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e-mail 版 三月書房販売速報(仮題)
旧号合冊 第11冊[101〜110号]
通巻101号 2008.10.21発行 通巻106号 2009.12.31発行
通巻102号 2008.12.31発行 通巻107号 2010.03.30発行
通巻103号 2009.03.10発行 通巻108号 2010.06.30発行
通巻104号 2009.06.09発行    
通巻105号  2009.09.29発行    
※各号の最終版を一部修正して掲載しました
  ※非営利目的の転送は歓迎します
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三月書房販売速報[102]
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2008/12/31[10-06-102]  (c)SISIDO,Tatuo     

     e-mail版 三月書房 販売速報(仮題) 102号
     
      ※いちおう出版業界向けに制作してます※
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[#00] 世間はいよいよ大恐慌になりつつあるようですが、出版業界は10年
   以上前からずっと景気が悪くて、勝手に恐慌してたみたいなものな
   ので、やっと世間が追いついてくれたというあたりかもしれません。
   うちの店も今年の年末はまったく盛り上がらず、歳末らしかったの
   は最後の数日ほどだけでしたが、通年ではどうやら前年比2%程度
   の減で済みそうですからまずまずでしょう。おそらく来年はもっと
   ひどいことになると思われますが、出版業界の不況などは他のもっ
   と大きくて重要な多くの業界の影に隠れて、ぜんぜん目立たなくな
   ることでしょう。ちかごろ、出版社や書店の破綻が意外と少ないよ
   うに思えるのは、銀行業界が忙しくなって、小さな会社の清算をす
   るひまがなく、放置しているだけかもしれません。
   
   
[#01] 最近売れてるような気がする本(順不同)

  ◆「芸術言語論への覚書」吉本隆明 李白社
  ◆「貧困と思想」吉本隆明 青土社
   今年の〈吉本〉本は、新装版や文庫や再編物を除くと、単行本が4
   点とCDの大箱が1点出ましたが、あいかわらずけっこうな売れ行き
   でした。最高は糸井事務所発行の「吉本隆明の声と言葉。」で88冊。

  ◆「(歌集)折からの雨」小島ゆかり 本阿弥書店
  ◆「ことばの森林浴」高野公彦 柊書房
   今秋は大売れする短歌本が少な目でしたが、年末近くなってやっと
   竹山広、河野裕子、馬場あき子、などの新歌集が出たので、最終的
   には例年並みに売れるでしょう。とはいうものの、この年末は雁書
   館の営業休止バーゲンが絶大な人気で、ふつうの新刊歌書はややあ
   おりを食っているような気がしないでもありません。
   バーゲンのリストはこちら
  
  ◆「HARD STUFF 第12号」先鋭疾風社
   この雑誌の前号は10年以上前に出たっきりで、こちらもすっかり忘
   れてましたが、発行前から前号のことなど知りそうもような若い人
   たちが、毎日のように出たか?出たか?と聞きにこられるので、ちょ
   っと驚きました。発行が最初の予定から1月以上も遅れたので、無駄
   足、または無駄電話された人が延べ100人くらいはありましたが、大
   部分は同一の数名だっようで、実際に売れたのはまだ10冊ちょっと
   です。誌名をちゃんと言える人のほうが少なかったので、この雑誌
   そのものにはあまり関心がなさそうな感じでした。いったいあの人
   たちはどの記事が読みたかったのか気になりますが、常連客ではな
   く、他の本には見向きもせず帰ってしまう人たちばかりだったので、
   聞き取りができてません。

  ◆「悼詞(とうし)」鶴見俊輔 編集グループ<SURE>     
  ◆「劇作家 三好十郎」三好十郎没後50年記念誌編集委員会・編
  ◆「わが上林暁〜上林暁との対話〜」サワダオサム 熱烈予約実行委
   この3冊は「他店ではあまり見かけない本」でしょう。この3冊につ
   いてはブログ「三月記(仮題)」に記事があります。売れ行きはなか
   なか好調で、どれも20冊前後売れてます。
      
  ◆「日時計の影」中井久夫 みすず書房
  ◆「(新書)白川静 漢字の世界観」松岡正剛 平凡社

   
[#02] これから売れそうな気がする本(順不同)

  ◆「(歌集)母系」河野裕子 青磁社※入荷済み
  ◆「(歌集)太鼓の空間」馬場あき子 砂子屋書房※入荷済み
  ◆「私の会った人びと」河野裕子/池田はるみ 本阿弥書店※入荷済み
  ◆「(歌集)眠ってよいか」竹山広 ながらみ書房※入荷済み
  ◆「(歌集)1/125秒」永田淳 ふらんす堂※入荷済み
  ◆「KAWADE道の手帖 鶴見俊輔」河出書房新社※入荷済み
  ◆「巨人譚」諸星大二郎 光文社※入荷済み
  ◆「画本厄除け詩集」井伏鱒二/金井田英津子  
  ◆「(新書)須賀敦子のイタリア」和田忠彦 平凡社
  
    
[#03] 近ごろちょっとまずいことになったらしい出版社など。

   昨年末から今年初めにかけての倒産ラッシュに比べると、それ以降
   は意外なほど平穏ですが、水面下では合併や子会社化とかいろいろ
   なことが起きているようです。雑誌の売れ行きは以前から右肩下が
   りですが、ここに来て急激に広告の入りが悪くなっているようです
   から、来年は休刊廃刊が大幅に増加することでしょう。うちの店は
   定期刊行雑誌の売上げが、全体の1割もないので、雑誌業界の不振
   自体はさほど直接的な影響がありません。しかし、出版業界の流通
   システムは定期刊行の雑誌に依存していますから、そのシステムが
   維持できなくなったときは、業界全体が大きな影響を受けることは
   避けられません。
   
   前号以降にまずいことになった出版社はいくつかあったようですが、
   あまりうちとは関係のないとこばっかりだったようです。12月に自
   己破産した「あいであ・らいふ」は、「男の隠れ家2004年12月号」
   の“「書斎」訪問”に吉本氏が登場された号のみよく売れた記憶が
   あります。
  
   ちかごろ気になっているのは、気が付けばいつの間にかぜんぜん新
   刊が出ていないらしい出版社が増えつつあるような気がすることで
   す。いまだに日販の取引名簿には名がありますから、廃業されたわ
   けではなくて、新刊を出しても売れそうにないので冬眠されている
   だけのことなのでしょう。こういう出版社は、自転車操業で新刊を
   出し続けないと潰れてしまう多くの出版社よりも、じつは経営が安
   泰なのかもしれませんが、いずれゆるゆると廃業されることになる
   のでしょう。たとえば弥生書房や白鳳社がそうでした。
   
   
[#04] <天に唾する>京都の書店のうわさ(その64)

   7月末の倒産後、8月中旬から営業再開していた「ランダム・ウォー
   ク京都寺町店」は1月15日で完全閉店となります。新文化の記事に
   よれば、引き継いでくれる書店を探していたそうですが見つからな
   かったとのこと。洋書専門の取次店の直営だったからこそ成り立っ
   ていた店なわけですから、替わりを見つけようとすることは、経済
   状況がどうでかなりあれ難しかったのではないでしょうか。現在、
   閉店セール中ですが、50%引きになってからは、けっこう混んでい
   るように見えます。
   
   ほとんど書店ともいえませんが、CD、DVD、ゲームが主体で、ごく
   わずか古本も扱っていた「ビーバーレコード京極店」が、1月12日
   で完全に撤退することになり、現在閉店セール中です。この店は、
   2年前に、京宝ビルと新東宝ビルの建て替えに伴って追い出された
   3店がまとめて移転したのですが、ちょっと広すぎるような感じで
   した。なにしろ、店の3分の1くらいが、売れ残りのVHSビデオのた
   たき売り場でしたから。
   
   どちらの店も、とくに愛用していたわけではありませんが、それで
   も通常の散歩コースにあり、時々覗く店でしたから、なくなるとま
   すます町がつまらなくなってしまいます。河原町通りでは、ゲーム
   センターやパチンコ店ですら閉店が目立ち、あとにカラオケやファ
   ストフード店が入ればまだしもで、シャッターを閉めたままだった
   り、自動販売機を並べただけという店が大量に発生しつつあります。
   この調子だと来年はもっと廃れた街並みになってしまうに違いありません。
   「ランダム」と「ビーバー」についてはブログに記事があります。
      
   
[#05] 雑、雑、雑、……
   
  ○講談社の「蕪村全集」の新刊が、前回配本以来7年ぶりに出ました
   が、定期購読者を見直したら、9名中4名が死去または消息不明に
   なってました。筑摩の「校本宮沢賢治全集」の最終回配本が3月に
   ありますが、これも前回以来7年ぶりなので予約の確認が必要です。
   こちらは5名中4名までは連絡がとれる方ですが、どちらシリーズ
   も平均年齢はたぶん60歳台でしょう。ここ10年ほど全集物の定期購
   読者は減少の一途ですが、この2つの全集も、今からスタートだっ
   たら予約者は半分もないでしょう。うちの店も新しい常連客はちゃ
   んとおられるのですが、全集の予約購読をするような人はほぼ皆無
   です。
   
  ○欠陥だらけといわれる「裁判員制度」ですが、さいわいなことに、
   うちの家族は誰も当選しませんでした。(よくは知りませんが当選
   しなかったことは公表してもよいらしい)。もしも当たっていたら、
   冗談抜きで店を臨時休業しないと参加できないところでしたが、理
   由を告知せずに何日も店を臨時休業にするのは最悪です。潰れたの
   かとか、誰か死んだのかとか、入院したらしいとか、言われるのに
   決まってますし、それが3日も4日も続くとなれば、それでなくとも
   少ない客足がますます落ちることでしょう。「裁判員に選ばれたの
   で臨時休業」と掲示してもよいのなら、野次馬的に参加を考えても
   よいのですが、これはたぶんだめらしいので、断固拒否するしかな
   かったでしょう。ちなみに京都地裁は店から徒歩5分位なので、交
   通は至便なのですが。

  ○ブックオフが特価本の販売を始めたという話は、秋口に業界紙のサ
   イトで知っていましたが、ごく最近になって「京都三条駅ビル店」
   にもコーナーができてると聞いたので視察してきました。入口すぐ
   そばの特等地に棚2本、わずか60アイテムを各数冊づつ面出しで並
   べてましたが、実用書とかビジネス書とかでイラストの多い軽い感
   じのばかりでした。売価は元定価の4割から5割程度ですが、うち
   と重複するのは「やかんの本」1冊だけでした。ブックオフがどこ
   から仕入れているのかは知りませんが、うちが八木書店から仕入れ
   ている本にはほぼ必ず底に押してある、○にBのスタンプ印は見あ
   たりません。
   しかし、あの程度の本をあの程度の値段で売って、商売になってい
   るのかどうかぜんぜんわかりません。新文化のサイト記事によると、
   「2009年3月末の売上げは200店で5000万円を目指す」とありますか
   ら、1店平均25万円、12月からとして月に6万円強ですから、これは
   可能そうな数字と思われます。
   仕入れを八木のような問屋からしているのか、直接出版社から仕入
   れているのかはわかりませんが、もしも今後もっと大きな商売にし
   ようとしているのなら、おそらく直接仕入れをしていることでしょ
   う。ブックオフと八木が仕入れでぶつかったら勝負になりそうにあ
   りませんが、ブックオフは大量販売の可能な本以外は不要でしょう
   から、おそらく棲み分けは可能でしょう。そのあたりのことはいず
   れ、「出版状況クロニクル」が教えてくださるであろうと、期待し
   てます。

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この「販売速報(仮題)」はe-mailの性質上,簡単に改訂することができ
ますが、その度に全読者に送信するのは、お互いに煩わしいので、最終版
をおよそ1ヶ月後にHPに掲載します。

   ◆1998/11/27 創刊準備号(通巻01号)発刊
   ◆「バックナンバー(01〜102号)」はHPにて公開中です。
     
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