月例歌会

 

 毎月第1日曜日が競書の審査日になっています。その審査の前1時間程度,審査に参加する役員を中心に歌会を行っています。毎月15首くらいの歌が集まってきます。一つ一つの歌を自由に批評,鑑賞します。会長の島田先生や歌の会で勉強されている常任理事の勝又先生のアドバイスもいただきます。さらに,神戸の坪田先生に話し合った歌を送り,添削していただいた後書窗に載せます。

 

平成13年4月1日 歌会詠草

ブラウスに似顔絵描きて孫二人わが誕生祝ひくれたり 梶田 晴昌
Bの鉛筆もて文字なぞりゆくいたづら天使の透ける掌の甲 勝又 緑苑
さくら花鴨の川辺に静もりてかすみたなびく京うれしむ 倉田 果林
習ひし事語り合ひつつ急ぐ帰途薄暮の空に冬の三日月 大橋 光甫
なごり雪降りし朝は傘閉ぢてダイヤモンドダスト浴びつつ歩む 前田 双園
無人小屋に切花うらるる花々の花粉は飛ばぬと書き添へてあり 青木 久子
杳き日に母が更衣の長襦袢いまわが好むブラウスの色 熊谷 華芳
近づけば感応センサー明るめる遊具に答ヘて「おやすみ」 村上 敦子
甘酒にほろ酔ふ父らし得意なる琵琶湖周航の歌聞こゆ 大坪 華泉
書作終へ作品もちて急ぐ道冷き風も快きかな 安達 湖風
手篭にて笑みつつ物売る乙女らよ車内販売明るくなりぬ 島田 雨城
さみどりに揺るる柳のあはひより淡紅艶なる街の桜は 山末 紫艸
久々に娘二人と出かけたり話すことなくただ歩くのみ 丸橋 正光
沈丁花夜のしじまを密やかに命の限り弥生を匂ふ 長谷川翠扇

 

平成13年3月4日 歌会詠草

この枝が好みといつもの鴉ゐる羽つややかに太嘴の濡れ 勝又 緑苑
見上ぐれば陽は燦さんと降り注ぎ白雪ふはり二月は神秘 長谷川翠扇
雀らが砂浴びをりし草の間のくぼみに春の草籍き初むる 熊谷 華芳
夕闇の中の体感ほの白くほころび待てる梅花の呼吸 村上 敦子
ランドセル置きて幼は走りゆく手づくりチョコを友にあげると 梶田 晴昌
ペン執るも六ケ月振りか歌詠むとおだしき瞳して老いたる父は 大坪 華泉
花みづきの苞のくれなゐ色深く冬枯れの街に生命いきづく 前田 双園
雪積る狭庭の千両風ふけば朱実こぼるる色鮮しく 安達 湖風
浮ぶあり羽根拡ぐあり潜るあり波立つ寒き川面の海鵜は 島田 雨城
朝の陽にきらめく水滴こぼれたり葉牡丹はつかの風にゆらぎて 大橋 光甫
二十一種類の野菜の入りし缶ジュース飲めば心身ふしぎな気持 青木 久子
吹く風に煽られつつも直ぐと立つあなたのやうな冬の噴水 倉田 果林
松虫草ふはりと色さす形見の状唯一息づく私のなかに 山末 紫艸
砂時計の砂光りつつ流れゐるガラスの器時とぢこめて 亀井 貞苑

 

平成13年2月4日 歌会詠草

なつかしの裕次郎に出会ひたり夕陽の丘の小樽館にて 大坪 華泉
バイク音軋みて聞こゆる雪の日は朝刊配る息子を案ず 安達 湖風
墨染の衣の尼僧は紺色の手編帽子を被り溌刺と 長谷川翠扇
大雪の積れる朝すがすがし大気の中にこころ漲る 前田 双園
侮られ時には己労はりて若葉マークの今日が散華会 村上 敦子
奥飛騨は零下の気温軒端にはつらら幾条光らせながら 青木 久子
北側の屋根も残雪ゆるみ初め披璃戸ひびかせドドッと一気に 梶田 晴昌
放ち書きされしかな文字和歌としてつづけて読めば親しみの湧く 島田 雨城
雪はらは清やかにして朝かげに犬の足あと小さくこぼこぼ 勝又 緑苑
年の瀬に水仙と蟹届きたり北陸の春早も我家に 倉田 果林
亡き人を偲ぶ節分会師と共に語らひいつしか涙となりて 大岡 祥仙
漸くに根雪もとけぬ枯草を分けてふくらむ蕗のたう一つ 塩貝美智子

 

平成13年1月7日 歌会詠草

 

橋詰めにかかれば比叡おろしの吹き抜けてプール帰りの髪みださるる 大橋 光甫
子雀が金木犀の枝渡る影くろぐろと朝の陽の中 前田 双園
病院を出づればひろごるすすきが原ふはふはやさしく吾に語り来 倉田 果林
晴れ渡る大海原を小さき船水脈白々と長く曳きゆく 大坪 華泉
暁の雨音にたつをきばつやなるきをれ三声かる鴨の番か 勝又 緑苑
木がらしにも尚残りゐる紫陽花の葉は生き生きと浅黄色して 青木 久子
富士山頂に留まる傘雲来る年の幸思はせて三重の層 村上 敦子
太陽を崇め敬ふ原住民の心とらへし教会の偉容 島田 雨城
琴の音に和するごとくに静々と野点の席に中学生坐す 長谷川翠扇
幼子があやとりする指軽やかに蛙よ箒よ糸の変化は 梶田 晴昌
初日さす白鷺城の耀ひに世界遺産を諾ひ仰ぐ 坪田 紅南
遊亀展に心のこして出でくれば楓葉一つ木枯らしに舞ふ 安達 湖風
大の字の煙に思ひ出乗せやりて二十世紀よ過去となりゆく 丸橋 正光

 

平成12年12月3日 歌会詠草

朱に染むる沙羅の一葉のゆふらりとわが手の中に秋舞ひ落つる 長谷川翠扇
とりどりの紅葉の木の葉ポケットに足早にかへる娘への文へと 熊谷 華芳
編笠を深くかぶれる踊手の耳のピアスがきらりと光る 大橋 光甫
門に立つ母の視線を背に負ひて侘助の咲く露地まはりゆく 倉田 果林
白鳥の憩ふがごとしノイシュヴァインスタイン城きりりと聳ゆ湖をそびらに 亀井 貞苑
富有柿を半分に切ればその種にまでもさやかに生くる白き芽の見ゆ 青木 久子
ネオン街ややも見過ごす雑踏にあなたの肩をとらう落日 村上 敦子
街路樹はばさばさ落とされ木陰なく直ぐなる秋日の暑さ身にしむ 梶田 晴昌
開演のベルを聞きつつ幕内にいざ本番かと大筆しめらす 島田 雨城
波うてる披璃戸を通し見る尾花直立たずして幾何学模様 前田 双園
散り紅葉はらりまひ込む明るみかひとり夕餉のかやく御飯に 山末 紫艸
夕陽浴びてさらに色濃きみかん採り口に含めば甘ささはに広がる 丸橋 正光
トラック一台ひろ田に鰯撒きてゆくつるの餌付の原は朝かげ 勝又 緑苑
ゆらゆらとゆらめく灯りに粉雪の音なく舞ひて運河くれゆく 大坪 華泉

 

平成12年11月5日 歌会詠草

言いたげな幼児の□元思わせる葉陰にのぞく白い嵯峨菊 村上 敦子
町おこしの温泉街か入口の畑一面にコスモスそよぐ 熊谷 華芳
酔芙蓉咲きのさかりを入日うけタベを花の紅まさりゆく 安達 湖風
尖り屋根の茜の甍連なりてローテンブルグはお伽の国めく 亀井 貞苑
大甕に挿されし野いばら紅色の玉実つやめき枝ぶりよろし 前田 双園
早朝を軒下に座し食事する若き男女を訝り眺む 長谷川翠扇
鉄幹も晶子・登美子も讃へたる永観堂の紅葉見あかず 倉田 果林
もも割れに結びし幼のすまし顔常と異なる七つ参りは 梶田 晴昌
なごり花今か開かむ色冴えて冷ゆる朝を木僅の花は 青木 久子
久に来し湖北の風にしたがへり湖の濃みどりまなこにしまふ 勝又 緑苑
上の茶屋下茶屋離宮の原風景幡伎小御所園通寺ひとり 山末 紫艸
どんぐりを幼のごとく拾ひたり時間足らすの教員研修 丸橋 正光
餌をまけば争ひ寄り来るをしどりは恐れを知らず飼ひならされて 島田 雨城
夢のごと小花咲くを除け歩む草原の果てのテノオテワカン遺跡 大橋 光甫
ひとかかへもあるかと思ふ朱き月小山を今し出でくる 大坪 華泉

 

平成12年10月1日 歌会詠草

バザールの中に手を振る亡き母を追へどとどかぬ夢に苛立つ 長谷川翆扇
残照はゴールの影を長長と伸ばして校庭ただに閑けし 前田 双園
百五十牧の敬老乗車証配り終へ長寿国の未来を憂ふ 島田 雨城
木の間より京の灯りを見はるかしひと息つくとき風渡りくる 大坪 華泉
モルドウの記べ思ひつ葉擦れ聴くこの森の径炎暑をしらず 勝又 緑苑
眼とぢ声を絞りて歌ひつぐこのおわら節に八尾は揺るる 大橋 光甫
もぎ取りて籠満たしゆく青小梅そこより放つ朝の光は 村上 敦子
猿沢の池の水面は濃緑に親子の亀か甲羅干す見ゆ 梶田 晴昌
くれなづむ生駒の山の中空を星したがへて利鎌の月ゆく 熊谷 華芳
庭隅に細枝のべて白むくげ晩夏のなごりの花は小さく 青木 久子
瑠璃色の湖に懐かるる竹生島はろばろしもよ神籬の月のごと 安達 湖風
終となる萱草の朱花目に痛しわが第三週空欄のままに 山末 紫艸
朝靄にうすらひけむる佛光寺ビルの谷間を鐘響きくる 大岡 祥仙
この辺りダイエーファンの席ならず応援のわが声徐々に細りて 丸橋 正光
冬仕度せよとやしきりにこほろぎの鳴くを聞きをり枕の下を 倉田 果林
宴果てて息とほろ酔ひに出でし道鈴ふるごとも虫はすだきて 坪田 紅南

 

平成12年9月3日 歌会詠草

束の間を見しよしきりは忽ちに葦辺に消えたり夢のごとしも 亀井 貞苑
大文字の燃えのさかりを過しとき十六夜の月見え色の冴えゆく 青木 久子
河骨の池面に弾く陽にゆらぎ粛親王の額書輝よふ 熊谷 華芳
山間の蘭塔回向のすすむうち鳥も加はる木より降り来て 村上 敦子
雨後の朝歩めば樹々の上渡る風やあるらし雫落ちくる 大橋 光甫
庭先に霧雨のごと水まけぱほんのり小さき虹の生れ出づ 倉田 果林
燃えさかる大文字の火に浮び出づる父母の面輪重ねて拝ろがむ 島田 雨城
無人島にゐたる夢を見し真昼猫のつつきて抱き寄せたり 山末 紫艸
大小の湖沼に花影映ゆる見えサロベツ原野の息吹きに真向ふ 岩崎 寿石
朝まだきのしじまを破り一斉に蝉なきはじむ光とともに 大坪 華泉
白川砂流れの底に浄まれるその辺あかるくうろくづ早し 勝又 緑苑
むらさきの百日紅の花高く咲き下陰涼しく風の吹きくる 大岡 祥仙
目をこらせぱ紫陽花の葉に休みゐるあを蛙一匹動くともなし 安達 湖風
さゆらげる白藤の花に手を添へて微笑みし人今はまぽろし 長谷川翆扇
町中の造られし森にクワガタムシ一匹たくましく育つ 丸橋 正光
いつしかにとのさま蛙住みつきて水撒き初むとゲロゲロ二回 梶田 晴昌
平成11年4月〜平成12年6月の歌会はこちら

 

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