ちょっとそこまで…」 訊かれてもきちんと「どこそこへ行く」とは答えませんし、訊いた方も別に正しい行き先を知りたいわけではありません。「How are you doing?」くらいの軽い感じの挨拶です。 ◇・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ◆編集後記 ◇・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 清明号、いかがでしたでしょうか。わたくしごとですが、この四月から下の息子(二歳)が保育園にいきます。小学校入学までの四年間、お世話になる予定です。よその地域であれば、「そんな小さいころから可哀想に…家でみてあげればいいのに…」と言われそうですが、うちの辺(西陣)ではそうはなりません。家で小さい子がころころしていると、「保育園にはいつから行くんか?」と、訊かれます。家で仕事に紛れて世話が行き届かないくらいなら、保育園に行くほうがその子にとっても楽しくてよい…と、考えます。確かに、うちの近くにはやたらたくさんの託児所・保育園・幼稚園があります。西陣なので、家で機を織っていたり、母親が織手さんで外で働いている…という歴史的背景から需要があったのだと思います。今は往時ほどたくさんの機屋さんがあるわけではないのですが。。。。。 ♪2004.4.20 穀雨 Vol.40 こんにちは、エステイト 信の井上です。風通信・穀雨号をお届けします。 この時期降る雨は「百穀春雨」などといって、春の温かい雨が百穀(穀物)の種の成長を促し芽を出させることから、こう呼ばれています。種蒔きをするのに最適な時期で、昔から農作業の目安にされてきたそうです。 ところで、先日17日より立夏の前の「土用」に入っています。土用というと「夏の土用」→「土用の丑」→「うなぎ」を思い浮かべられるのはわたしだけではないと思いますが、夏の土用は立秋の前の18日間をいいます。土用は、立春・立夏・立秋・立冬の前の18日間で、年に4回あります。 一般に「土用の間は、屋根仕事や庭木をなぶるのはやめなさい」といわれるのですが、これは「土用の期間は天候が不安定なので外仕事の予定は立てない方がよい」ということからなのでしょうね。。。。。 ◇・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ◆ 京都でお商売しよと思(おも)たら…(8) 院政…つまりは「永続への哲理」 ◇・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 京都の商売のやり方として、「早めに引退する」というのがあります。これは、何も、歳若くして隠居さんになる…ということではなく、早めに代表者の席を譲り、自分は会長職に坐って采配する…ということです。つまり、「院政」です。 京都・洛中の商売人は、目先の利益ばかりを追い求めることなく、肝要なのは「家業の存続」であると考えます。「商いは牛のよだれ」といわれるところです。京都人気質として、先祖が代々積み重ねてきた信用や財産に傷をつけることは非常に耐え難いことなのです。「守り継ぐこと」こそが重要なのです。 そのためにも自分の精神&健康状態が万全のうちに引退して代替わりをし、次の当主があんじょうやっていけるようになるまで陰になり日向になり見守り指導、さらに「ここぞ!」というときには自分が前面に出ていきます。商売上のトラブルがおこったときでも、「先代さんが出てきてくれはったんやから、うまいことおさめよ」ということで、大事にならず事なきを得る…ということも少なくありません。さらに、経営に若い人の考え方やものの見方を取り入れることは、そのときそのときの時勢にあった商売をするということにも一役かっているのではないでしょうか? それもこれも自分のお家を守らんがため…なんですが。 また、京都の商売人は、自分が当主となったら早めに自分の次の当主を定め、立派な商売人となるように英才教育…帝王学(この内容は、また機会があれば述べることにいたしましょう)を身につけるよう、教育します。これも当主として重要な責務です。 こうして、京都・洛中の商家は代々、続いていくわけです。「永続への哲理」というてもよいかもしれません。 京都には千年以上続いている商家・職人の家が20軒以上あり、100年以上というだけなら700軒を軽く越します。築100年の町家が珍しくないのと同様、創業100年なんて「古参」とはいえないわけです。 では、引退して隠居さんになるのはいったいいつ?とお思いでしょう。いわゆる「目が黒いうち」は引退なんてありえません。そのときは… ◇・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ◆ 「消防団員募集中!」 ◇・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 京町家でお商売をしている自営の方、20〜40代のあなた、消防団に入りませんか? 募集中です! ◇・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ◆ 京ことば*ノート p.8 はしりでちょうず… ◇・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ うちへ来られる工務店さんのひとりごと…「洗面所も作らんなんて、はしりでちょうずつこたりするんやろか…まぁ、このごろは上(かみ)ばけつと下(しも)ばけつのない家も多いらしけどなぁ…」 「はしり」は台所の流しのこと。「ちょうず」は手や顔を洗うこと。京ことばを使う人が少のうなるのにつれて、そういう生活習慣もだんだん周りからやかましゅう言われんようになるんどっしゃろね、Mさん! ◇・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ◆編集後記 ◇・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 穀雨号、いかがでしたでしょうか。この季節、雨が多いですね。三月下旬からの「菜種梅雨」に始まって、「花の雨」、そして「穀雨」。「春の長雨」なんていわれたりもします。立夏前の土用は雨が多く、屋根屋さんはやりたくても仕事にならない…というのも本当です。むかしの人はよく言うたものですね。 ところで、4月29日のみどりの日(祝)は、城南宮での曲水の宴に歌人(うたびと)として参宴します。平安装束をつけた歌人が遣り水のほとりに坐って、お題をいただき即興で和歌を詠む…というあれです。当日、よっぽどの大事件がない限り、TVのニュウスで放映されるはずです。お楽しみに…! ♪2004.5.5 立夏 Vol.41 こんにちは、エステイト 信の井上です。風通信・立夏号をお届けします。 本日5月5日は端午(たんご)の節句。五節句のうちの三番目のお節句です。端午の節句といえば菖蒲(しょうぶ)・ちまき・柏餅…。菖蒲はサトイモ科の多年草で、強い香りをもつ植物です。この香りが「邪気をはらう」といわれ、端午の節句にはよもぎとともに葉を軒につるしたり(軒しょうぶ)、菖蒲湯にします。さらに、語音が「しょうぶ」で、「勝負」あるいは「尚武(=武を尊ぶ)」に通ずることより「男の子の節句」につきものとなったといわれています。 ところで、先日、若い女性(大阪府出身)の二人づれが新規開業のために町家をさがしに来られました。「中国茶と日本茶(煎茶)のカフェをしたい」と言われます。確かに、その手のものは東京では何店舗か話題になっているようですが、京都でやるにはどうでしょうか? むしろ「中国茶」専門で考えた方がよいのではないかと、アドヴァイスしました。ターゲットは観光客かと訊ねると、そうではないとこたえられます。予算的にも一等地は無理で、飲食業ができるほどの改修改装予算も用意してはおられないご様子。その上、お店のコンセプトや運営方法も場当たり的で頭の中で夢を描いた…という感じでした。「京都では一保堂さんと柳桜園さん*のお茶の区別ができる人は珍しくないですよ」と申し上げると、なんとも不思議そうな顔をされて帰っていかれました。町家でやればそれだけでうまくいく…なんてことは決してありませんよ…。 *ともに老舗のお茶屋さん。双璧というてもよいかも。全国的には一保堂さんの方が有名かもしれませんが、根強い柳桜園ファンも多い。ちなみに、うちは柳桜園派です。あっ、小山園もよいですよ。。。 ◇・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ◆ 京都でお商売しよと思たら…(9) 町家で新規開業を志す方へ… ◇・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 京町家は職住一致の建物ですから、お商売をしたい…それも新規開業という方がよく来られます。夢や希望に胸ふくらませて…! 当店は、京町家専門の不動産屋として町家の保存・再生を声高に叫ぶよりも、京都(特に洛中)に暮らす人をつくっていくことを主眼にしたいと考えています。特に、伝統産業の後継者・職住一致の方を応援しています。その意味からも、せっかくするのなら町家で、しかも職住一致でお商売しよう!という方は仲介業務にとどまらずいろんな面からサポートいたします。 …という気持ちは重々あるのですが、その一方で「これではちょっと仲介しにくいなぁ」というお客さまも少なくありません。それはどんな方かと申しますと、「夢や希望ばかりで詳しい事業計画も下調べもない方」です。 うちではご来店いただくと、新規開業を志される方には、その「覚悟」のほどと「営業方針」、「どこまで調査されているか」、「お客様のターゲット層(地元の人か観光客か)」をお訊ねすることにしています。これが第三者にきっちりと語れないようでは、店主候補としては未成熟と言わざるをえません。実際にお商売を始めた後、変化していくことはあるのしても、とりあえずしっかりと足許をかためる必要は大だと思います。「商売」は現実です。夢や理想ばかりではやっていけません。お家を興そうというのですから、命がけです。それ相応の覚悟は不可欠です。 「とりあえず、どんな物件があるのかしりたい」…確かに、そのお気持ちも理解できないわけではありません。しかし、物件を見に行って気に入ったら、もう即GO!となるのです。物件が決まってから資金繰りやら役所の許可関係、事業の詳細を考えていたのでは開業がうんと先になってしまいます。空家賃をゆったり払うだけの潤沢な予備費があるのなら別ですが、心が決まったらすぐに申し込み、家主様のOKを待って契約、その日からもう具体的な開業準備(改修とか仕入れとか…)に入らねばなりません。 「町家物件は僅少ですから、一年近く待たれる方も少なくなく、もうこれはまったくのご縁で…」といえばそうなんですが、「ご縁」というのは、その日に出会っても「ご縁」なのです。「まださがし始めたばかりだから…」とか「いろいろ準備ができていないから…」では、せっかくの「ご縁」に水をさすことになりかねません。 だいたい町家は建物そのものが既存不適格で、現在の法律を満たしているわけではありません。ですから、そこでお商売、特に飲食業や宿泊業をしようと思うと、いろいろクリアしなければならないことがあります。まずは、それらのことをきちっとしておかないと、物件を見に行っても何も始まらない!かもしれません。 また、京都という町をよく知ることなくお商売を軽く考えたり、他の地域でのやり方でやろうとしたりする方もおられます。現に、大型東京資本で飲食業を始め、とんでもない改装をしてお家が台無しになったり、経営が行き詰まったりという話を耳にすることもあります。 京都のやり方を知ろうとせず軽く考えてお商売を始めて、お客さまは観光客とちょっと流行に乗った若い子ばかり…というケースも多々あります。もちろん、そういった層をターゲットにしているのなら問題ないのですが…。 ◇・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ◆ 京ことば*ノート p.9 一音からなる語 ◇・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 毛・目・歯・手・気のように、一音からなる語の場合、京ことばでは短く切らずに下記のように中途半端にのばします。 「京ことば」には独特のニュアンスがあり、ある人に言わせると、「何だかふにゃふにゃした感じ」だとか。言い得て妙やなぁ…と、感心したのですが、今回の語なんか、その特徴的なものというてもよいかもしれまへんなぁ。。。。。。 例1)毛(例文)けぇのびたなぁ。 例2)目(例文)めぇ悪なったなぁ。 例3)歯(例文)はぁとれてしもた。 例4)手(例文)そっちのてぇの方え。 例5)気(例文)きぃつけておいないや*。 *「おいない」→「いらっしゃい」の意。 ◇・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ◆編集後記 ◇・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 立夏号、いかがでしたでしょうか。よい連休をお過ごしですか? さて、「柏餅」と「ちまき」ですが、どちらが一般的だと思われますか?全国的(特に関東)には「柏餅」だとか。これは、柏の葉は、新芽が出るまで古い葉を落とさないという性質があり、そこから子孫繁栄・家系永代の意味で端午の節句(男の子の節句)に柏餅が用いられるようになったということです。しかし、何というても関西では柏餅より「ちまき」です。 ちまきは、餅団子や葛菓子を茅(ちがや)や笹の葉で包んだもので、「難を避ける」という意味があり、これは中国の故事からきているようです。 京都でちまきというと、「川端道喜」さん。もう16代・500年近く、ちまきを作り続けておられます。禁裏御用達であったというのはまだつい先日までのことで、千利休もここのお菓子を利用していたとか…。ちなみに、道喜さんのちまきはあらかじめお頼みしておかないと手に入りませんので、念のため… |