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ディアコスモス(DiavkosmoV)

 「女神-宇宙」の意。ピュタゴラス学派とストア学派の術語である。原初のカオスの中にあった諸元素が「秩序」あるものにされて、それで世界が創造されたが、その「秩序」を表す語がディアコスモスである。深淵の母神テミスの名前と同じように、コスモスKosmosも「正しい秩序」を意味した。そしてホメーロスは、女性がいろいろと身を飾ることを表すのに、このKosmosという語を用いた[1]。哲学者たちは、女神というのは自分の身を飾り立てるためにはっきりとした形あるものを造って、そして物質界を生み出した、と考えた。物質界の美しいものは女神の着衣であり、宝石である、と考えた。女神の真の精神というのはこうした物質界のさまざまな物の内や背後において働き、目には見えないものである。女神は、字宙の生命を通じて、自分の「秩序」をいかにして外に表すかを考えては、絶えず、あれこれと造り、また造り直したのである。その結果、無限とも言える数のさまざまな生物を造ったのであった。最後の審判の日に、女神はそのすべてを壊し、そこで再び新しい創造を始めるのである。
 point.gifTohu Bohu.


[1]Lindsay, O. A., 75, 120.

Barbara G. Walker : The Woman's Encyclopedia of Myths and Secrets (Harper & Row, 1983)



 ゼウス(ZeuvVというギリシア語は、格変化するとき、Di-という語幹を採る。これと、女性名詞を表す語尾-iaとから、diaを女神と解釈する〔あるいは、ラテン語 Deus から思いついたか。ラテン語では女神はdea〕、例によってバーバラ・ウォーカーのあやしげな語源論。

 〔アリストテレースによれば〕ピュタゴラス派は数学に専念し、数学の原理があらゆる存在の原理であり、数の構成要素があらゆる存在の構成要素であるとするに至った。さらにアリストテレースが強調しているのは、彼らが数に音階(ハルモニア)の属性(paqh)と比(logoi)を認め、天全体が数であり音階(ハルモニア)であるとしたことである〔Met. 985b31-986a3〕。別の箇所で(Met. 1090a20-25)アリストテレースは、数の諸性質がまず音階(ハルモニア)と天に見出されるという理由で、ピュタゴラス派が存在は数であるとしたことを認めている。
 「そして、およそ各々の数や音階(ハルモニア)のうちに天の属性やその諸部分や宇宙の全秩序(diakosmhvsiV)と何らかの符合するところのある属性があれば、彼らはこうした属性をすべて寄せ集めて、あてはめた。(Arist. Met. 986a3-6)
 (チェントローネ『ピュタゴラス派:その生と哲学』p.144-45)

 ストア派においては、DiakovsmoVは、ejkpuvrwsiV後の「新秩序」の意味で用いられる。
 「存在するものの元素は火であると彼ら〔ストア派〕は言う。これはヘーラクレイトスと同じである。この火の根源は質料と神である。これはプラトーンと同じである。しかしゼノーンは作用するものも作用されるものもいずれも物体であると言う。ところがプラトーンの主張は第一の作用する原因は非物体的であるというものであった。さらに、ゼノーンは運命によって定められた時間が経過するごとに宇宙全体が燃焼し(ejkpurou:sqai)、そして再び秩序を回復する(diakosmei:sqai)という。(アリストクレース『哲学について』第7巻)

 また、デーモクリトスの著作に『大宇宙大系(MevgaV diavkosmoV)』〔ただし、新プラトーン派の人々は、レウキッポスの作とする〕『小宇宙大系(Mikro;V diavkosmoV)』がある。その内容は推測するしかないが、混沌(カオス)から秩序へという宇宙創造観が背後にあることは間違いないであろう(西川亮「デモクリトスのMikroV diakosmoV:ディオドロスの『歴史叢書』第1巻第7・8章をめぐって」参照)。