「最も色白の人」の意味。アルテミスの添え名でもある。カッリストーのトーテム獣は雌グマ。カッリストーはアルカス(仔グマ)を生んだ母親。アルテミスの聖なる島であるテラ(雌グマ)島の古い名前はカリステーであった。古代ギリシアの著作者たちの言うところによると、アッティカにおげるアルテミスの儀式では、若い娘たちは雌グマの扮装をしていたという。このことからカッリストー神話が生まれ、ニンフであるカッリストーはゼウスに処女を奪われて、クマの子を生んだ、となった。カッリストーとその子は天に昇って、「大熊座」、「小熊座」になった。もちろん、このニンフというのは女神の一面である処女を表すものであった。
Barbara G. Walker : The Woman's Encyclopedia of Myths and Secrets (Harper & Row, 1983)
アルテミスは、自分自身が完全な純潔をまもっているばかりでなく、おつきのニンフたちにもそれを要求した。ゼウスがニンフたちのひとり、リュカーオーンの娘カッリストーを誘惑したとき、アルテミスは目ざとく彼女が妊娠していることに気がついた。そこで彼女はすぐにカッリストーを熊の姿にかえ、自分の猟犬の群をこれにけしかけたので、もしゼウスが彼女をひっさらって天上へつれてゆかなかったなら、カッリストーは猟犬に噛み殺されたことであろう。のちにゼウスは、空の星々のあいだにカッリストーの像をおいた。しかし、カッリストーを熊にかえたのは当のゼウスであって、嫉妬心のつよいヘーラーのたくらみによって、アルテミスが誤って彼女を狩りたてることになったのだと説くものもいる。カッリストーの子アルカスは、その生命をたすけられて、やがてアルカディア人たちの先祖になった。
カッリストーの神話が生れたのは、第一にはプラウローンのアルテミスをまつるアッテイカの祝祭に、雌熊に扮した二人の少女があらわれることと、第二に口碑につたわるアルテミスと大熊星との関係、この二つを説明するためであったろう。しかし、この神話にはさらに年代の古い別伝があったと推定され、それによると、ゼウスがアルテミスを誘惑したことになっている。もっともアルテミスは、ゼウスの追及の手をのがれようとして、まず熊に姿をかえ、ついで顔に石膏を塗ることになっているが。アルテミスは、もと天の星々を統べていたが、のちにこの権利をゼウスに奪われたのである。(グレイヴズ、p.127, 129)
ここから、カッリストーはアルテミスの別名であるというバーバラ・ウォーカーの所説が出てくる。